大和インフラロボティクス|熊本大学発の「インフラ点検ロボット」を研究するディープテック企業

株式会社大和インフラロボティクス

大和インフラロボティクス「インフラ点検ロボット」を研究|研究領域=道路や橋の損傷を調べるロボット/強み=トンネル内も自律走行で点検/将来性=点検と修繕の一貫化を目指す

企業紹介|大和インフラロボティクスとは?

トンネルや橋の裏側を自律走行で調べ、損傷をAIで見つける機械として、注目を集める「インフラ点検ロボット」。株式会社大和インフラロボティクスは、その社会実装を目指す、熊本大学発のロボット系ディープテック企業です。GPSが届かないトンネル内でも自律走行する「SASORI」(サソリ)と、橋梁点検AIソフトウェア「HASHITARO」(橋太郎)を開発しています。

キーワード「インフラ点検ロボット」

「インフラ点検ロボット」は、道路や橋梁、トンネルといった社会インフラの状態を、人に代わって調べる機械です。カメラやセンサーで路面や壁面を撮影・計測し、ひび割れや腐食などの損傷を見つけます。足場を組まなければ届かない場所や危険な場所でも点検でき、点検員の負担と危険を減らせます。

市場課題|老朽化する橋やトンネルの点検に手間と費用

現状のインフラ点検の課題|建設50年超の道路橋が急増/足場と交通規制で点検に手間

建設50年超の道路橋が急増

全国の道路橋では、建設から50年を超えるものが急速に増えています。国土交通省の推計では、橋長2m以上の道路橋約73万橋のうち、建設後50年以上の割合が2023年3月の約37%から、2040年3月には約75%に達する見込みです。一斉に老朽化する施設を、戦略的に維持管理・更新することが求められています。

足場と交通規制で点検に手間

橋やトンネルの点検は、手間と費用がかかる作業です。足場の設置や交通規制、多くの人員の配置が必要になることがあるためです。橋の裏側やトンネルの内部には、人が立ち入りにくい場所もあります。

他にも、維持管理にかかる費用の増大や技術者の減少、土木関連の予算の縮小といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 交通規制工事や点検の作業を安全に行うため、道路の車線や通行を一時的に制限する措置である。作業の間は車の通行が妨げられ、誘導の人員や標識の設置も必要になる。

大和インフラロボティクスの強み|「インフラ点検ロボット」を研究

大和インフラロボティクスが「インフラ点検ロボット」を研究|損傷をAIがその場で判定/GPSなしでも自律走行

損傷をAIがその場で判定

従来の点検では、損傷の判定を人の目で行うため、微細な変化を見落とす場合があります。

同社の点検ロボット「SASORI」は、走りながらカメラで路面や壁面を撮影し、その映像をAIが解析して、ひび割れ・腐食・変形といった損傷を現場でリアルタイムに判定します。微細な損傷まで捉えた診断の結果を、現場にいながら確認できるのも特徴です。点検のデータはクラウドに蓄積され、過去の記録と並べて損傷の進み具合を時系列で把握できます。老朽化した橋やトンネルのうち、次にどこを優先して補修すべきかの判断に役立つ点も利点です。

GPSなしでも自律走行

GPS(人工衛星の電波で位置を割り出す仕組み)の電波は、トンネルの内部や地下の空間には届きません。

「SASORI」は、周囲の環境をリアルタイムに立体的に把握しながら走り、GPSが届かないトンネル内部でも自分の位置を見失わずに、あらかじめ設定したルートをたどります。車体は低重心のサソリ型で、障害物を自動で検知して回避します。路面のうねりや壁面の凹凸、傾斜に合わせて姿勢や動作を自動で調整するのは、搭載した「フィジカルAI」です。人が立ち入りにくい場所の点検をロボットが担うことで、足場の設置や交通規制にかかる手間と費用も抑えられるといわれています。

FrontJournalの解説
  • フィジカルAI現実世界の物理的な状況を理解し、ロボットなどの機械の動きに反映させるAIを指す。複数のセンサーの情報を統合して周囲を把握し、仮想空間のシミュレーションで事前に動作を学習させる手法が使われる。

インフラ点検ロボットの未来|点検から修繕までをロボットで担う

自律走行のインフラ点検ロボットが変える未来|点検報告書の作成をAIで/量産体制の構築へ/点検と修繕の一貫化を目指す

点検報告書の作成をAIで

「HASHITARO」は、損傷の判定から点検報告書の作成、履歴管理までをAIで支援する橋梁点検のソフトウェアです。専門知識がなくても橋梁の点検報告書を作成できる点が特徴です。これまで専門知識を持つ人が担ってきた報告書づくりを、AIで素早く進められます。自治体や企業のインフラ管理の業務を支援する狙いです。

量産体制の構築へ

2025年12月に公表した資金調達の資金は、研究開発の加速と量産体制の構築、事業基盤の強化に充てられます。対象は、「SASORI」と「HASHITARO」。掲げる使命は、老朽化が進む日本の社会インフラの点検と維持管理を、ロボティクスとAI技術で変えることです。この資金調達を通じて、その実現に向けた取り組みをさらに加速させるとしています。

点検と修繕の一貫化を目指す

同社が目指すのは、ロボットと衛星、AIを統合し、インフラのデータを集めて解析するプラットフォーム(データを集めて活用する共通の仕組み)です。自律走行ロボットが現場で取得したデータに、衛星のデータや現場のセンシング(センサーによる計測)の結果を集約し、専用のAIで損傷や変化を自動で検出します。その解析をもとにインフラの所有者へ判断の材料を届け、必要な箇所はロボットが自律的に修繕する仕組みが構想の中心です。道路や橋の「いま」と「これから」を可視化し、点検から修繕までをロボットで完結させることが、同社の描く未来です。

会社概要|株式会社大和インフラロボティクス

IRISAとして2024年設立

大和インフラロボティクスは、2024年8月にIRISA株式会社として設立されました。代表取締役は福塚大和氏です。同社は創業以来、インフラ点検ロボットの研究開発を事業の柱としています。2025年11月には、事業の領域をより明確に表し、社会インフラとロボティクスを組み合わせるビジョンを反映するため、社名を現在の「株式会社大和インフラロボティクス」に改めました。

熊本大学発ベンチャーに認定

同社は、熊本大学から熊本大学発ベンチャーの認定を受けています。熊本大学の研究成果や技術シーズ(事業のもとになる技術)を活用し、社会インフラの点検と維持管理の分野でイノベーションを推進する企業として認められました。認定を受けたのは、IRISA株式会社の社名で活動していた時期です。認定にあたっては、熊本大学との連携を深め、大学の研究成果をロボットの開発に生かす方針も示しました。

累計1.37億円を調達

同社は、2025年12月に累計1.37億円の資金調達を公表しました。East Ventures、9Capital、CyberAgent Capital、β Venture Capital と複数の個人投資家を引受先とする、第三者割当増資(新たに株を発行して特定の相手に引き受けてもらう方法)による調達です。

会社情報

会社名株式会社大和インフラロボティクス(YAMATO INFRASTRUCTURE ROBOTICS INC.)。旧社名 IRISA株式会社(2025年11月に変更)
設立2024年8月26日
代表福塚 大和(代表取締役)
資本金520万円
調達第三者割当増資。累計1.37億円(2025年12月公表。East Ventures、9Capital、CyberAgent Capital、β Venture Capital、複数の個人投資家)
事業AI及びロボットに関する技術の研究・開発・製造・販売及び保守。社会インフラ構造物の調査・点検・診断・設計・補修及び維持管理。建設コンサルタント業務。道路・橋梁点検ロボット「SASORI」、橋梁点検AIソフトウェア「HASHITARO」(橋太郎)
連携熊本大学(熊本大学発ベンチャー認定)
URLhttps://www.yamato-robotics.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

橋やトンネルの点検は、足場の設置や交通規制を伴うことがある作業です。大和インフラロボティクスは、その作業をロボットに任せ、損傷の判定までを現場で済ませる仕組みを形にしようとしています。点検員の目と足で進めてきた作業を、機械の目と足に置き換える試みです。

興味深いのは、GPSが届かないトンネルの中でも、自分の位置を見失わずに走る点です。点検の結果をデータとして積み上げ、いずれは修繕までロボットで担うという構想は、老朽化する施設が増え続ける日本の道路網と向き合うものです。点検の現場から始まった技術が、維持管理の流れ全体へ広がるかどうかが次の焦点になります。

熊本で生まれた点検ロボットが、全国の橋やトンネルの維持管理をどこまで変えていくのか、引き続き注目していきたいと思います。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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