ThermieL「熱物性マッピング」を開発

株式会社ThermieL(サミエル)

ThermieL「熱物性マッピング」を開発

企業紹介|株式会社ThermieLとは?

半導体や電子部品の中で、熱がどこで伝わりにくくなっているかを面で測る「熱物性マッピング」。株式会社ThermieLは、その社会実装を目指す、名古屋大学発の半導体・電子材料系ディープテック企業です。ロックインサーモグラフィ式レーザー周期加熱法を使い、熱の伝わり方を非接触・非破壊で可視化する技術を開発しています。

キーワード「熱物性マッピング」

「熱物性マッピング」は、材料の熱の伝わりやすさを、位置ごとの分布として測る技術です。ThermieLは、熱拡散率(温度が伝わる速さ)や熱伝導率のほか、界面熱抵抗(部材どうしの境目での熱の通りにくさ)も、空間分布として可視化します。非接触・非破壊で測るため、試料を壊さずに内部の状態を調べられます。

市場課題|半導体の放熱設計に時間がかかる

現状の放熱設計の課題

発熱密度が高まり放熱が課題

生成AIやデータセンターの発展に伴い、GPU(画像処理用の半導体)やパワー半導体の発熱密度(単位面積あたりに出る熱の量)は、飛躍的に増加しています。半導体デバイスでは放熱技術が性能を左右するため、熱の逃がし方の設計が欠かせません。放熱の設計が追いつかなければ、半導体の性能を十分に引き出しにくくなります。

試作の繰り返しで開発が長期化

放熱設計では、試作とシミュレーション(計算機上の模擬)を繰り返さなければならないケースが多くあります。その結果、開発期間とコストの増加が課題になっています。開発の初期段階で実測の結果を設計へ戻しにくいと、手戻りの負担が大きくなりやすい状況です。

他にも、材料の内部でばらつく熱の伝わり方、部材どうしの境目で生じる熱の通りにくさ、測定のために試料を壊してしまう破壊検査の負担、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 発熱密度半導体などの単位面積あたりに発生する熱の量である。値が大きいほど熱がこもりやすく、放熱の設計の難度が上がる。

ThermieLの強み|「熱物性マッピング」を開発

ThermieLが「熱物性マッピング」を開発

熱の広がりを面で可視化

従来のサーモグラフィは表面の温度の分布を映す手法で、材料が熱を伝える性質そのものは示しません。

ThermieLの「ロックインサーモグラフィ式レーザー周期加熱法」は、周期的に強さを変えたレーザー光で加熱し、温度変化をサーモグラフィで記録する手法です。加熱の周期に同期した成分だけを取り出すロックインサーモグラフィ(信号処理を組み合わせた測定)で温度波形を取り、数理モデルで解析します。得られるのは、熱拡散率や熱伝導率の位置ごとの分布です。絶縁放熱回路基板(DBC基板)なら、厚さ方向の分布から内部の状態を非破壊で調べられます。熱の通りにくい場所を面で特定でき、放熱の改善点を絞りやすくなります。

断面で界面の熱抵抗を測定

シミュレーションは材料の熱物性の値を前提に計算するため、実測値が得られなければ、設計の確かさが下がります。

レーザー光で加熱した対象を非接触で観測するため、試料を壊さずに測定できます。露出した断面では、周期的な加熱で生じる温度の波が界面で不連続になる様子から、界面熱抵抗を直接測定でき、DBC基板への適用実績もあります。高熱伝導フィラー(熱を通しやすい粒子)を分散させた複合樹脂の厚み方向の熱拡散率の可視化は、放熱材料での適用例です。熱物性の二次元の分布は、開発の初期段階から実測を設計へ戻すための情報です。手戻りを減らし、熱設計の開発効率を高められます。

FrontJournalの解説
  • 熱拡散率物質の中を温度の変化が伝わる速さを表す物性値である。値が大きいほど熱が速く広がり、放熱材料の評価に使われる。

熱物性マッピングの未来|受託測定から海外へ

熱物性マッピングが変える未来

受託測定を提供中

ThermieLは、熱物性評価サービスとして、受託測定を現在提供しています。対象は、半導体・電子材料・自動車・航空宇宙など幅広い分野の研究開発です。高熱伝導のCFRP(炭素繊維で強化した樹脂)のほか、TIM(熱界面材料)、セラミックス、黒鉛材料にも適用実績があります。測定の相談は、公式サイトの問い合わせフォームで受け付けています。

オンプレミス型評価を構築

顧客企業の社内で使えるオンプレミス型の熱物性評価サービスの構築を、ThermieLは進めています。オンプレミス型とは、評価の仕組みを顧客の拠点に置いて使う形態です。受託測定に加えて、継続的な評価を可能にすることを目指しています。あわせて、熱物性マッピングシステム「Thermospect」(サーモスペクト)の開発も進めています。

熱計測の海外展開を目指す

半導体・電子材料分野を中心に海外市場の販路を開拓し、日本発の熱計測技術を世界へ広げることを、ThermieLは目指しています。愛知県のディープテック推進事業「Aichi Deeptech Launchpad」では、専門家によるメンタリングや企業とのマッチング、海外展開支援を活用する方針です。国内外の事業連携を通じて、事業戦略の高度化も図ります。熱物性を実測できる手段が世界に広がれば、生成AI時代の半導体の放熱設計を、実測に基づいて進めやすくなります。

会社概要|ThermieLの事業内容・設立背景

名古屋大学の研究成果から設立

ThermieLは、2025年6月に設立されました。名古屋大学の熱制御工学研究グループ(長野研究室)の研究成果を基盤に、その成果を産業界へ展開する名古屋大学発ベンチャーの認定企業です。代表取締役CEOは藤田涼平で、本社は名古屋市千種区の名古屋大学インキュベーション施設内にあります。

採択・連携

藤田涼平の「ロックインサーモグラフィによる高速熱物性マッピング技術の事業化検証」は、2024年6月にTongaliの「GAPファンド」令和5年度ステップ1の採択者として発表されました。2026年7月には、愛知県の「Aichi Deeptech Launchpad」の2026年度アクセラレーションプログラムに採択されています。採択された事業は、「オンプレミス型熱物性評価サービスの事業化および海外展開の構築」です。

評価から設計支援まで

ThermieLの事業は、熱物性評価サービス、熱計測装置の開発、熱設計支援です。サービスは、受託測定、導入支援、技術提案です。導入支援では、開発品の性能評価や、社内での迅速で大量の測定といった要望に合わせた計測技術の導入を支えます。

会社情報

会社名株式会社ThermieL(サミエル)
所在地愛知県名古屋市千種区不老町1 名古屋大学インキュベーション施設103
設立2025年6月
代表代表取締役CEO 藤田 涼平
資本金300万円
事業熱物性評価サービス(受託測定)、熱計測装置の開発、熱設計支援
技術領域熱物性マッピング。ロックインサーモグラフィ式レーザー周期加熱法
連携名古屋大学
採択Tongali GAPファンド。愛知県 Aichi Deeptech Launchpad
URLhttps://www.thermiel.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

半導体の発熱が増えるほど、熱がどこで滞るかを知ることが、設計の前提になります。ThermieLは、熱の伝わり方を面の分布として測る技術で、その判断材料を実測で提供しています。放熱設計を実測から見直せる点が、この技術の出発点です。

特徴は、熱拡散率や界面熱抵抗を、非接触・非破壊で測れる点です。試料を壊さないため、同じ部材で評価を重ねやすくなります。放熱の改善点を早く見つけられる可能性があります。

受託測定から始まり、オンプレミス型の評価サービスへ進む計画です。熱の実測が研究室や工場に広がれば、放熱設計の進め方も変わっていきます。海外展開がどう進むのかに期待します。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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