Gifts「ウェアラブル胎児エコー」を開発

株式会社Gifts(ギフツ)

Gifts「ウェアラブル胎児エコー」を開発

企業紹介|株式会社Giftsとは?

妊婦のおなかに巻いて、胎児の様子を確認する技術「ウェアラブル胎児エコー」。株式会社Giftsは、その技術の開発に取り組む、慶應義塾大学発の医療機器ベンチャーです。ゲル状のマットで超音波を送受信し、胎児の姿を復元する自動化システムの実現を目指しています。

キーワード「ウェアラブル胎児エコー」

「ウェアラブル胎児エコー」は、妊婦が腹部に巻いて使う、胎児の超音波検査を自動で行うことを目指す装置です。複数の超音波プローブを組み込んだマットで、さまざまな角度からの反射をもとに、計算によって胎児の姿を3次元で復元することを目指しています。自宅でも検査できるようにする発想です。

市場課題|胎児超音波検査の習得とばらつき

現状の胎児超音波検査の課題

習得に年単位かかる検査

胎児超音波検査は、画像を読み取れるようになるまでに年単位の習得が必要な検査です。体に傷をつけずに胎児の状態を詳しく調べられる非侵襲的な方法ですが、医師でも数年かかるといわれています。産科医の数も妊婦の数に対して少なく、妊婦が必要なときに検査を受けられる機会が限られています。

結果が検査者で変わる

検査の結果は、プローブを当てる検査者の技量によってばらつくことが、IPA(情報処理推進機構)の成果報告書で課題として挙げられています。そのため、検査者が変わっても同じ基準で測れる、定量的な仕組みが求められます。基準がそろった検査は、診断の質や地域による差をそろえる上でも重要です。

他にも、検査者の確保、機器の導入費用、妊婦の通院の負担、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 超音波検査人の耳に聞こえない高い周波数の音を体に当て、跳ね返ってくる反射を画像にして体内を調べる、体への負担が少ない検査である。

Giftsの強み|「ウェアラブル胎児エコー」を開発

Giftsが「ウェアラブル胎児エコー」を開発

複数の角度から3Dで復元

従来の超音波プローブは、素子が1列に並び、発した超音波を同じプローブで受信するため、複数の方向からの反射による3次元の再構築は実用化されていませんでした。

同社は、複数のプローブを組み込んだゲル状のマットを、妊婦の腹部に巻く方式を開発しています。曲がり具合を測るベンドセンサーで、プローブどうしの角度を求めます。対象の表面で鏡のように反射した信号の最大点(反射が最も強い位置)から、対象の位置と向きを推定する独自の数理アルゴリズム(計算の手順)を考案し、実験で示しました。マットに内蔵した演算素子が、複数方向の反射から胎児の姿を復元する設計です。これにより、検査者がプローブを動かさなくても、胎児を確認できるようになることを目指しています。

妊婦自身が測る自動化

従来の胎児超音波検査は、検査者がプローブを当てて動かすため、技量への依存が避けられませんでした。

同社は、妊婦が自分で測定し、計算モデルが信号から胎児を復元する自動化システムを開発しています。結果は、妊婦の手元のディスプレイと医療機関へ送られる設計です。IPAの成果報告書では、推定胎児体重や成長曲線、胎児の動きや心拍などの項目を表示する構想が示されています。最初の試作は一辺12mmのプローブで、超音波の広がり方を計算で再現する音場シミュレーションを使い、より適した大きさを探りました。これにより、検査者の技量に左右されにくい検査を、妊婦自身が実施できる形を目指しています。

FrontJournalの解説
  • 超音波プローブ超音波を体に向けて送り、跳ね返ってきた反射を受け取る検査用の端子である。探触子とも呼ばれ、従来のものは素子が1列に並んだ構造である。

ウェアラブル胎児エコーの未来|誰もが胎児を確認できる検査へ

誰もが使える胎児エコーが変える未来

胎児の異常を早期に見つける

同社が掲げる将来像の1つは、胎児の異常の早期発見です。IPAの成果報告書では、周産期死亡(妊娠22週以降から生後1週未満までの死亡)や脳性まひの予防に加え、検査の定量化による偏りの解消が、将来像として挙げられています。検査を受けられる機会が増えれば、異常に気づく時期を早める余地が生まれる、という発想です。実現すれば、妊婦と家族が早い段階で医療機関に相談し、経過を確かめる道が広がります。

医師の負担を減らす

医師の負担の軽減も、同社が自動化システムで目指す将来像の1つです。妊婦が自分で測定した結果は、手元のディスプレイと医療機関の双方に届く設計です。実現すれば、医師は結果の確認と判断に時間を使いやすくなります。産科医が少ない地域でも、一定の基準で検査を届けやすくなります。

医療格差の縮小を目指す

医療格差の縮小(地域や医療機関による、検査の受けやすさの差を縮めること)も、同社が掲げる将来像の1つです。IPAの成果報告書では、定量的で検査者による偏りのない検査により、将来的に医療格差の抑制が見込めるとされています。実現すれば、医療機関や地域にかかわらず、同じ基準の検査を受けられる道が広がります。同報告書によると、ASEAN(東南アジア諸国連合)の産婦人科医20人へのヒアリングも実施され、国内外の医療機関にニーズがあるとされました。

会社概要|Giftsの事業内容・設立背景

2023年1月に設立

株式会社Giftsは、2023年1月に設立され、東京都新宿区に本社を置いています。代表取締役は小笠原淳氏です。同社は、医療機器ベンチャーとして、胎児の様子を妊婦自身が確認できる、胎児超音波検査の自動化システムを開発しています。経済産業省の大学発ベンチャーデータベースでは、慶應義塾大学の関連ベンチャーです。IPAの成果報告書の時点では、デバイスの試作と性能評価の段階にあります。

未踏アドバンストに採択

同社の「胎児超音波検査の自動化システム開発」は、IPAの2023年度未踏アドバンスト事業に採択されました。プロジェクトマネージャーは、東京大学先端科学技術研究センターの原田達也教授です。契約金額は720万円と、IPAの採択案件ページで公表されています。採択理由では、妊婦が自ら測定できる検査機器の実現を目指す点が、社会的な影響の大きさと、実現の難しさ、未踏性の高さから評価されました。採択者として、小笠原淳氏の名前が公表されています。

共創プログラムで最優秀賞

2025年4月には、村田製作所が開催したKUMIHIMO Tech Camp with Murataで、同社の「装着型マルチアングル自動測定胎児エコー」が最優秀賞を受けたといわれています。妊婦が自分で使える装着型の機器を前提にした構想です。

会社情報

会社名株式会社Gifts
所在地東京都新宿区若松町8番8-306号
設立2023年1月
代表代表取締役 小笠原淳
事業胎児超音波検査の自動化システムの開発
技術領域医療機器(超音波)
採択IPA 未踏アドバンスト事業(2023年度)
URLhttps://gifts-ai.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

胎児の超音波検査は、習得に年単位かかることが課題とされてきました。Giftsの取り組みは、複数のプローブを巻くだけの形にして、検査のしやすさを高めようとする発想といえます。妊婦自身が測る形に近づけた点が印象的です。人の技量で行ってきた検査を装置の側で担おうとする点に、ディープテックらしさがあります。実現すれば、胎児の検査を受ける場所と担い手の前提が変わる可能性があります。

システムは開発の途中にあります。医療機器として患者に届くまでには、性能の検証から制度上の手続きまでの工程が続き、妊婦自身が正しく巻けるかといった使い方の検証も欠かせません。巻くだけという手軽な形が、検査の前提をどこまで変えるのか。病院や妊婦への届け方がどう固まるのか、今後の展開を、引き続き見守りたい取り組みです。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年10月21日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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