GALTS Pharma「アルポート症候群治療薬」を研究|腎臓と尿細管の細胞に飲み薬の候補が働く様子を描いたイラスト

株式会社GALTS Pharma(ガルツファルマ)

GALTS Pharma「アルポート症候群治療薬」を研究|研究領域=腎臓病の進行を・抑える治療薬/強み=今の薬と併用・する飲み薬の候補/将来性=慢性腎臓病へ・展開も視野

企業紹介|株式会社GALTS Pharmaとは?

遺伝性の腎臓病に対し、進行を抑える新しい飲み薬の開発が進む「アルポート症候群治療薬」。株式会社GALTS Pharmaは、その社会実装を目指す、熊本大学発の創薬系ディープテック企業です。腎臓の細胞を酸化ストレス(活性酸素などが細胞を傷つける状態)から守る仕組みを強める化合物「GP-051」を、アルポート症候群の患者へ届ける飲み薬の候補として開発しています。

キーワード「アルポート症候群治療薬」

「アルポート症候群治療薬」は、遺伝性の腎臓病であるアルポート症候群の進行を抑える薬です。この病気は、腎臓や耳、目のIV型コラーゲン(組織の土台となるたんぱく質)の遺伝子変異で起こり、重症例では10代後半から20代で末期腎不全に至ります。現在の治療は進行を遅らせる対症療法にとどまり、根本的な治療法は確立されていません。

市場課題|アルポート症候群は若いうちに腎不全へ進みやすい

現状のアルポート症候群の課題|現状は、既存薬では止めにくく若年で腎不全に進みやすい|若年で腎不全に・進みやすい/既存薬では・進行を止めにくい

若年で腎不全に進みやすい

アルポート症候群は、若いうちに末期腎不全へ進みやすい遺伝性の病気です。患者の約9割はX染色体連鎖型で、この病気は若い年代で透析を始める主な原因とされています。透析や腎移植が必要になると、患者は若いうちから長く治療の負担を背負います。

既存薬では進行を止めにくい

既存の薬だけでは、アルポート症候群の進行を止めることは困難です。現在の治療はレニン・アンジオテンシン系阻害薬(血圧を上げるホルモンの働きを抑える薬)で腎臓を保護する方法が中心で、原因に直接働く治療法は確立されていません。多くの患者は末期腎不全へ進むとされ、別の経路から腎臓の障害を抑える薬が求められています。

他にも、透析や腎移植の後も続く難聴や視力の障害、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 末期腎不全腎臓の働きが大きく低下し、血液中の老廃物や余分な水分を尿として排出できなくなった状態を指す。生命を保つには透析か腎移植が必要になる。アルポート症候群では、この状態に若い年齢で至る例が多い。

GALTS Pharmaの強み|「アルポート症候群治療薬」を研究

GALTS Pharmaが「アルポート症候群治療薬」を研究|今後は、GLP試験で治験の開始が可能に|Nrf2を強く・働かせ腎臓を保護/既存薬への・上乗せを目指す

Nrf2を強く働かせ腎臓を保護

Nrf2(遺伝子の働きを調節するたんぱく質)は細胞を酸化ストレスから守りますが、アルポート症候群のモデルマウス(病気を再現したマウス)では、弱い活性化で病態が改善しなかったと報告されています。

同社の「GP-051」は、Nrf2と、Nrf2を分解へ導くたんぱく質であるKeap1との結合を、ナノモーラー(1リットルあたり10億分の1モル)単位の低い濃度で妨げる低分子化合物(分子が小さく、飲み薬にしやすい化合物)です。この結合が外れると、Nrf2は細胞の核へ移り、抗酸化や解毒の遺伝子群を強く働かせます。人でも腎臓の細胞を守れることが確かめられれば、末期腎不全へ進む時期を遅らせる治療につながると期待されています。

既存薬への上乗せを目指す

レニン・アンジオテンシン系阻害薬は、主に糸球体(血液をろ過する毛細血管の塊)の働きの乱れを狙う薬で、単独では進行を止めきれません。

GP-051が狙うのは、糸球体とは別の場所にある尿細管(ろ過した液から必要な成分を回収する管)の障害です。モデルマウスでは、尿細管で起きる酸化ストレスや炎症、代謝の乱れが和らぎ、既存の阻害薬との併用で腎不全への進行が抑えられ、生存期間が延びたと報告されています。GP-051は経口吸収性(飲んだ薬が腸から血液へ取り込まれる度合い)が高い化合物です。人でも同じ効果が確かめられれば、今の治療を続けたまま飲み薬を上乗せでき、患者の治療の選択肢が広がります。

FrontJournalの解説
  • Keap1細胞の中でNrf2に結びつき、分解へ導き働きを抑えるたんぱく質を指す。酸化ストレスを受けるとNrf2の分解が止まり、Nrf2は核へ移って防御の遺伝子を働かせる。結合を外す化合物はNrf2を活性化する。

アルポート症候群治療薬の未来|治験の準備から慢性腎臓病へ広げる

アルポート症候群治療薬が変える未来|治験の準備から慢性腎臓病へ広げる|国の治験準備・事業に参画/安全性を確かめ・治験へ進む/透析ゼロの・社会を目指す

国の治験準備事業に参画

同社は、GP-051を人での治験へ進めるための国の事業に、研究開発連携企業として参画しています。この事業は日本医療研究開発機構(AMED)の「医薬品の治験準備(医薬品ステップ1)」で、2025年度に熊本大学と神戸大学の研究開発チームが全国で唯一採択されました。同社は今後、大学の研究者とともに、治験に必要なデータをそろえていきます。研究課題の名称は「アルポート症候群腎症進展抑制薬の研究開発」です。

安全性を確かめ治験へ進む

GP-051の次の段階は、人に使う前の非臨床試験(動物や細胞で行う試験)を経て、人での治験へ進むことです。非臨床試験では薬効と薬物動態(体内での吸収から排出までの過程)を調べ、安全性はGLP(試験の信頼性を保つための国の基準)に沿って確かめます。同社の試験の進め方は、外部の受託研究機関を活用する形です。安全性が確かめられれば、GP-051はアルポート症候群の患者が使える治療薬へ一歩近づきます。

透析ゼロの社会を目指す

透析ゼロ、腎移植ゼロ、難聴ゼロの社会が、同社の目指す姿です。Nrf2の活性化は、腎臓の保護に加えて難聴の軽減にも効果が期待される仕組みです。同社は作用の仕組みから、患者数の多い慢性腎臓病への展開も視野に入れています。実現すれば、若い患者は透析に通う生活を先送りでき、仕事や学業を続けやすくなります。

会社概要|熊本大学の創薬研究から生まれたGALTS Pharma

熊本大学の研究者が創業

株式会社GALTS Pharmaは、熊本大学の教授だった甲斐広文氏が早期退職し、2023年8月22日に設立した創薬企業です。甲斐氏は熊本大学でアルポート症候群の研究を続け、副学長も務めました。2025年4月には、熊本大学から「熊本大学発ベンチャー企業」の称号を受けています。社名の由来は、「三方良し(Good for All Three Sides)」と「アルポート症候群のために(Good for Alport Syndrome)」です。製薬企業で医薬品開発に携わった専門家や、法律・財務の専門家が経営に加わっています。

化合物の権利取得と公的支援

2025年7月、同社はUBE株式会社と熊本大学の共同研究で見いだされた化合物「UD-051」について、開発・製造・販売の全世界での独占的な権利を取得しました。GP-051は、この化合物に同社が付けた開発コードです。同年には熊本市の「新製品・新技術研究開発助成事業」、熊本県の「スタートアップ支援補助金」にも採択されました。第10回「熊本テックプラングランプリ」では、エントリーした20チームの中から最優秀賞を受賞しています。

導出と共同開発で患者へ届ける

同社は、GP-051を世界のバイオ医薬品企業へ導出(開発・販売の権利を他社へ渡すこと)するか、共同開発の相手と組むことで、患者へ届けることを目指しています。2026年6月に米国で開かれたバイオ医薬品の国際会議では、その相手候補となる世界のバイオ医薬品企業約25社との面談が決まりました。臨床開発を担う相手が決まれば、患者へ届くまでの道筋が具体的になります。

会社情報

会社名株式会社GALTS Pharma(GALTS Pharma Co., Ltd)
所在地熊本県熊本市中央区大江本町5番1号(熊本大学薬学部内 産業イノベーションラボラトリー2階)
設立2023年8月22日
代表CEO:甲斐 広文
技術領域Nrf2とKeap1の結合を妨げる低分子化合物によるアルポート症候群治療薬の開発(開発コードGP-051)
連携UBE株式会社(化合物UD-051の全世界独占ライセンス・2025年7月)。熊本大学
採択AMED「医薬品の治験準備(医薬品ステップ1)」(研究開発連携企業として参画・2025年度)。熊本市 新製品・新技術研究開発助成事業(2025年度)。熊本県 スタートアップ支援補助金(2025年度)
URLhttps://galtspharma.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

患者の少ない遺伝性の病気は、薬の開発が後回しになりやすい分野です。そのなかでGALTS Pharmaは、大学で長く続けてきたアルポート症候群の研究を、自ら会社を立ち上げて治療薬の開発へつなげました。社名の由来に病名を込めたことにも、この病気に向き合う姿勢が表れています。

印象に残ったのは、既存の薬を置き換えるのではなく、今の治療に上乗せして腎臓を守るという考え方です。糸球体とは別の尿細管に働く仕組みは、人で確かめられれば、患者にとって治療の選択肢を増やすものになると感じます。その考え方の出発点は、大学の研究室で積み重ねたモデルマウスの研究です。

若い患者が透析を先送りできる日が来ることを、期待を込めて見守りたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月29日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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