AVSS「抗ウイルス剤」を研究|培養細胞とウイルスを試験するイラスト

株式会社AVSS(エービス)

AVSS「抗ウイルス剤」を研究|研究領域=ウイルスの増殖を・抑える医薬品/強み=多種のウイルスで・物質を試験/将来性=検査と治療の・両方に生かす

企業紹介|株式会社AVSSとは?

ウイルスの増殖を抑えて感染症を治療する薬として、注目を集める「抗ウイルス剤」。株式会社AVSSは、その開発に取り組む、長崎大学発のライフサイエンス系ディープテック企業です。自社の抗ウイルス剤の開発に加え、ウイルス検出キットの開発や、企業が持つ物質・材料の抗ウイルス活性(ウイルスの増殖を抑える働き)を調べる共同研究等を手がけています。

キーワード「抗ウイルス剤」

「抗ウイルス剤」は、体の中でウイルスが増えるのを抑え、ウイルス感染症を治療する医薬品です。特徴は、ウイルスが細胞の中で増える仕組みの一部を妨げ、病気の進行を抑えられる点にあります。エイズの治療では、多くの抗ウイルス剤が開発されたことで、発症を抑えられるようになりました。

市場課題|新しいウイルス感染症が次々に現れ、治療薬の開発が追いつきにくい

現状の新興感染症の課題|現状は、候補の評価に時間を要し治療薬の開発が遅れる恐れ|新興感染症の・治療薬が不足/候補物質の評価に・時間を要する

新興感染症の治療薬が不足

新興感染症の多くは、流行が始まった時点で使える治療薬が乏しい状態にあります。今世紀に入ってからも、SARS(重症急性呼吸器症候群)、新型インフルエンザ、MERS(中東呼吸器症候群)、COVID-19と、新しいウイルス感染症が次々に発生してきました。治療薬が乏しいまま流行が広がると、重症の患者を薬で救う手段が限られます。

候補物質の評価に時間を要する

抗ウイルス剤の開発では、候補となる物質の評価に時間を要します。天然物のように多くの成分を含む素材から有効な物質を探す場合、膨大な数の試料を調べる作業が必要です。調べる数が増えるほど絞り込みは長期化し、治療薬の開発全体が遅れる事態が懸念されます。

他にも、ウイルスの型ごとに検出法を用意する手間、途上国へ広げにくい検査の費用、ウイルスが次々に姿を変えることへの対応、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 新興感染症新たに見つかった病原体や、新たに人の間へ広がった病原体による感染症である。SARSやCOVID-19が代表例である。流行の初期には治療薬やワクチンが用意されていないため、対策の開発が急がれる。

AVSSの強み|「抗ウイルス剤」を研究

AVSSが「抗ウイルス剤」を研究|現在は、多種のウイルスで候補の評価を提供|多種のウイルスで・物質を試験/多数の候補を・短期間で評価

多種のウイルスで物質を試験

同社の強みは、生きた感染性ウイルスを取り扱う技術です。

同社は、多種多様なウイルスを、感染性を保ったまま培養する技術を持っています。この技術を基に、培養細胞にウイルスを感染させ、そこへ物質を加えてウイルスの増殖が抑えられるかを調べる評価系(薬の効き目を調べる試験の仕組み)を築きました。試験には感染力をもつウイルスそのものを使うため、候補の物質が細胞の中での増殖を抑えるかを確かめられます。扱えるウイルスの種類が多いため、治療薬の乏しい感染症でも、薬の候補探しに着手することができます。

多数の候補を短期間で評価

候補物質を少しずつ試験する方法では、調べられる数に限りがあり、成分の多い天然物から有効な物質を探すには時間がかかります。

同社の評価系は、多くの検体を短期間で評価できるハイスループットシステム(多数の試料を並べて同時に調べる仕組み)です。多数の試料それぞれに同じ条件でウイルスを感染させ、増殖を抑えた試料を候補として選び出します。様々な天然物素材から新しい抗ウイルス活性をもつ物質を探すこの取り組みが、同社独自の抗ウイルス剤の開発の土台です。一度に多くの試料を調べられるため、新しい感染症に対しても、治療薬の候補探しを早く進めることができます。

FrontJournalの解説
  • ハイスループットシステム多数の試料を並べ、同じ条件の試験を同時に行う仕組みである。1つずつ調べる方法に比べ、短期間で多くの候補を評価できる。医薬品の開発では、有望な物質を早く絞り込む手段として使われる。

抗ウイルス剤の未来|ウイルスを扱う技術を、検査と治療に生かす

新しい抗ウイルス剤が変える未来|ウイルスを扱う技術を、検査と治療に生かす|ウイルス検査の・現場で実績/途上国でも使える・検査薬へ/感染症の専門・製薬会社を目指す

ウイルス検査の現場で実績

同社のウイルスを扱う技術は、すでに検査の現場で使われています。2009年4月には、子宮頚癌の遺伝子検査事業を始めました。2016年にはデングウイルスの検出キットを完成させ、蚊が媒介するウイルスの種類を見分けるキットも開発しています。2020年1月には新型コロナウイルスを検出するPCR法(遺伝子を増やして検出する方法)を完成させ、同年4月から沖縄県内でPCR検査の受託を始めています。

途上国でも使える検査薬へ

同社が開発を進めるのは、先進国だけでなく途上国でも使えるウイルス検査薬です。PCR検査は、コロナ禍で世界中に広まった検査の方法です。同社はこのPCR検査を、より迅速・簡便・安価な方法へ改良しています。次世代シークエンサー(遺伝子の配列を大量に読み取る装置)を用いたウイルスのゲノム解析や、PCR検査に代わる次世代の検出法の開発も進めています。

感染症の専門製薬会社を目指す

「感染症のスペシャリティファーマ」(特定の病気の領域に絞った製薬会社)が、同社の目標です。ウイルス感染症の治療薬に加え、予防薬と体外診断薬(血液などを体の外で調べる検査薬)も、導出(薬の権利を他社に供与すること)を目指す対象としています。事業の目的に掲げるのは、ウイルスについての知識とウイルスを測る技術を生かした、国内のバイオ医薬品業界への支援です。実現すれば、新しいウイルス感染症が現れたときに、検査と治療の両方の手段を届けやすくなります。

会社概要|長崎大学の研究から生まれ、沖縄に研究拠点を置くAVSS

長崎大学発として2006年創業

株式会社AVSSは、2006年10月に長崎大学発のベンチャー企業として設立されました。創業者で代表取締役CEOの小林信之氏は、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科の元教授で、エイズ治療薬の開発を支えた評価系づくりに初期から関わってきた研究者です。同社は2011年に沖縄研究室を開設し、2019年3月に長崎大学の研究室を閉じてからは、沖縄県うるま市の沖縄研究室を研究の拠点としています。本社は長崎県長崎市にあります。

沖縄県の事業と共同研究

同社は、沖縄県の研究開発支援や感染症研究の補助金を2011年、2016年、2018年に獲得し、2013年には沖縄県の研究拠点構築事業を受託しました。2017年にはバイオ医薬品等のウイルス安全性試験の受託を始め、2021年には衛生検査所(病院の外で、血液などの検体を検査する施設)として登録されています。また、株式会社龍角散とは小豆やお茶に含まれる天然由来の成分を共同で研究し、2020年9月にはその成分を配合した「龍角散ののどすっきり桔梗タブレット 抹茶ハーブ味」が発売されました。企業が持つ物質や材料の抗ウイルス活性を調べる評価も、共同研究として提供しています。

ベンチャーキャピタルと県が出資

同社は2007年4月に親和ベンチャーキャピタルと長崎県から投資を受け、資本金は設立時の1,000万円から2,750万円になりました。その後、2017年11月と2019年12月に増資し、資本金は3,600万円です。第16期から第18期の決算報告書は、公式サイトで公開されています。

会社情報

会社名株式会社AVSS(AVSS CO.,LTD.)
所在地本社:長崎県長崎市若葉町1-22 第6三光ビル 60D
沖縄支社:沖縄県うるま市州崎5-8 沖縄ライフサイエンス研究センター
設立2006年10月11日
代表代表取締役CEO 小林信之
資本金3,600万円
事業抗ウイルス剤等開発事業。ウイルス検出体外診断薬開発事業。ウイルス感染症領域におけるR&D支援事業。開発したキットに、蚊媒介ウイルス種判別キット(デング・ジカ・チクングニア・日本脳炎の各ウイルス)、デング熱ウイルス血清型判別キット、SARS-CoV-2検出用RT-qPCRキット
技術領域感染力をもつウイルスを培養細胞で扱う抗ウイルス剤の評価系(cell-based antiviral screening system)。PCR法などによるウイルス検出。次世代シークエンサーによるウイルスのゲノム解析
連携株式会社龍角散(小豆やお茶に含まれる成分の共同研究)
採択おきなわ新産業創出投資事業(研究開発支援)補助金(2011年)。沖縄県知的クラスター形成に向けた研究拠点構築事業 受託(2013年)。沖縄新産業研究開発支援事業 補助金(2016年)。沖縄県 平成30年度沖縄感染症研究成果推進事業 補助金(2018年)
URLhttps://www.avss.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

感染力をもつウイルスを、感染性を保ったまま培養して扱う。AVSSの取り組みは、この表に出にくい基盤の技術の上に、抗ウイルス剤の探索から検査までが積み重なってできています。新型コロナウイルスの流行が始まってすぐに検査法を完成させ、沖縄県内のPCR検査を引き受けたのも、平時からウイルスと向き合ってきた蓄積があったからだと感じました。

長崎で生まれ、沖縄へ研究の拠点を移しながら続けてきた研究が、抗ウイルス剤という形で実を結ぶ日を楽しみに待ちたいと思います。長崎大学から生まれたほかの企業は、長崎大学発スタートアップ10選で紹介しています。

FrontJournal編集部

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月30日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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