新素材の開発を速めるAI材料探索を研究する Periodic Labs(米国発)

新素材の開発を速める「AI材料探索」を研究【Periodic Labs|米国発】

電池や半導体に使う新素材の開発には長い年月がかかり、製品の性能向上や脱炭素の進み方を左右する課題になっています。この課題に挑むのが、米国のピリオディック・ラボ(Periodic Labs)です。AIと、自動装置が実験を進める自律実験室を組み合わせた「AI材料探索」を研究しています。2025年9月には約3億ドル(約450億円)のシード調達が報じられ、エヌビディアの投資部門なども出資に加わりました。

新素材開発の課題

Periodic Labsの紹介と、新素材の開発に10〜20年を要し、AIが予測した多数の候補の検証に時間がかかる課題を示す図

開発期間が10〜20年に及ぶ

新しい材料を発見してから製品に使われるまでには、長い年月がかかります。米国の全米科学・工学・医学アカデミーの報告書は、従来の材料開発には発見から実用化まで10〜20年を要するとしています。このままでは、電池や半導体の性能向上に必要な新素材を、製品に取り入れる時期が遅れます。

候補が多く検証が滞る

AIが予測する材料の候補は急増していますが、実験で一つずつ確かめるには時間がかかります。Google DeepMindの材料探索AI「GNoME」は2023年、約220万種の新しい結晶構造を予測し、そのうち約38万種を安定な候補として示しました。一方、公表時点で外部の研究者が実験で合成を確かめていたのは736種で、多くの候補は実験での確認を待つ状態です。

FrontJournalの解説
  • 結晶構造原子が規則正しく並んだ配置のこと。同じ元素の組み合わせでも並び方が変わると、硬さや電気の通しやすさなどの性質が変わる。
  • GNoMEGoogle DeepMindが開発した材料探索AI。安定して存在できそうな結晶を計算で予測する。

Periodic Labsが「AI材料探索」を研究

AI材料探索の研究を示す図。自律実験室が昼夜を問わず合成と測定を繰り返し、AIが実験データを解析して次の実験を選ぶ

課題解決に挑むPeriodic Labs

Periodic Labsは、AIと自律実験室を組み合わせて新しい材料を探す「AI材料探索」を研究しています。2025年に米カリフォルニア州で活動を公表し、メンローパークに24時間稼働する実験室を設けました。創業チームには「ChatGPT」や前述の「GNoME」の開発に関わった研究者が集まり、スタンフォード大学とノースウェスタン大学の教授陣が科学諮問委員会に加わっています。

自律実験で検証が高速化

自律実験室を使うと、材料の候補を確かめる速さが上がります。従来の実験は研究者が手作業で試料を合成・測定するため、一度に試せる条件の数に限りがありました。同社の実験室では自動装置が昼夜を問わず合成と測定を繰り返し、1回の実験でギガバイト単位のデータを生み出します。論文にはほとんど載らない失敗の記録も残るため、AIは成功と失敗の両方から次の実験を選べます。

AI解析で次の実験が早まる

実験結果をAIが読み解くことで、次の実験までの時間が短くなります。材料の結晶構造を調べるX線回折(XRD)の解析は、これまで研究者が実験条件や過去の結果を照らし合わせ、数時間かけて判断してきました。同社は2026年9月、自社の実験データで追加学習した1兆パラメータのAIモデル「Periodic Neon」を発表し、この解析に使っています。仮説を立て、合成し、結果を確かめる一連の流れをAIが担い、材料探索の周期を縮めることを目指しています。

FrontJournalの解説
  • 自律実験室AIが次の実験を決め、自動装置が合成と測定を行う実験施設。手作業の実験と比べ、昼夜を問わず多くの条件を試せる。
  • X線回折(XRD)物質にX線を当て、散乱したX線の角度と強さのパターンから原子の並び方を調べる測定法。材料が狙いどおりの結晶になったかを確かめる基本の手段である。
  • パラメータAIモデルの内部で、学習によって調整される数値。数が多いほど複雑な関係を表現できる。

AI材料探索の未来

AI材料探索の未来を示す図。半導体の放熱材料のデータ解析を支援し、送電ロスの少ない電力網を目指し、大手投資家から資金を調達した

放熱材料のデータ解析を支援

「AI材料探索」は、半導体の発熱という課題にも応用されています。高性能なチップほど発熱が大きく、熱を逃がす材料の性能がスマートフォンやデータセンターの処理能力を左右します。同社はチップの放熱に課題を抱える半導体メーカーに向けて専用のAIエージェントを開発し、技術者が実験データを速く読み解けるよう支援しています。

送電ロスの少ない電力網を目指す

同社は、今より高い温度で働く超伝導材料の発見を長期の目標に掲げています。超伝導は電気抵抗がゼロになる現象で、現在の材料は極低温まで冷やす必要があり、冷却設備の負担が用途を狭める要因です。より高い温度で働く材料が見つかれば、送電ロスの少ない電力網や次世代の交通機関につながると同社は説明しています。日本では京都大学などが、既存の高温超伝導線を束ねたケーブルを試作し、核融合装置や航空機モーターへの応用をめざしています。

シード期に約450億円を調達

同社は2025年9月、約3億ドル(約450億円)のシード調達を公表しました。アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)やエヌビディアの投資部門NVentures、アクセルのほか、ジェフ・ベゾス氏らも出資に加わっています。Bloombergの報道によると、この調達時の企業評価額は約13億ドル(約1,950億円)でした。同社は資金を研究チームの拡大と実験室の拡張、AIによる科学研究の開発に充てるとしています。

FrontJournalの解説
  • 超伝導特定の温度以下で電気抵抗がゼロになる現象。現在の材料の多くは、液体窒素などでの冷却を必要とする。
  • シード調達事業の立ち上げ段階で行う最初期の資金調達。研究開発や人材の確保に充てる。

まとめ

「AI材料探索」は、材料開発に長い年月がかかる課題に、AIと自律実験室の組み合わせで取り組む研究です。Periodic Labsは24時間稼働する実験室で成功と失敗の両方のデータを集め、そのデータでAIを学習させる仕組みを築いてきました。国内でも、機械学習で約2万分子から青色有機ELの発光材料を絞り込んだ研究や、触媒と反応条件を同時に探索する実験が報告されています。2026年12月には、新素材の研究成果と事業化をつなぐ展示会「nano tech 第26回」も東京ビッグサイトで開かれます。FrontJournal編集部は、実験データで学ぶAIが新素材の開発期間を縮め、電池や半導体の進歩を後押しすることに期待しています。

※ 本記事は各社の公式発表・主要報道をもとに、FrontJournal編集部が再構成したものです。数値は各社・各媒体の公表値です。ドルの円換算は1ドル=約150円で概算しています。
主な出典:Periodic Labs 公式(トップページ/「Building Labs that Learn」2026年9月15日)、TechCrunch(2025年9月30日)、Google DeepMind(GNoME・2023年11月29日)、Bloomberg(2026年3月25日)、全米科学・工学・医学アカデミー(材料開発の研究支援に関する報告書)。

この記事の作者

FrontJournal編集部

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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