HILO「光診断薬」を研究|がんの薬が効くかを投与前に判定する北海道大学発のディープテック企業

HILO株式会社(ハイロ)

HILO「光診断薬」を研究|研究領域=分子の働きを蛍光で可視化/強み=投与前に効き方を判定/将来性=患者に最適な薬剤選択を支援

企業紹介|HILO株式会社とは?

HILO株式会社は、北海道大学大学院医学研究院・細胞生理学教室発の、医療系ディープテック企業です。同社が開発するのは、がんの薬が効くかどうかを投与の前に判定する検査技術「光診断薬」。メインの事業は、医師向けに患者ごとの薬剤感受性(薬の効きやすさ)を判定する検査と、製薬企業向けの創薬支援等です。2021年に札幌で設立し、NEDOやJSTの支援を受けて事業化を進めています。

キーワード「光診断薬」

光診断薬とは、細胞内で機能する分子の動態を、蛍光の変化によって検出・可視化する技術。HILOが用いるのは、患者から採取した細胞を体外で調べる方式です。細胞に光るセンサー分子を導入し、そこへ薬を作用させて反応を観察します。中核となるのは「Pickles(ピクルス)」と呼ばれる技術で、細胞1個ずつの反応を測れる点が特徴です。

市場課題|がんの薬は効くまで分からない

現状のがん治療の課題|聴診器=効き方の確認は投与後になる・チェックリスト=事前判断の手がかりが乏しい

効果の判定に数週間を要する

慢性骨髄性白血病では、分子標的薬(がん細胞の特定の分子に作用する薬)の効き方に個人差があるとされています。効果の判定は投与後の検査で行い、結果が出るまでに数週間から数か月が必要です。薬剤を切り替えるたびに判定期間は積み重なり、患者の身体的負担と医療費用が増加します。

投与量の判断根拠が限定的

分子標的薬は種類が増え、同一疾患に複数の選択肢が並ぶ状況です。一方、遺伝子検査で判明するのは変異情報が中心で、細胞ごとの反応強度までは捉えにくいとされます。投与前に薬剤感受性を見極める手がかりは、現状では限定的です。

他にも、薬の変更のたびに生じる診療の手戻りがあります。治療の長期化による医療費の増加、途中で効果を失う薬剤耐性の把握の難しさ、といった課題が積み重なってきました。

FrontJournalの解説
  • 分子標的薬がん細胞の増殖に関わる特定の分子を狙って作用する薬。正常な細胞への影響を抑えやすいが、効く人と効かない人がいる。
  • 薬剤耐性はじめは効いていた薬が、途中から効かなくなる状態。薬が狙う分子に変異が起きるなどして、薬が結合しにくくなるために起こる。

HILOの強み|光診断薬Picklesで判定

HILOが「光診断薬」を開発|薬=投与前に薬剤感受性を判定・医師=患者ごとの薬剤選択を支援

投与前に薬剤感受性を判定

光診断薬「Pickles」は、薬が効くかを投与の前に判定する検査です。従来は、投与後の画像診断や血液検査で効果を確認していました。Picklesは、患者から採取した細胞へ蛍光センサー分子を導入します。薬が効くとセンサーの形が変わり、2色の蛍光強度の比(2つの蛍光の明るさの比率)が変化します。対象疾患は慢性骨髄性白血病で、細胞1個ずつ反応の強さを比べる方式です。

患者ごとの薬剤選択を支援

Picklesの特徴は、薬の濃度ごとの反応の差まで観察できる点です。用量の決定は、診療指針と経験に基づく判断が中心です。センサー分子の設計を変えれば、対象は多くの分子標的薬へ広がります。医師にとって体外での反応の差は、薬の種類と量を決める材料の一つです。合わない薬剤を試す期間の短縮が、この検査に期待される効果です。

FrontJournalの解説
  • 光診断薬「Pickles」HILOが開発する診断技術。細胞へ導入したセンサー分子が発する2色の蛍光強度の比から、薬の効き方を体外で測定する。
  • 慢性骨髄性白血病血液のがんの一種。分子標的薬がよく効くことで知られ、薬の効き方を確かめる対象として研究が進んでいる。

光診断薬の未来|個別化医療への応用

光診断薬が変える未来|白血病検査の受託体制を整備・肺がん膵がんへ対象を拡大・最適な薬剤選択の実現へ

白血病検査の受託体制を整備

札幌の自社ラボは、衛生検査所(医療機関から検体の検査を受託できる登録施設)として登録済みです。慢性骨髄性白血病では、複数ある分子標的薬から患者に合う薬を投与前に選ぶ使い方の実現を目指しています。現在進めているのは、実用化に向けた開発です。患者にとっては、不適合な薬剤の投与を継続する不安と身体的負担が軽減されます。

肺がん膵がんへ対象拡大

同社が進めるのは、肺がんや膵がんへ対象を広げる新しい光診断薬の開発です。Picklesでは、どの分子を光らせるかを設計で選べます。センサー分子を変えれば、別の薬や別のがんへ同じ仕組みを使える設計です。創薬支援では、薬が効かなくなった細胞の性質を光で解析します。

最適な薬剤選択の実現を目指す

同社が目指すのは、投与前に薬剤感受性を見分け、最適な薬剤選択を実現する医療です。合わない薬剤の投与に費やす時間と身体的負担が低減すれば、治療中の患者の生活の質も維持されます。医師が得るのは、標準的な診療指針に加えて、患者本人の細胞が示す薬剤反応という判断材料です。体質や病気の性質に合わせて治療を選ぶ個別化医療を、光診断薬という具体的な道具で支えます。

FrontJournalの解説
  • 個別化医療患者一人ひとりの体質や病気の性質に合わせて、最適な治療を選ぶ考え方。プレシジョン・メディシンとも呼ばれる。
  • 創薬支援製薬企業が新しい薬を開発する過程を、技術や検査で手助けすること。HILOは光診断薬で薬の効き方の解析を担う。

会社概要|HILO株式会社の事業内容・設立背景

設立の背景

HILO株式会社は、2021年8月に札幌で設立されました。出発点は、北海道大学大学院医学研究院・細胞生理学教室で大場雄介教授らが進めてきた研究です。細胞の働きを光で可視化する成果を社会に届けるための法人化でした。

代表取締役CEOは天野麻穂氏で、研究シーズ(事業化の元になる研究成果)を事業へつなぐ役割を担います。社名のHILOはHorizon Illumination Lab Opticsの略です。灯台のように患者の未来を照らす理念が込められています。

採択・連携

HILOはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のディープテック・スタートアップ支援事業に認定されています。交付の対象は、慢性骨髄性白血病を対象とした実用化に向けた開発などです。科学技術振興機構(JST)の出資型プログラム「SUCCESS」による出資も受けました。2024年6月には、北大ビジネス・スプリング内の自社ラボが衛生検査所として登録されています。

資金調達/ビジネスモデル

HILOは、製品化と実証に向けた資金調達を重ねています。2023年2月には第三者割当増資による出資を受けました。2024年11月には、グリーンコア株式会社と科学技術振興機構を引受先とする第三者割当増資を実施しています。資金は、新規の光診断薬の創出、製薬企業との連携、臨床検査の薬事承認の取得に充てる方針です。

会社情報

会社名HILO株式会社(ハイロ)
所在地北海道札幌市(北大ビジネス・スプリング内にラボ)
設立2021年8月
代表代表取締役CEO:天野 麻穂
調達2023年2月 第三者割当増資/2024年11月 第三者割当増資(グリーンコア株式会社・科学技術振興機構)
投資家グリーンコア株式会社(パートナーVC)/科学技術振興機構(JST・SUCCESS)
連携北海道大学大学院医学研究院 細胞生理学教室(技術シーズ)
技術領域光診断薬、蛍光バイオイメージング、分子標的薬の効き方の判定、個別化医療、創薬支援
採択NEDO ディープテック・スタートアップ支援事業/JST SUCCESS 出資/衛生検査所 登録(2024年6月)
URLhttps://horizonillumination.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

がんの薬は、投与してみるまで効くかどうか分かりません。投与してから効果を判断する手順は、今も多くの治療現場に残ります。合わない薬を続ける数週間で、患者の体力と時間は確実に失われます。その待つ間を短くできる技術の意義は小さくありません。

HILOの光診断薬は、新しい検査であるだけでなく、治療の入り口で「合う薬」を選ぶための道しるべです。研究室で細胞を光らせて観察してきた基礎研究の成果が、臨床の現場で使える道具へと橋渡しされつつあります。灯台の名を掲げる会社にふさわしい歩みだといえるでしょう。

効く薬を、早く。その一歩が、これからのがん治療の負担を軽くしていくことを期待しています。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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