キノファーマ「HPV抗ウイルス薬」を開発

株式会社キノファーマ

キノファーマ「HPV抗ウイルス薬」を開発

企業紹介|株式会社キノファーマとは?

ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染で起こる病変を、薬で治療する「HPV抗ウイルス薬」。株式会社キノファーマは、その社会実装を目指す、京都大学発の創薬系ディープテック企業です。同社は、子宮頸部異形成(がんの前段階の病変)や尋常性疣贅(ゆうぜい)の治療薬候補を、日本と韓国の臨床試験で開発しています。

キーワード「HPV抗ウイルス薬」

「HPV抗ウイルス薬」は、HPVの増殖を抑えて、感染で起こる病変の治療を目指す薬です。ウイルスが増殖するときに利用する、細胞側の因子を標的にする点が、ウイルス自身の因子に作用する従来の抗ウイルス薬との違いです。同社は、宿主因子を狙う考え方でウイルス感染症の薬を、別の標的(Dyrk1a遺伝子)で神経変性疾患の薬を開発しています。

市場課題|子宮頸部異形成に承認された治療薬がない

現状の子宮頸部異形成の課題

異形成は薬がなく経過観察

子宮頸部異形成(子宮頸部上皮内腫瘍、CIN)は、承認された治療薬がなく、軽度から中等度では経過観察(様子を見ながら定期的に検査すること)が基本です。HPVの持続感染から発展し、軽度のCIN1、中等度のCIN2、高度のCIN3へと段階的に進み、最終的にがん化へ向かうとされます。同社は、CIN2および3の罹患者数が国内で年間約15万人にのぼると示しています。

円錐切除は早産と関連する

円錐切除(子宮頸部を円錐状に切る手術)は、その後の妊娠で早産のリスクが上がるという指摘があります。手術は高度に進んだ場合が対象で、多くの場合に病変部を切り取ります。それより前の段階で使える承認済みの治療薬はありません。

他にも、HPVワクチンが予防を目的とすること、感染を除去する薬がないこと、手術後の妊娠への影響、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 子宮頸部異形成子宮頸がんの前段階にあたる病変である。HPVの持続感染から発展し、軽度のCIN1から高度のCIN3まで進行の度合いで分類される。

キノファーマの強み|「HPV抗ウイルス薬」を開発

キノファーマが「HPV抗ウイルス薬」を開発

宿主因子を狙い増殖を抑える

従来の抗ウイルス薬では、薬が効きにくくなる性質(薬剤耐性)を獲得するウイルスがあります。HPVのように、承認された薬がないウイルスもあります。

同社の薬剤候補は、ウイルスが増殖するときに利用する細胞側の因子(宿主因子)を標的とし、ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬です。この考え方により、DNAウイルス(遺伝情報をDNAでもつウイルス)にあたるHPVのほか、RNAウイルス(遺伝情報をRNAでもつウイルス)にも向けた開発を目指しています。ウイルス自身の因子ではなく細胞側の因子を狙うため、ウイルスの種類をまたいだ薬の開発に広がる可能性があります。

膣錠で患部に直接届ける

HPVワクチンは感染の予防が目的で、すでに感染した人の病変を治療する薬ではありません。

子宮頸部異形成に対する同社の薬剤候補は、子宮頸部に直接作用が期待される膣錠(膣に挿入して使う錠剤)です。処方薬として、患者自身が投与します。感染した患部でHPVの複製を制御し、異形成組織の修復を目指す設計です。これにより、子宮頸がんへの進展の防止も目指します。開発が進めば、現在は経過観察が基本の段階でも、薬による治療という選択肢が広がり、患者が手術の前に治療を始められるようになる可能性があります。

FrontJournalの解説
  • 宿主因子ウイルスが増殖するときに利用する、感染した細胞側の因子である。ウイルス自身の因子とは別に、この因子を標的にする創薬の考え方がある。

HPV抗ウイルス薬の未来|治療薬のない感染症への展開

キノファーマのHPV抗ウイルス薬が変える未来

臨床試験が日韓で進む

同社の膣錠は、日本と韓国で臨床試験が始まった薬剤候補です。日本では、2019年4月に京都大学付属病院で、子宮頸部異形成を対象とした医師主導治験(医師が主体となって行う、薬の効果と安全性を確かめる試験)が始まりました。韓国では、2020年2月に韓国の医薬品当局(MFDS)が第1/2相試験(安全性と有効性を段階的に調べる試験)の治験計画を承認し、同年7月が試験の開始です。試験の結果は、今後の公表が待たれる段階です。

イボは塗り薬で治療を目指す

同社は、HPVが原因の尋常性疣贅の治療薬として、塗り薬の軟膏の開発も進めています。尋常性疣贅は、手や足、顔にできるイボで、HPVの2型、27型、57型の感染で発症します。2023年4月に、岩城製薬と共同開発する軟膏の第2相試験(有効性と安全性を調べる中間段階の試験)の治験届を、医薬品医療機器総合機構(PMDA)へ提出しました。

ウイルス病への拡大を目指す

細胞側の因子を狙う考え方は、HPV以外のウイルスにも向けられています。DNAウイルス、RNAウイルスに対する抗ウイルス薬の開発が進行中です。また、遺伝子Dyrk1aを標的にした、神経変性疾患(アルツハイマー病など)の治療薬も開発中です。

会社概要|キノファーマの事業内容・設立背景

2005年に京都大学発で設立

株式会社キノファーマは、2005年4月に設立された京都大学発のスタートアップです。創業者は小野木博氏、創業科学者は京都大学大学院医学研究科の萩原正敏教授で、代表取締役社長CEOは黒石眞史氏。本社は東京都中央区の日本橋、研究拠点は京都市西京区の京大桂ベンチャープラザにあります。

2017年7月には、京都大学付属病院のオープンイノベーション施設であるイノベーションハブ京都に自社ラボを開設しました。同年9月には、子宮頸部異形成の治験が京都府の助成金(エコノミックガーデニング支援事業)に採択されました。2018年9月には、同社は第三者割当増資(特定の相手に新株を発行する資金調達)を実施しています。

公的資金と製薬企業と連携

2020年1月に、キノファーマはあすか製薬と、子宮頸部異形成の治療薬に関する独占的オプション契約(あすか製薬が日本における開発・販売の権利を優先的に得る契約)を結びました。尋常性疣贅の治療薬について、2021年1月から岩城製薬と共同で開発を進め、2022年8月に共同開発・商業化契約を結びました。同社は、AMED(日本医療研究開発機構)とJST(科学技術振興機構)の公的資金を開発に充てたとしています。2026年7月には、創業科学者である萩原教授個人が2026年BIO Asia賞の個人賞を受賞しています。

事業と開発パイプライン

事業は、ウイルスが利用する細胞側の因子を標的とした、抗ウイルス薬の研究開発です。開発パイプラインには、抗DNAウイルス薬、抗RNAウイルス薬、神経変性疾患の治療薬があります。子宮頸部異形成では、効果的な治療薬を提供することを最優先の事業に位置づけています。

会社情報

会社名株式会社キノファーマ
所在地東京都中央区日本橋本町3丁目11番5号 日本橋ライフサイエンスビルディング2 705号
設立2005年4月
代表代表取締役社長CEO 黒石眞史
事業抗ウイルス薬の研究開発
技術領域宿主因子を標的とするHPV抗ウイルス薬
連携京都大学(共同研究)、あすか製薬(2020年1月にオプション契約)、岩城製薬(2022年8月に共同開発契約)
URLhttps://www.kinopharma.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

子宮頸部異形成は、軽度から中等度では、診断されても経過観察を続けるしかない病気です。薬による治療が実現すれば、患者が手術の前に選べる手段が増えるといえます。ウイルス自身ではなく細胞側の因子を狙う発想は、HPV以外の感染症にも向けられている点が特徴です。

とくに注目したのは、日本と韓国で進む膣錠の臨床試験です。結果はこれから確かめられる段階であり、承認もこれからです。治療薬のない病気に取り組む姿勢として、今後の結果を見守りたいと考えます。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら

この企業について、
もっと深く知りたい方へ

パートナーシップ・お問い合わせはこちらから。