シーズテクノ「グラフェン直接成膜」を開発

シーズテクノ株式会社

シーズテクノ「グラフェン直接成膜」を開発

企業紹介|シーズテクノ株式会社とは?

電池の電極に使う炭素の薄い膜を、基板の上へ直接形成する技術「グラフェン直接成膜」。シーズテクノ株式会社は、その社会実装を目指す、名古屋工業大学発の環境・エネルギー系ディープテック企業です。研究開発用のグラフェン成膜を受託し、全固体電池(電解質が固体の電池)や燃料電池の電極の開発を進めています。

キーワード「グラフェン直接成膜」

「グラフェン直接成膜」は、炭素原子が六角形の格子状に並んだ薄い膜(グラフェン)を、電極などの基板(膜の土台となる板)の上へ直接形成する技術です。特徴は、剥がして移す転写の工程を経ないため、転写による膜質の劣化を避けられる点にあります。電池や燃料電池の電極の開発や、研究用の基板への成膜など、研究開発の現場で使えます。

市場課題|熱CVDのグラフェンは高温成膜が必要で、燃料電池は白金のコストが壁になる

現状の電極材料の課題

高温成膜で使える基板が限られる

熱CVD(原料ガスを加熱して膜を形成する化学気相成長法)でグラフェンを作製すると、一般に800〜1,000℃程度の高温になります。基板は、その温度に耐える材料に限られる状況です。透明電極やセンサ、電池など幅広い用途が期待されるグラフェンも、成膜できる基板の種類には制約があります。

白金の高コストが燃料電池の壁に

燃料電池の触媒(化学反応を進める材料)に使われるのは、高価で希少な白金です。市販の燃料電池自動車(FCV)では、1台あたりおよそ20〜30gの白金が、電解質の両側にある触媒の層に使われています。コストや希少性から、白金の使用量を現在の半分以下に減らさなければ、本格的な普及は難しいと考えられています。

他にも、大容量の全固体電池では、材料開発、電極と電解質の境目(界面)の問題、量産化の難しさ、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 熱CVD原料ガスを高温に加熱して化学反応を起こし、基板の表面に薄い膜を形成する方法である。反応に熱を使うため、基板は成膜温度に耐える材料に限られる。

シーズテクノの強み|「グラフェン直接成膜」を開発

シーズテクノが「グラフェン直接成膜」を開発

低温で基板へ直接成膜

従来は、銅などの触媒金属の上に形成した膜を剥がして目的の基板へ移す工程(転写)が必要で、この工程で膜質が劣化しやすくなります。

同社は、マイクロ波プラズマCVD(マイクロ波で原料ガスをプラズマにして膜を形成する方法)で、基板へグラフェンを直接成膜する技術を開発しています。反応をプラズマで進めるため、熱CVDより低い300℃程度の低温でも成膜できる点が特徴です。触媒金属から移す工程が要らず、転写による膜質の劣化がないうえ、膜厚が均一な膜が得られるといわれています。銅などの金属やガラス、シリコンの基板に成膜できるため、電池や太陽電池の電極を、転写を挟まずに形成できます。

窒素ドープ触媒で白金削減を狙う

白金の代替候補である鉄系の熱処理型触媒は、1,000℃程度の高温で処理するため、構造を細かく調整しにくく、性能の向上が頭打ちになりつつあります。

同社は、グラフェンに窒素を加える(窒素ドープ)ことで、白金の使用量を減らす触媒の開発を進めています。マイクロ波プラズマCVDで窒素を取り込みながら電極へ直接成膜するため、触媒の層を電極上に形成する技術を開発中です。ニッケルやマンガン、コバルトなどの非貴金属(貴金属以外の金属)をナノ粒子(ごく小さな粒)として複合し、白金に近い働きを狙う設計です。この触媒の層を高分子電解質膜(水素イオンを通す膜)と一体にした膜電極接合体(MEA)のシートに仕上げ、白金の使用量を減らして製造コストの削減を目指します。

FrontJournalの解説
  • マイクロ波プラズマCVDマイクロ波のエネルギーで原料ガスをプラズマ(電子とイオンに分かれた状態)にし、その反応で基板に膜を形成する方法である。熱CVDより低い温度で成膜できる。

グラフェン直接成膜の未来|全固体電池と燃料電池への応用

グラフェン直接成膜が変える未来

研究用の基板へグラフェンを成膜

研究用の基板や試験片へグラフェン膜を直接成膜する受託事業を、同社は行っています。対象は1cm角以上の基板で、成膜の温度は支給された基板に応じた調整です。納品時には、光透過度、シート抵抗(膜の電気の流れにくさを表す値)、ラマン分光スペクトル(膜の質を調べる測定結果)などを提供します。グラフェンを使う研究のための試料を供給する事業です。

薄膜全固体電池の大容量化

同社は、薄膜全固体電池の大容量化に、垂直グラフェンを使って取り組んでいます。垂直グラフェンは、基板に対して垂直に立つ構造のグラフェン(カーボンナノウォール)で、電池の電極に使えるのが特徴です。約3μm(0.003mm)の高さまで成膜でき、成膜の条件で壁の間隔を変えられます。電解質が固体であるため、液体の電解液を使う電池より加熱時に発火しにくく、薄膜の成膜で製造するため、電極材料を混ぜて塗布し乾燥させる工程も要りません。

白金を減らした燃料電池を目指す

白金を減らした燃料電池向けのMEAのシートを、同社は開発しています。白金の使用量を減らし、ニッケルやマンガン、コバルトなどの非貴金属を触媒に使う設計です。白金の使用量を減らして製造コストを下げられれば、家庭用の電源や自動車、船舶など、幅広い用途で燃料電池を導入しやすくなると期待されます。水素を燃料とする発電は発電時に温室効果ガスを排出しないため、普及が進めば、自動車などで、発電時の排出がない電気を使える場面が増えます。

会社概要|名古屋工業大学の研究者が2013年に設立したシーズテクノ

大学の研究者が発起し設立

シーズテクノ株式会社は、2013年3月に設立された、名古屋工業大学発のベンチャーです。発起人は、中部大学客員教授で名古屋工業大学名誉教授の梅野正義氏と、名古屋工業大学教授の曽我哲夫氏です。梅野氏は2006年に中部大学で、グラフェンのCVDによる大面積化に成功しています。2017年2月には名古屋工業大学から、名古屋工業大学発ベンチャーの称号を授与されています。

国・県の研究開発事業に採択

同社は、国や愛知県の研究開発事業に採択されてきました。2018年にはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「新エネルギーベンチャー技術革新事業」で、グラフェンの透明導電基板の技術開発が採択されています。2020年度には経済産業省の「戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン)」でグラフェン電極を使う全固体リチウムイオン電池の研究開発が、2023年度には成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)で白金を減らした燃料電池向けのMEAの開発が採択されました。愛知県の「新あいち創造研究開発補助金」にも、2020年度と2022年度に採択されています。名古屋市工業技術グランプリでは、2020年に名古屋市工業研究所長賞、2024年と2026年に奨励賞を受けています。

事業と公的資金の活用

事業は、研究用の基板へのグラフェン成膜の受託と、全固体電池や燃料電池、太陽電池などの研究開発が中心です。サポイン事業の総費用は約1億円で、その3分の2を国が補助しています。愛知県の補助金は、2020年度が500万円、2022年度が600万円です。

会社情報

会社名シーズテクノ株式会社(C's TECHNO INC.)
所在地本社:愛知県名古屋市名東区西里町2丁目43番地の2。開発事業所:愛知県名古屋市守山区桜坂4-206 先端技術連携リサーチセンター1階(なごやサイエンスパーク内)
設立2013年3月27日
代表代表取締役CEO 山田義憲。代表取締役CTO 梅野正義(創業者)
資本金500万円
事業グラフェンなどナノカーボン材料の研究・開発・製造・販売。グラフェン成膜の受託
技術領域マイクロ波プラズマCVDによるグラフェンの直接成膜。垂直グラフェンを使う薄膜全固体電池。白金を減らした燃料電池向けのMEAシート
連携名古屋工業大学。中部大学
採択NEDO 新エネルギーベンチャー技術革新事業(2018年)。経済産業省 サポイン(2020年度)。愛知県 新あいち創造研究開発補助金(2020年度・2022年度)。Go-Tech事業(2023年度)。名古屋市工業技術グランプリ(2020年 名古屋市工業研究所長賞・2024年と2026年 奨励賞)
URLhttps://c-stechno.co.jp

編集後記|FrontJournal編集部より

薄い炭素の膜を、基板の上へそのまま形成する。シーズテクノの技術は、梅野氏がCVDによるグラフェンの大面積化で築いた成膜の知見を、電池の電極へ生かす取り組みです。熱CVDでは高温が必要で、転写で膜質が下がりやすいという従来の成膜の弱点を、プラズマによる低温の直接成膜で乗り越えようとする点に、発想の転換を感じました。

同社は、全固体電池と燃料電池という、性格の異なる2つの分野に、同じ成膜技術で挑んでいます。全固体電池の大容量化と、燃料電池の白金の使用量の削減は、電池の普及に向けた課題です。1つの成膜技術がその両方に通じる点に、材料から課題を解く姿勢が表れています。

低温でのグラフェン形成は、研究が進む分野でもあります。同じ分野の研究は、ニュース記事「東北大学らがアセチレンから300度の低温でグラフェン形成を実現」でも解説しています。直接成膜が電池の電極として根づくかどうかが、今後の注目点です。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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