ムービーズ「全天候型自動運転」を開発|雪道でレーダーの電波を出して走る自動運転車のイラスト

株式会社ムービーズ

ムービーズ「全天候型自動運転」を開発|研究領域=雪や雨の日も・走れる自動運転/強み=レーダーで雪道を認識・地図は走って作成/将来性=ロボットタクシーの・通年運行を目指す

企業紹介|株式会社ムービーズとは?

雪や雨、逆光といった悪天候の中でも走り続ける技術として、注目を集める「全天候型自動運転」。株式会社ムービーズは、その社会実装を目指す、金沢大学発のモビリティ系ディープテック企業です。外部の高精度3D地図の代わりに自社で作る簡易地図を使う「マップレス」技術と組み合わせ、完全自動運転のロボットタクシー(運転手のいらないタクシー)の実現に取り組んでいます。

キーワード「全天候型自動運転」

「全天候型自動運転」は、雪や雨、逆光といった天候の変化があっても、安定して走行できる自動運転です。特徴は、センサーに雪が付いたり路面の白線が隠れたりしても、周囲の状況を認識し続けられる点にあります。冬に雪が積もる地域でも、季節を問わず自動運転車を運行しやすくなります。

市場課題|悪天候と地図の整備費が、地方での自動運転の普及を阻む

現状の自動運転の課題|現状は、悪天候と地図の整備費で地方への導入が遅れる|悪天候で周囲の・認識が低下/地図の整備費が・導入の負担に

悪天候で周囲の認識が低下

自動運転車は、雨や雪の日に周囲を認識する性能が落ちやすくなります。広く使われるLiDAR(レーザー光で周囲の形を測るセンサー)やカメラは、雨粒や雪が表面に付くと、対象を正しく捉えにくくなります。このままでは、積雪地域の地方都市で冬も安定して運行することは困難です。

地図の整備費が導入の負担に

市街地の自動運転では、高精度3D地図(道路の形や車線を細かく記録した3次元の地図)を事前に用意する方法が一般的です。新しい地域へ導入するたびに地図を作り、道路が変わるたびに更新する作業には、多くの時間と費用がかかります。利用者の少ない地方ほど、地図の整備費を回収することが難しくなります。

他にも、運転手の不足による路線バスやタクシーの減便、高齢ドライバーの事故や免許返納で移動手段を失う住民の増加、人口が減る地域での公共交通網の維持、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • LiDARレーザー光を周囲に照射し、反射して戻るまでの時間から物体の位置や形を測るセンサーである。自動運転車の目として広く使われる。雨や雪の粒にも光が反射するため、悪天候では測定に乱れが生じやすい。

ムービーズの強み|「全天候型自動運転」を開発

ムービーズが「全天候型自動運転」を開発|今後は、レーダーで雪道の通年運行が可能に|レーダーで・雪道でも認識/走るだけで・簡易地図を作成

レーダーで雪道でも認識

光で周囲を測るセンサーは、雪や雨の粒に光が当たると、その粒まで物体として捉えてしまいます。

同社の自動運転システムの土台は、悪天候に強いミリ波レーダー(波長の短い電波を使うレーダー)です。電波は、光に比べて雪や雨の粒に遮られにくい性質を持ちます。同社は、レーダーの信号から雑音を除き、周囲を捉えます。さらに、自社で作る簡易地図とセンサーの情報をAIで照らし合わせ、車がいまどこを走っているかを割り出す仕組みです。白線や路肩が雪で見えにくい道でも周囲と自車の位置を捉え続けられるため、冬の運休を減らせ、雪国での自動運転車の通年運行が現実的になります。

走るだけで簡易地図を作成

高精度3D地図を使う方法では、新しい地域へ導入する前に、時間と費用をかけて地図を整える必要があります。

同社の「マップレス」技術は、自社の車で道路を走るだけで、走行に必要な道路情報に絞った2次元の簡易地図を作ります。記録する情報が少ない分、作成にかかる時間と費用を抑えられる点が特徴です。北海道上士幌町では、総延長100kmのエリアで、地図の作成を始めてから延べ24時間の作業で運行を始める体制を整えました。冬に向けて雪道用の地図を作り直す必要もなく、利用者の少ない地方を含む新しい地域へ、短期間で自動運転を導入できるようになります。

FrontJournalの解説
  • ミリ波レーダー波長が1〜10mmほどの電波を発し、跳ね返りから物体の距離や速度を測るセンサーである。光に比べて雨や雪、霧の影響を受けにくい。自動車の衝突被害軽減ブレーキなどに広く使われている。

全天候型自動運転の未来|雪国でも、通年で走るロボットタクシーへ

全天候型自動運転が変える未来|雪国でも、通年で走るロボットタクシーへ|雪道で650kmを・無事故で走行/町の新たな・移動手段として検証/無人のロボット・タクシーを目指す

雪道で650kmを無事故で走行

同社の自動運転車は、雪道の公道をすでに走りきりました。2026年1月5日から27日にかけて、北海道上士幌町の積雪や凍結を含むエリアで、ロボットタクシーの実証を行いました。最高時速60kmの一般道を含む総走行距離は650km以上に達し、全工程を無事故で終えています。同社は、雪道用の地図を別に作らずに安定した自律走行ができることを実証したと発表しています。

町の新たな移動手段として検証

上士幌町では、自動運転を町の日常の移動手段にする検証が進みます。同社は2026年8月、国土交通省の「自動運転社会実装推進事業」で事業の代表を務める上士幌町と契約を結びました。将来の無人運行を見据え、市街地のコミュニティバスに代わる手段として、利用者の予約に応じて走るオンデマンド型の運行を検証します。買い物や通院、通学を支える手段として、農村部の路線への展開も視野に入れています。

無人のロボットタクシーを目指す

同社の目標は、完全自動運転のロボットタクシーの社会実装です。米国では2025年9月に子会社「MoveEz International, Inc.」を設立し、まずはセーフティドライバー(緊急時に備えて乗る運転手)が乗るロボットタクシーのサービス化を準備しています。その先に無人での運行を据え、米国内では交通需要の高い都市部から始めて、積雪地域や天候の厳しい地域へ順に広げる計画です。実現すれば、運転手が足りない地域でも、天候に関係なく住民が通院や買い物の足を確保しやすくなります。

会社概要|金沢大学で28年続く自動運転の研究から生まれたムービーズ

金沢大学の研究から創業

株式会社ムービーズは、2024年5月に設立された金沢大学発の企業です。共同創業者で代表取締役CTOの菅沼直樹氏は、1998年から金沢大学で自動運転の研究を続け、2015年には国内の大学として初めて市街地での公道走行実験を始めました。菅沼氏が米陀佳祐氏とともに設立した同社は、「金沢大学認定ベンチャー」に選ばれています。2025年11月には、エリック・ウェイ(魏嘉宏)氏が代表取締役CEOに就きました。

実証と採択を重ねる

2024年6月には、米陀氏や菅沼氏らの論文が国際会議「IEEE IV2024」でBest Paper Award(2nd)を受けました。同年7月には経済産業省の「モビリティDX促進のための無人自動運転開発・実証支援事業」に採択され、2025年2月に幕張新都心でロボットタクシーの実証を行いました。2026年には東京都臨海副都心部と横浜・みなとみらい地区で実証を担い、7月にJETRO(日本貿易振興機構)の「Global Startup Acceleration Program」、8月に石川県産業創出支援機構の「成長戦略ファンド」に採択されています。

シードラウンドで2億円を調達

同社は2025年4月、ベンチャーキャピタルのビジョンインキュベイトから出資を受けました。2026年2月にはPartners Fund株式会社を引受先とする第三者割当増資を行い、総額2億円を調達しています。シードラウンドは、創業まもない企業が事業の土台を固める初期の資金調達段階です。資金の使い道は、レベル4(特定の条件下で運転を完全に自動化する段階)の自動運転技術と事業の開発体制の拡充です。

会社情報

会社名株式会社ムービーズ(MoveEz, inc.)
所在地石川県金沢市角間町ヌ7番地
設立2024年5月
代表代表取締役CEO エリック・ウェイ(魏嘉宏)
代表取締役CTO 菅沼直樹
調達シードラウンド 総額2億円(2026年2月・Partners Fund株式会社)
事業自動運転システム開発事業。自動運転サービス事業。米国子会社 MoveEz International, Inc.(デラウェア州・2025年9月設立)
技術領域ミリ波レーダー(物体の距離・方向・高さ・速度を捉える4Dイメージングレーダー)を基盤とした全天候型の自動運転。走行して2次元の簡易地図を作るマップレス自動運転
連携北海道上士幌町(自動運転社会実装推進事業)。S.RIDE株式会社、ソニー株式会社、株式会社ソニー・ミュージックソリューションズ(横浜・みなとみらいでの実証)
採択経済産業省「令和5年度補正 モビリティDX促進のための無人自動運転開発・実証支援事業」(2024年)。JETRO「Global Startup Acceleration Program」ManufacturingTech & HardTechコース(2026年)。ISICO(石川県産業創出支援機構)「成長戦略ファンド」研究開発支援事業(2026年)
URLhttps://moveez-inc.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

雪で白線が消えた道を、地図を作り直さずに走りきる。ムービーズの技術は、自動運転が最も苦手としてきた条件に正面から向き合ってきた、金沢大学での長い研究の積み重ねの上にあります。大都市から始まることの多いロボットタクシーを、雪国の地方でも走らせようとする道筋に、地域の交通を支える技術としての手応えを感じました。

北海道の町で始まった検証が、通年で走る移動手段へと育っていく日を楽しみに待ちたいと思います。金沢大学から生まれたほかの企業は、金沢大学発・関連スタートアップ8選で紹介しています。

FrontJournal編集部

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年10月3日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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