衛星の安全な運用を守る宇宙ゴミ除去を研究する ClearSpace(スイス発)

衛星の安全な運用を守る「宇宙ゴミ」除去を研究【ClearSpace|スイス発】

打ち上げられる人工衛星が増えるなか、地球を回る軌道で「宇宙ゴミ」との衝突をどう避けるかが課題になっています。スイスのクリアスペース(以下ClearSpace)は、使い終えた衛星などの「宇宙ゴミ」を捕獲して軌道から取り除く技術の研究に取り組む企業です。同社は欧州宇宙機関(ESA)の除去計画「ClearSpace-1」に参加し、ロボットアームによる接近と捕獲の運用を担っています。「ClearSpace-1」は、2029年の打ち上げを予定しています。

「宇宙ゴミ」の課題

ClearSpaceの紹介と、宇宙ゴミが増えて人工衛星の衝突リスクが高まり、破片の連鎖で安全な軌道が減る恐れがあるという課題を示す図

宇宙ゴミが増え衝突リスクが上昇

地球を回る軌道で「宇宙ゴミ」(スペースデブリ)が増え続け、人工衛星が衝突する危険が高まっています。ESAの2025年の報告書によると、監視網が追跡する物体は約4万個に上り、大きさ1cmを超える破片は120万個以上あると推計されています。破片との衝突で衛星が損傷すれば、通信や気象観測、位置情報のサービスが止まる恐れがあります。

破片の連鎖で安全な軌道が減る恐れ

「宇宙ゴミ」どうしの衝突や爆発で新たな破片が生まれ、その破片がさらに別の衝突を招く連鎖が懸念されています。ESAは同じ報告書で、新たな打ち上げが無くても、破片が生まれる速さが大気圏再突入で自然に燃え尽きる速さを上回るため、「宇宙ゴミ」は増え続けると指摘しています。このままでは、衛星を安全に置ける軌道が減り、宇宙の利用を続けにくくなります。

FrontJournalの解説
  • スペースデブリ運用を終えた人工衛星、ロケットの上段、衝突や爆発で生じた破片など、軌道上に残る人工物の総称。秒速数kmで飛ぶため、小さな破片でも衛星を損傷させる。
  • 大気圏再突入軌道上の物体が高度を下げて大気圏に入ること。空気との摩擦で高温になり、多くの物体は燃え尽きる。

ClearSpaceが「宇宙ゴミ」除去を研究

宇宙ゴミ除去の研究を示す図。ロボットアームで使用済み衛星を破片を増やさずに捕獲し、再突入で物体ごと燃え尽きさせる

課題解決に挑むClearSpace

ClearSpaceは、使い終えた人工衛星などの「宇宙ゴミ」をロボットアームで捕獲し、軌道から取り除く技術を研究する企業です。2018年に創業し、スイスのルナンに本社を置いています。出発点は、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の宇宙センターが2010年から進めてきた、「宇宙ゴミ」に接近して捕獲する研究プロジェクト「CleanSpace One」です。

ロボットアームで破片を増やさず捕獲

捕獲の際に「宇宙ゴミ」を壊すと新たな破片が生まれるため、ESAの計画「ClearSpace-1」では、除去用の衛星が4本のロボットアームで対象を捕らえます。対象は、ESAが2001年に打ち上げた重さ約95kgの小型衛星「PROBA-1」です。ESAはこの計画を、捕獲されることを想定した接続部を持たない物体を軌道から取り除く初めての除去計画と位置づけています。

再突入で物体ごと燃え尽きさせる

捕獲した「宇宙ゴミ」は、除去用の衛星ごと高度を下げ、大気圏で燃え尽きさせます。除去用の衛星は捕獲の後、軌道の最も低い点を下げる操作を行い、大気圏への再突入に向かいます。物体が自然に高度を下げるのを待たずに軌道から外せるため、周りの衛星が衝突する危険を減らせます。ESAは2020年、この除去を民間のサービスとして購入する形で発注しました。

FrontJournalの解説
  • ESA(欧州宇宙機関)欧州の国々が加盟し、宇宙開発を共同で進める政府間の国際機関。衛星や探査機の開発、宇宙の安全確保などに取り組む。
  • PROBA-1ESAが2001年に打ち上げた小型の技術実証衛星。「ClearSpace-1」の捕獲対象に選ばれた。

「宇宙ゴミ」除去の未来

宇宙ゴミ除去の未来を示す図。使用済み衛星の除去をめざし、衛星を安全に使える軌道の維持をめざし、約43億円の資金を調達した

使用済み衛星の除去が可能に

「ClearSpace-1」の実証が済めば、運用を終えた衛星を後から軌道から取り除くという選択肢が、衛星を運用する企業や機関に加わります。ESAは2020年、ClearSpaceが率いる企業連合と8,600万ユーロ(約138億円)の契約を結びました。ESAは2024年に体制を見直し、ドイツの宇宙企業OHBが全体を率い、ClearSpaceが接近と捕獲の運用を担う形にしました。打ち上げは、ESAの計画では2029年の予定です。

衛星を安全に使える軌道の維持を目指す

同社は英国宇宙庁の除去計画「CLEAR」も担い、低い軌道に残る2つの使われなくなった物体の除去を目指しています。2025年5月には、英国宇宙庁の「CLEAR」の第2段階として、捕獲装置の機械試験と、「宇宙ゴミ」を見つける画像処理の開発を完了したと発表しました。こうした除去が各国で続けば、通信や観測の衛星を安全に運用できる軌道の維持につながります。

約43億円の資金を調達

ClearSpaceは2023年1月、シリーズAで2,670万ユーロ(約43億円)の資金調達を発表しました。OTB VenturesとSwisscom Venturesが主導し、Lakestarや米国の投資機関In-Q-Telなども参加しています。同社はこの資金で、「ClearSpace-1」に向けて事業の体制を強化すると説明しています。捕獲と除去の実績が積み上がれば、各国の宇宙機関や衛星事業者から「宇宙ゴミ」の除去を請け負う事業につながります。

FrontJournalの解説
  • シリーズA創業期を終えたスタートアップが、事業を本格的に広げるために行う資金調達の段階。最初の出資(シード)の次にあたり、製品や体制づくりに充てることが多い。

まとめ

「宇宙ゴミ」は、新たな打ち上げが無くても増え続けるとESAが指摘する課題です。ClearSpaceはロボットアームで衛星を捕獲し、捕獲した物体ごと大気圏で燃え尽きさせる技術を研究しています。ESAの「ClearSpace-1」では接近と捕獲の運用を担い、英国の「CLEAR」でも除去に向けた準備を進めています。軌道の安全という課題は、通信や気象観測の衛星を運用する日本にも共通します。FrontJournal編集部は、「宇宙ゴミ」の除去が、通信や気象観測の衛星を使い続けられる軌道の維持につながることに期待しています。

※ 本記事は各社・各機関の公式発表と主要報道をもとに、FrontJournal編集部が再構成したものです。数値は公表値です。ユーロの円換算は1ユーロ=約160円で概算しています。
主な出典:ESA「ESA Space Environment Report 2025」「ClearSpace-1」(2020年12月・2024年4月の発表ほか)、EPFL(2019年12月)、ClearSpaceのニュースリリース(2023年1月19日)、ClearSpaceのニュースリリース(CLEAR第2段階完了)。

この記事の作者

FrontJournal編集部

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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