2026.09.30 │ 理研 │ 元発表:2026.09.29

理化学研究所、GLUT1欠損症モデルマウスで糖代謝の性差を発見

ニュース紹介

「GLUT1欠損症の個別化治療に新たな可能性-モデルマウスの網羅的表現型解析により糖代謝の性差を発見-」

理化学研究所(理研)バイオリソース研究センター マウス表現型研究開発室の古瀬民生上級研究員、田村勝室長らの研究チームは、GLUT1欠損症のモデルマウスを用いた「マウス版人間ドック」ともいえる網羅的表現型解析により、グルコース投与後に糖代謝およびインスリン動態の変化がメス個体で顕著に認められることを発見しました。

GLUT1欠損症は、神経の主要なエネルギー源であるグルコースの脳への輸送障害によって引き起こされる希少な神経疾患であり、てんかん発作や運動障害などを主症状としています。本研究成果は、GLUT1欠損症に対する新たな薬効評価系の構築や、患者の性別や病態に応じた個別化治療戦略の確立につながることが期待されます。

論文は科学雑誌「Disease Models & Mechanisms」オンライン版(9月21日付)に掲載されました。

出典:理化学研究所 2026年9月29日 プレスリリース
https://www.riken.jp/press/2026/20260929_3/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

GLUT1は、血液中のブドウ糖を脳へ運ぶ輸送体です。働きが落ちると脳のエネルギーが足りなくなり、乳幼児期からてんかん発作や発達の遅れなどが現れます。GLUT1欠損症は、厚生労働省の指定難病の一つです。

標準治療は、脂肪を多く炭水化物を少なくとるケトン食療法です。ブドウ糖の代わりにケトン体を脳のエネルギーにしますが、効き方には個人差があります。症状や重さも患者ごとに大きく違うため、その違いがどこから生まれるのかを調べる研究が求められていました。

①人間ドックのように調べる

病気のモデルマウスは、研究者の専門に合わせて一部の機能だけを調べることが多くあります。研究チームは、理研が運営する日本マウスクリニックの仕組みを使い、同じ個体に多くの検査を順番に行うパイプライン検査で幅広く評価しました。

使ったマウスはSlc2a1遺伝子に変異を持ち、てんかん発作や脳でのブドウ糖の使われ方の変化など、ヒトの患者に似た特徴を示します。研究チームは2019年にこのマウスの特徴を報告しており、国内外の研究者に提供しています。

②メスだけで血糖とインスリンが変化

検査の結果、モデルマウスのメスでは、ブドウ糖を与えた後の血糖値の上昇が小さくなっていました。その一方で、血中のインスリン濃度は上昇していました。

体重はオスで減り、メスでは変わりませんでした。体脂肪率はメスだけで増えるなど、複数の項目ではっきりした性差が見られたとしています。GLUT1欠損症では、全身の糖代謝への影響はこれまで十分に調べられていませんでした。

編集部からひとこと

発表資料によると、米国ではインスリンに関わる経路を狙った治療の臨床試験が進められています。今回の結果は、その考え方を支える基礎的な知見になり得ると研究チームは見ています。患者の性別を考えた治療の検討にどうつながるかに注目します。

FrontJournal編集部

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