金沢大学発・関連スタートアップ8選|医療から素材・自動運転まで

金沢大学発・関連スタートアップ8選|医療から素材・自動運転まで

金沢大学発・関連スタートアップは、がんの血液検査、脊髄損傷の治療薬、尿ケア用具、食品素材、エビの陸上養殖、カラーダイヤモンド、衣類のリサイクル、自動運転など、医療から食、素材、モビリティまでの領域に広がっています。

金沢大学は、大学の研究成果を活用して起業した企業に「金沢大学認定ベンチャー」の称号を授与しており、この記事で紹介する8社のうち6社がこの称号を受けています。残る2社は、金沢大学の研究者との共同研究や、金沢大学附属病院での臨床研究を通じて金沢大学とつながる企業です。

大学発スタートアップの面白さは、単に大学名が付いていることではありません。研究室や研究者、学生、卒業生、大学周辺の支援機関が持つ知見が、医療、ものづくり、AI、環境、教育、社会インフラの課題と結びつき、事業として社会へ出ていくところにあります。

この記事では、金沢大学認定ベンチャーの企業に、金沢大学と研究でつながる関連企業を加えた8社を紹介します。

金沢大学発・関連スタートアップを見るポイント

1つ目は、膵がんの血液検査や脊髄損傷の治療薬、尿ケア用具など、医療とヘルスケアの企業が多いことです。金沢大学の研究室や附属病院での研究が検査や製品の開発につながり、医薬品の研究でも金沢大学との共同研究が進んでいます。

2つ目は、イチゴ由来の食品素材や、能登の海洋深層水を使ったエビの陸上養殖など、石川県の地域に根ざした食と水産の企業があることです。

3つ目は、ダイヤモンドの結晶成長、混紡繊維の分離、雪道を走る自動運転など、大学の研究室で育った技術を素材やモビリティの事業へ広げる企業があることです。

金沢大学発・関連スタートアップ カオスマップ:領域別の8社

金沢大学発・関連スタートアップ8選

ここからは、領域別に8社を紹介します。

資金調達、提携、製品リリースなどの最新情報は、各社の公式発表もあわせて確認してください。

医療・創薬・ヘルスケア

1. キュービクス|採血で膵がんの診断を補助する

キュービクスは、2004年8月に金沢大学発のバイオベンチャー企業として設立され、2021年9月に「金沢大学認定ベンチャー」の称号を第1号として授与された企業です。

膵がんは早い段階での発見が難しい病気で、臨床で広く使われる腫瘍マーカーのCA19-9を単独で使う検査は、ステージⅠ・Ⅱの早期膵がんでの感度が35.7%にとどまります。

同社は、血液細胞のmRNAの量の組み合わせとCA19-9の測定値を組み合わせて判定する体外診断用医薬品「パンレグザ」を使った検査を受託しています。臨床性能試験では、ステージⅠ・Ⅱの膵がんに対する感度は78.6%でした。2011年8月には、胃がん、大腸がん、膵がん、胆道がんを血液で判定する「消化器がんマイクロアレイ血液検査」の受託も始めています。

企業ページ株式会社キュービクス

2. クリングルファーマ|HGFタンパク質で脊髄損傷の治療薬を開発する

クリングルファーマは、肝細胞増殖因子のHGFを研究してきた松本邦夫氏が2001年12月に起業した企業で、同社は自らを大阪大学・慶應義塾大学発の創薬バイオベンチャーとしています。ファウンダー兼科学アドバイザーの松本氏は、現在は金沢大学の副学長を務めており、金沢大学ではHGFの次世代製造方法の研究と、呼吸器内科との特発性肺線維症への応用研究が進んでいます。

脊髄損傷には、傷ついた脊髄そのものを治す有効な治療法がまだなく、治療は手術やリハビリテーションといった対症療法が中心です。

同社は、遺伝子組換え技術で製造したヒトHGFタンパク質「オレメペルミン アルファ」を、受傷直後の脊髄損傷や声帯瘢痕の治療薬として開発しています。受傷直後の脊髄損傷を対象に日本・米国・欧州で希少疾病用医薬品に指定され、2026年9月には米国での第III相試験に向けてFDAへ治験開始申請を提出しました。

企業ページクリングルファーマ株式会社

3. イントロン・スペース|漏れた尿を溜めてトイレで流す

イントロン・スペースは、2019年10月に東京で設立された、超軟伸性素材を用いたパーソナルケア・ヘルスケア製品の企業です。金沢大学附属病院では、前立腺の手術を受けた方を対象に臨床研究を行い、生活の質が向上することを確認しています。

尿取りパッドやおむつは受け止めた尿を吸収材に保つ仕組みで、濡れた面が皮膚に触れ続けるため、皮膚のトラブルを招きやすいといわれています。

同社の男性用の尿ケア用具「TIMESHIFT」(タイムシフト)は、漏れた尿を本体へ溜めておき、トイレで立ったまま流せる製品です。人の静脈を模した逆流を防ぐ構造を設けています。2025年4月からは、金沢大学附属病院に隣接する店舗を含む石川県のコメヤ薬局の複数店舗で、店頭販売が始まりました。

企業ページイントロン・スペース株式会社

食品・水産

4. バイオセラピー開発研究センター|イチゴのポリフェノールで溶けにくいアイスをつくる

バイオセラピー開発研究センターは、金沢大学の研究成果を基に2006年4月に金沢市で設立され、2021年9月に「金沢大学認定ベンチャー」の称号を受けた企業です。研究責任者は、天然物化学を専門とする金沢大学の太田富久名誉教授です。

アイスクリームは温度が上がると形が崩れて食べにくくなり、溶けにくさを高めると食感が損なわれやすいことが課題でした。

同社は、イチゴの果実から抽出した「イチゴポリフェノール」をアイスの原料に加える製造法を開発しました。イチゴポリフェノールが水分と油脂分を橋渡しすることで、温度が上がっても水が染み出しにくくなり、アイスの形が保たれます。2017年には、金沢のひがし茶屋街の近くにアイスショップ「金座和アイス」を開いています。

企業ページ株式会社バイオセラピー開発研究センター

5. 能登アクアファーム|海洋深層水でエビの稚エビを育てる

能登アクアファームは、2025年2月20日に石川県能登町小木で設立された金沢大学発の企業で、2025年10月30日に8社目の「金沢大学認定ベンチャー」の称号を授与されました。代表取締役CTOの鈴木信雄氏は、金沢大学環日本海域環境研究センターの教授です。

日本で消費されるエビの約92%は輸入で賄われています。陸上養殖は大規模な設備投資が必要で、新規参入のハードルが高い分野とされています。

同社は、小木沖の水深320mから取水した能登海洋深層水を使い、バナメイエビの稚エビを生産して国内の養殖業者へ引き渡す計画です。2025年秋までに、石川県漁業協同組合小木支所内の水槽で、稚エビの生産に成功しました。

企業ページ能登アクアファーム株式会社

素材・資源循環・自動運転

6. Kanazawa Diamond|結晶成長の技術でカラーダイヤモンドをつくる

Kanazawa Diamond(カナザワダイヤモンド)は、2020年12月10日に設立された、ダイヤモンドの製造、加工、販売を手がける金沢大学発の企業です。代表取締役の小林和樹氏は、金沢大学大学院の博士前期課程1年のときに、研究室のダイヤモンド結晶成長技術を生かして同社を立ち上げました。

天然のカラーダイヤモンドは産出量が少なく、色は多くの場合、結晶に入り込んだ窒素やホウ素の量で決まるため、望む色の石を選んで手に入れにくい宝石です。

同社は、金沢大学のダイヤモンド結晶成長技術を応用し、色合いを生み出す技術「KASANE®」(カサネ)を開発しました。2024年11月には黒色の宝石質のダイヤモンドの結晶成長に成功し、「SHIKKOKU」と名付けています。将来は、結晶成長の技術を半導体デバイスの研究開発と製品化に生かすことも目指しています。

企業ページ株式会社Kanazawa Diamond

7. X Cube Solutions|混ざった繊維を分けて衣類を循環させる

X Cube Solutions(エックスキューブソリューションズ)は、2025年2月25日に設立され、同年5月12日付で第6号の「金沢大学認定ベンチャー」に認定された企業です。取締役CTOは、JSTの「COI-NEXT」の拠点を率いる金沢大学理工研究域生命理工学系の髙橋憲司教授です。

ポリエステルとコットンのような混紡素材は、素材を分けられないままでは再び衣類の原料にすることが困難です。国内では、新たに供給された衣類約82万トンのうち約56万トンが手放され、焼却などで処理されています。

同社は、混紡繊維を分子レベルで分離する技術「Green Material Technology」と、衣類の回収から再生までの全工程をブロックチェーンで記録するトレーサビリティの基盤「Musubi by +Tag」を開発しています。

企業ページX Cube Solutions株式会社

8. ムービーズ|雪道でも走る自動運転を開発する

ムービーズは、2024年5月に設立された金沢大学発の企業で、「金沢大学認定ベンチャー」に選ばれています。共同創業者で代表取締役CTOの菅沼直樹氏は、1998年から金沢大学で自動運転の研究を続けてきました。

自動運転車は雨や雪の日に周囲を認識する性能が落ちやすく、新しい地域へ導入するたびに高精度3D地図を作る作業にも、多くの時間と費用がかかります。

同社は、悪天候に強いミリ波レーダーを基盤とした「全天候型自動運転」と、自社の車で走るだけで2次元の簡易地図を作る「マップレス」技術を開発しています。2026年1月には北海道上士幌町の積雪や凍結を含むエリアでロボットタクシーの実証を行い、総走行距離650km以上を無事故で終えました。

企業ページ株式会社ムービーズ

金沢大学発・関連スタートアップに多い注目領域

この記事で紹介した8社では、キュービクス、クリングルファーマ、イントロン・スペースのような医療・創薬・ヘルスケア系、バイオセラピー開発研究センターや能登アクアファームのような食品・水産系、Kanazawa Diamond、X Cube Solutions、ムービーズのような素材・資源循環・自動運転系が並びます。

まとめ

金沢大学発・関連スタートアップには、膵がんの血液検査や脊髄損傷の治療薬、尿ケア用具から、溶けにくいアイスの素材、エビの陸上養殖、カラーダイヤモンド、衣類のリサイクル、雪道を走る自動運転まで、研究成果を医療や地域の産業へつなげる企業が並んでいます。金沢大学の研究室で育った技術から生まれた企業に加え、共同研究や附属病院での臨床研究で金沢大学とつながる企業もあり、北陸から生まれた技術が医療や食、ものづくり、交通の現場へ広がり始めています。

この記事の作者

ショクレキ代行

ショクレキでは、ヒアリングをもとに職務経歴書を一緒に作成するサービスを提供しています。「大学発スタートアップに応募したいが、研究経験をどう書けばいいかわからない」「書類選考が通らない」という方は、ぜひ一度ご相談ください。

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