2026.08.23 長崎大学 元発表:2026.08.20

長崎大学、骨の再生能力低下は間質細胞の疲弊が原因と解明

ニュース紹介

「骨折後の骨は本当に元通りに治るのか?~骨を構成する間質細胞の『疲弊』が骨の再生能力を低下させる~」

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科の松下祐樹教授らの研究グループは、米国テキサス大学などとの国際共同研究として、骨に損傷が起こると骨髄間質細胞が「間質疲弊」と呼ぶ機能低下状態に陥り、骨の再生能力が低下することを発見したと発表しました。骨折など骨に損傷が起こると損傷部位には新たな骨が形成され、骨は元の状態へと回復すると経験的に理解されてきましたが、その考え方を細胞レベルで問い直す知見となります。再損傷時には、骨髄間質細胞から骨髄脂肪細胞への急速な分化が生じることも確認しており、骨折治癒促進法や骨再生治療の開発への応用が期待されるとしています。研究成果は2026年8月19日付でNature Communicationsに掲載されました。

出典:科学技術振興機構(JST)・長崎大学 2026年8月20日 プレスリリース
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20260820-5/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

骨折した骨がもう一度くっつく仕組みは、骨髄の中にいる骨髄間質細胞(骨の元になる細胞を生み出す幹細胞)が新しい骨を作り出すことで支えられています。若い時期には比較的順調に治る一方で、加齢や大きな損傷、繰り返す骨折では治癒の速さや強さが落ちることが医療現場では知られてきました。

再生医療(体の細胞や組織を人為的に再生させる医療)の分野では、骨や関節を対象とした市場が世界的に大きな成長期にあります。骨折の治療をより早く確実にする方法や、加齢で骨が脆くなった患者の再生を支える技術は、高齢化が進む社会で長く求められてきたテーマです。

①「間質疲弊」という新しい概念を細胞レベルで発見

研究グループはマウスの骨髄損傷モデルと骨折モデルを組み合わせ、損傷を受けた骨で骨髄間質細胞に何が起こるかを追跡しました。その結果、骨髄間質細胞が骨を作る能力を保ったまま次第に機能を失っていく「間質疲弊(Stromal exhaustion)」と呼ぶ状態に陥ることを見いだしました。

さらに、同じ部位が再び損傷を受けると、これらの細胞は骨を作る方向ではなく、骨髄の脂肪細胞へ急速に分化することも確認しています。従来「骨は治癒すれば元通りに戻る」と考えられていた前提を、細胞の性質の変化という観点から問い直す結果となっています。

②骨折治癒促進法や骨再生治療への応用が期待

研究グループは、細胞内で骨形成に関わるWnt/β-カテニンシグナル経路(骨や組織の形成を制御する情報伝達の仕組み)を薬剤や遺伝学的手法で操作することで、疲弊した細胞の骨形成能を回復できる可能性を示したとしています。

骨・関節領域の再生医療は、幹細胞や骨移植代替材の分野を含めて世界的な研究開発が活発化しています。今回の知見は、骨折治癒促進法や、加齢に伴う骨再生能力の低下に対する治療法を検討する際の基礎になり得るものです。研究成果は2026年8月19日付でNature Communicationsに掲載されました(DOI:10.1038/s41467-026-76108-z)。

編集部からひとこと

「骨は治ればもと通り」という感覚は、患者にとっても医療者にとっても長く共有されてきた前提です。今回はその前提を、細胞の状態変化として捉え直した点に意味があります。損傷を受けた骨髄が再び損傷を受けたときに起こる変化まで追いかけている点は、繰り返す骨折や高齢者の再生医療を考えるうえで実務的な示唆にもなりそうです。

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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