カムイファーマ「炎症性腸疾患治療薬」を開発

カムイファーマ株式会社

カムイファーマ「炎症性腸疾患治療薬」を開発

企業紹介|カムイファーマ株式会社とは?

プロバイオティクス(ヒトの体に有用な微生物)の物質で、腸のバリア機能を高めて傷んだ粘膜の回復を促す「炎症性腸疾患治療薬」。カムイファーマ株式会社は、その社会実装を目指す、旭川医科大学発の創薬系ディープテック企業です。主力の候補物質は、乳酸菌が分泌する物質です。

キーワード「炎症性腸疾患治療薬」

炎症性腸疾患とは、大腸や小腸の粘膜に慢性の炎症や潰瘍が起こる病気の総称で、潰瘍性大腸炎とクローン病に大別されます。国の難病に指定されており、下痢や血便、腹痛などの症状が出る病気です。同社は、粘膜治癒(傷んだ腸の粘膜が治った状態)を促す薬として、この治療薬を開発しています。

市場課題|炎症性腸疾患の治療は難しい

現状の炎症性腸疾患治療の課題

幅広い年代で再燃しやすい

発症は25〜30歳ごろにピークがあり、若い世代から高齢者まで幅広い年代でみられます。患者数が最も多いのは30代です。標準的な治療薬を服用しても、多くの症例で再燃(症状がぶり返すこと)するといわれています。

抗炎症剤が中心の治療

現在の治療薬は、炎症を抑える抗炎症剤が中心です。近年は、治療のゴールが症状の落ち着く寛解ではなく、粘膜治癒だと明らかになってきました。ただ、粘膜治癒を直接促す薬は、まだ実現していないといわれています。

他にも、病気の原因が明らかになっていません。根治療法も確立されていません。抗TNFα薬(炎症に関わる物質TNFαを抑える薬)が、効かない患者や使えない患者もいる、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 粘膜治癒炎症や潰瘍で傷んだ腸の粘膜が、治った状態を指す。炎症性腸疾患では、症状が落ち着く寛解にとどまらず、これが治療のゴールだと明らかになってきた。

カムイファーマの強み|「炎症性腸疾患治療薬」を開発

カムイファーマが「炎症性腸疾患治療薬」を開発

腸のバリア機能を高める

プロバイオティクス由来の長鎖ポリリン酸は、腸の上皮細胞が作る壁のはたらきを強めます。

同社の候補物質は、サッポロビールが見出した麦芽乳酸菌SBL88から同定した長鎖ポリリン酸です。旭川医科大学とサッポロビールの研究で、SBL88が分泌するこの物質に、バリア機能(腸の壁が有害な物質を通さないはたらき)を強める活性があることが示されました。炎症を抑える従来の薬と違い、長鎖ポリリン酸は腸管上皮に作用して、傷んだ粘膜を保護し、修復する特性をもちます。炎症を抑えるだけでなく、粘膜そのものの回復を促し、症状の改善につなげられる可能性があります。

バリア強化と炎症抑制を両立

長鎖ポリリン酸は、バリア機能を強めるだけでなく、炎症を抑える作用も示しています。

旭川医科大学の研究グループは、ヒトのマクロファージ(免疫細胞の一種)と、大腸炎を起こすよう作ったマウスで、長鎖ポリリン酸が炎症を抑える作用を示したと報告しています。バリア機能の強化については、プロバイオティクス由来のポリリン酸がインテグリン(細胞表面にあるタンパク質)を介した経路で働くことも、同じ研究グループが2011年に示しました。炎症の抑制とバリアの強化を両立できれば、治療の選択肢が広がる可能性があります。

FrontJournalの解説
  • 長鎖ポリリン酸リン酸が長く鎖状につながった高分子である。乳酸菌の一種が分泌し、腸の上皮細胞に作用してバリア機能を強める。

炎症性腸疾患治療の未来|粘膜治癒を促す新薬へ

炎症性腸疾患治療が変える未来

10人の試験で7人が寛解

10人の試験で、7人が臨床的寛解(症状が落ち着いた状態)に達しました。旭川医科大学の藤谷幹浩教授らの研究グループが、潰瘍性大腸炎の患者10人に長鎖ポリリン酸を初めてヒトに用い、2019年に報告した結果です。7人のうち4人は抗TNFα薬による治療歴があったにもかかわらず、内視鏡の検査でも寛解を確認しました。試験では、副作用は観察されませんでした。ただし対象は10人にとどまり、有効性の確認はこれからの段階です。

パイプライン開発の加速

同社は、2022年に調達した資金をもとに、自社の創薬パイプライン(開発中の新薬候補群)の開発を加速する方針です。主な候補は、炎症性腸疾患治療薬の候補であるポリリン酸製剤と、膵臓がん治療薬の候補であるフェリクローム(乳酸菌の一種から見つかった、抗腫瘍作用をもつ物質)です。安全性の高いプロバイオティクス由来の物質から、「プロバイオティック医薬品」の創出を目指しています。

粘膜治癒を促す新薬を目指す

同社は、炎症性腸疾患の治療で、粘膜治癒を直接促す新薬の実現を目指しています。小児や高齢者、ほかの病気を併せもつ患者にも安心して処方できるよう、副作用が少なく、長く投与できる薬の研究開発に力を入れています。自社の研究開発力を強化し、製薬企業や大学、創薬系の受託会社と連携して、世界市場を見据えた医薬品の開発を進める考えです。「北海道から安全で独創的な新薬を届けたい」という創業以来の思いが、その土台にあります。

会社概要|カムイファーマの事業内容・設立背景

2018年4月に大学発で創業

カムイファーマ株式会社は、旭川医科大学とサッポロホールディングスから、プロバイオティクス由来の長鎖ポリリン酸を用いた新規炎症性腸疾患治療薬の開発に関する研究成果を継承し、2018年4月に発足しました。旭川医科大学の藤谷幹浩教授らの研究成果に基づく、同大学発の創薬バイオベンチャーです。藤谷教授は取締役CSO(最高科学責任者)を務めています。代表取締役社長は尾川直樹氏です。所在地は北海道旭川市の旭川医科大学内にあります。

大学・企業との連携

長鎖ポリリン酸の元になった麦芽乳酸菌SBL88は、サッポロビールが見出したものです。カムイファーマは、医薬品開発と、有用微生物を利用したヘルスケア事業開発を手がけています。CYBERDYNE株式会社との非医薬品事業での業務提携により、プロバイオティクス技術を活用した新たな事業に取り組む予定です。

シリーズBで累計約8.8億円

同社の累計資金調達額は、2022年7月時点で約8.8億円です。同月のシリーズBラウンド(研究開発を進めた事業を、次の成長段階へ広げる資金調達)では、第三者割当増資で総額6.5億円強を調達しました。割当先は、CYBERDYNEと同社子会社が運営するCEJファンド、DGインキュベーション、広瀬克利氏のほか、シリーズAに続く三菱UFJキャピタルと北海道ベンチャーキャピタルです。調達資金は、自社の創薬パイプライン開発の加速などに使う予定です。

会社情報

会社名カムイファーマ株式会社
所在地北海道旭川市緑が丘東2条1丁目1番1号 旭川医科大学内
設立2018年4月4日
代表代表取締役社長 尾川直樹
事業医薬品開発、有用微生物を利用したヘルスケア事業開発
技術領域プロバイオティクス由来の生理活性物質(長鎖ポリリン酸、フェリクローム)の医薬品化
連携旭川医科大学、サッポロホールディングス、CYBERDYNE
URLhttps://www.kamuipharma.co.jp

編集後記|FrontJournal編集部より

炎症を抑える薬が中心の治療のなかで、粘膜そのものの回復を狙う発想が、カムイファーマの取り組みの軸だと感じました。ビール会社が見出した乳酸菌の物質から、大学の研究を経て新薬の候補が生まれた流れも、印象的です。粘膜治癒を直接促す薬がまだ実現していないといわれる領域だけに、取り組みの意義は小さくないと思います。

とくに注目したのは、抗TNFα薬による治療歴がある患者でも、内視鏡で寛解がみられた点です。試験の対象は10人と小規模ですが、抗TNFα薬による治療歴がある患者にも新たな選択肢が加わる可能性を感じさせます。より多くの患者での検証が進むかどうかを、見守りたい取り組みといえます。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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