信水「超低圧RO膜」を研究|水道の蛇口につながる浄水器から、きれいな水が流れ出るイラスト

株式会社信水

信水「超低圧RO膜」を研究|研究領域=水道水圧で・動く浄水膜/強み=電源とポンプが・要らない/将来性=途上国や災害時へ・展開を目指す

企業紹介|株式会社信水とは?

電気もポンプも使わず、水道水の圧力だけで飲み水を得る技術「超低圧RO膜」。株式会社信水は、その社会実装を目指す、信州大学発のマテリアル系ディープテック企業です。ナノカーボン技術をもとにした次世代のRO膜とモジュール(膜を組み込んだ部品)を開発・販売し、飲み水に課題を抱える地域への展開を見据えています。

キーワード「超低圧RO膜」

「超低圧RO膜」は、水道水と同じ程度の低い圧力(0.2MPa)で不純物を取り除ける逆浸透膜です。逆浸透膜はほぼ水の分子だけを通す膜で、従来のRO膜浄水器では、水道水圧での駆動は難しいとされてきました。圧力を下げられるため、電源やポンプがなくても、蛇口につなぐだけで浄水できます。

市場課題|飲み水の確保に電源が要り、浄水設備の負担も重い

現状の浄水膜の課題|現状は、電源や前処理の設備が負担で導入しにくい|飲み水の確保に・電源が必要/塩素で劣化し・前処理が必要

飲み水の確保に電源が必要

従来のRO膜浄水器は、水道水圧では駆動しにくく、ポンプなどの電源による加圧が欠かせません。水道水をそのまま飲める国は世界でも10数か国にとどまり、アジアやアフリカの多くの国では水質が飲用に適さないため、浄水器の需要は高まっています。電力が不安定な地域や災害時には、安全な飲み水を確保する手段が限られるおそれがあります。

塩素で膜が劣化し前処理が必要

水道水には消毒用の塩素が残っており、従来のRO膜は塩素で劣化しやすいため、前処理に活性炭が必要です。さらに、低い圧力では膜の分離性能が大きく下がります。塩素による劣化で膜の寿命が短く、前処理の部材も要るため、浄水器のコストが高くなる点が課題です。

他にも、水の通りにくさを示す透水性の低さ、浄水回収率の低さ、膜表面の汚れやすさ、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 逆浸透膜ほぼ水の分子だけを通し、塩分などの不純物を取り除く膜を指す。水に圧力をかけて膜を通過させる。略称はRO膜。

信水の強み|「超低圧RO膜」を研究

信水が「超低圧RO膜」を研究|これまでに、水道水圧の駆動で浄水を実現|水道水圧で・動く複合膜/活性炭が要らない・耐塩素性

水道水圧で動く複合膜

従来のRO膜は、高分子の薄い膜に高い圧力をかけて水を通すため、水道水圧では十分に水が通りません。

同社が事業化するRO膜は、信州大学で開発された、食品用途のセルロースナノファイバー(CNF、植物由来の極細繊維)と高分子素材を組み合わせた独自の構造です。従来より50%以上低い圧力でも、2〜3倍の水透過性と不純物の除去力を両立します。駆動に必要な圧力は、従来のRO膜浄水器では難しかった水道水圧と同じ0.2MPaで、電源もポンプも貯水タンクも不要です。水道の蛇口に直結して使えるため、電力が不安定な地域や災害時でも、安全な飲み水を確保できるようになります。

活性炭が要らない耐塩素性

従来のRO膜は残留塩素で劣化しやすく、前処理の活性炭が欠かせません。

同社が事業化するRO膜は、塩素による劣化を防ぐ構造を備え、前処理に使う活性炭が不要です。水道水に残る塩素を前処理で取り除く工程そのものが要らなくなる点が、従来のRO膜との大きな違いです。汚れの付着を抑える耐ファウリング性(膜表面が汚れにくい性質)も併せ持ちます。有機フッ素化合物(PFAS)についても、試験で97%以上の除去効果が確認されている点も強みです。前処理の部材が減るため、より簡便な構成の浄水器にできます。

FrontJournalの解説
  • セルロースナノファイバー植物の細胞壁に含まれるセルロースを、ナノメートル(10億分の1メートル)の太さまでほぐした繊維を指す。略称はCNF。

超低圧RO膜の未来|国際規格の認証から途上国への展開へ

水道水圧の浄水が変える未来|国際認証から途上国への展開を目指す|信州大学の膜が・国際認証を取得/家庭向け浄水器の・実証を計画/途上国から世界へ・展開を目指す

信州大学の膜が国際認証を取得

信州大学が開発した水道水圧で動く浄水膜は、すでに米国の浄水器規格で認証を受けています。2021年9月、CNFと芳香族ポリアミドの複合RO膜モジュールが、米国の認証機関NSFインターナショナル(公衆衛生分野の非営利団体)の浄水器規格「ANSI58」の認証を、国内で初めて取得しました。審査では、薬品や部品の書類審査、現場監査、311項目の透水・抽出試験などが行われています。2025年の発表では、国内外の企業との実証試験でも、従来の製品を上回る浄水性能が確認されています。

家庭向け浄水器の実証計画

短期では、家庭用の浄水器として、実際に使われる場面での実証を計画しています。採択課題では、使う地域に合う家庭用の浄水器(POU、水を使う場所に置く方式)の開発に向け、市場調査と顧客開拓と実証試験を進めるとされています。事業化の推進機関は丸紅で、浄水器をサービスとして提供する事業モデルも検証の対象です。信州大学は、集合住宅や災害時での活用を想定しています。

途上国から世界へ展開を目指す

目指すのは、飲み水に課題を抱える途上国を中心に、安全な水へのアクセスを広げることです。将来的には先進国も視野に入れ、水課題のある地域や防災用途へ展開する計画です。浄水に使う電力を減らせるため、環境への負荷を抑えることも掲げています。実現すれば、電気の通わない地域でも、蛇口から安全な飲み水を得られる場面が増えます。

会社概要|信州大学の研究から2026年に設立された浄水膜を研究する企業

信州大学の研究を事業化

株式会社信水は、2026年5月20日に設立された信州大学発の企業です。信州大学の遠藤守信特別栄誉教授が起業し、代表取締役は池田大助が務めます。遠藤教授の研究グループは、2025年7月に電源とポンプが不要な新型のRO膜を発表し、成果は国際学術誌『Advanced Materials Interfaces』に掲載されました。2026年8月7日付で、信州大学発スタートアップに認定されています。

採択・連携・受賞

事業化の課題は、甲信・北関東の大学や企業が参加するIJIEの「GAPファンドプログラム2024 ステップ2」に採択されました。課題名は「極超低圧で駆動する超高透水逆浸透膜・モジュールの製造・販売事業に向けたフィージビリティスタディ」で、丸紅株式会社が事業化推進機関として協力しています。2026年10月6日には、大阪で開かれた「Global startup EXPO 2026」で「Tsucrea Award」を受賞しました。

RO膜とモジュールを開発・販売

事業の中心は、次世代のRO膜と、膜を組み込んだモジュールの開発・販売です。理念は「世界を潤す、日本の誠実さ。」で、研究者と事業開発メンバーが一体となって技術の社会実装に取り組みます。2026年6月20日には、コーポレートサイトを公開しました。本店の所在地は長野県長野市です。

会社情報

会社名株式会社信水(Shin-SUI Inc.)
所在地長野県長野市若里4丁目17-1
設立2026年5月20日
代表代表取締役 池田大助
事業次世代RO膜およびモジュールの開発・販売
技術領域ナノカーボン技術を基盤とするRO膜(逆浸透膜)
連携信州大学、丸紅株式会社(事業化推進機関)
採択IJIE-GAPファンドプログラム2024 ステップ2。Global startup EXPO 2026「Tsucrea Award」
URLhttps://sites.google.com/shin-sui.com/homepage

編集後記|FrontJournal編集部より

浄水は、電気と設備がそろって初めて成り立つ、と考えられがちです。信水が事業化する膜は、水道にもともとある圧力だけで動く点に出発点があります。身近なインフラの力を使い切る発想が、この技術の核です。

同じ信州大学発では、株式会社ナフィアスが、ナノファイバーの不織布を使ったマスクやフィルターを製造・販売しています。信水は水を通す膜、ナフィアスは繊維の不織布と形は異なります。ともに信州大学の素材の研究を、フィルターという形で社会に届ける企業です。

蛇口をひねるだけで、電気のない場所でも飲み水を確保できる日。その実現には、使われる場面での実証を重ねる歩みが欠かせません。信水の取り組みの広がりを、楽しみに待ちたいと思います。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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