MG Port|熊本大学発の「マグネシウム合金」の実用化を進めるディープテック企業

株式会社MG Port(エムジーポート)

MG Port「マグネシウム合金」を研究|研究領域=マグネシウムに元素を加えた材料/強み=燃えにくく熱を伝える合金/将来性=航空機や医療機器への応用

企業紹介|MG Portとは?

輸送機器や電子機器を軽量化する材料として、注目を集める「マグネシウム合金」。株式会社MG Portは、その社会実装を目指す、熊本大学発の素材系ディープテック企業です。熊本大学が開発した不燃合金や高熱伝導合金などを対象に、大学との知的財産権に関する合意のもとで、用途の開拓と素材企業とのネットワーキングを進めています。

キーワード「マグネシウム合金」

マグネシウム合金は、実用金属で最も軽いマグネシウムに、アルミニウムやカルシウムなどの元素を加えて性質を整えた材料です。パソコンや携帯端末などに使われてきた一方、アルミニウム合金に比べて強度が不十分で、発火や腐食のしやすさも課題でした。加える元素の種類と量を変えると、燃えにくさや熱の伝えやすさといった性質を改良できます。

市場課題|市販のマグネシウム合金は燃えやすく熱を伝えにくい

現状のマグネシウム合金の課題|現状は、燃えやすく熱を伝えにくいため用途が限られる/燃えやすく航空機に使いにくい/熱を伝えにくく放熱に不向き

燃えやすく航空機に使いにくい

市販のマグネシウム合金は、高温になると発火し、金属が固体のままでも燃焼します。そのため、軽い材料でありながら、安全性が求められる航空機などには使いにくく、保管や加工屑の扱いにも注意を要します。このままでは、輸送機器の軽量化に期待される素材の利点を活かしきれません。

熱を伝えにくく放熱に不向き

市販のマグネシウム合金の熱伝導率(熱の伝わりやすさを表す値)は、アルミニウム系合金の1/2〜2/3程度にとどまります。電子機器のように熱を逃がす設計が欠かせない製品では、軽くても放熱の性能が不十分です。熱の管理が必要な用途では、マグネシウム合金の採用が限定的になってきました。

他にも、腐食しやすい性質、加工の難しさ、アルミニウム合金に比べて不十分な強度、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 熱伝導率物質の中を熱がどれだけ伝わりやすいかを表す値。単位はW/m・Kで、値が大きいほど熱を速く運ぶ。電子機器の放熱部品では、材料のこの値が冷却の性能を左右する。

MG Portの強み|「マグネシウム合金」を研究

MG Portが「マグネシウム合金」を研究|今後は、燃えにくく放熱できる部材が可能に/酸化被膜で燃焼の進行を防止/組成比の調整で放熱性を向上

酸化被膜で燃焼の進行を防止

従来の市販マグネシウム合金は、470〜550℃付近で発火し、固体のままでも燃焼が進みます。

同社が実用化を目指す「不燃合金」は、この弱点を熊本大学が組成の工夫で解消したマグネシウム合金です。アルミニウムやカルシウムなどの元素を高濃度で加えると、表面に安定した酸化被膜(金属の表面にできる酸化物の薄い膜)が形成され、燃焼が先へ進まなくなります。発火温度は約1,050℃で、マグネシウムの沸点にほぼ等しい温度です。押出材(型から押し出して成形した材料)の強度も既存の合金より高く、燃えやすさから採用しにくかった航空機の部材などでも、軽いマグネシウム合金を材料の候補にできます。

組成比の調整で放熱性を向上

汎用のマグネシウム合金の熱伝導率は50W/m・K程度で、熱を逃がす部材に使うには不十分です。

同社が実用化を目指す「高熱伝導合金」は、熊本大学が、燃えにくさと高い熱伝導性を両立する組成比を見出した合金です。熱伝導率は120W/m・Kで、従来のマグネシウム合金や、ダイカスト(溶かした金属を金型に圧入して成形する鋳造法)用のアルミニウム合金を上回る値です。代表的な組成は不燃合金と同じMg-Al-Ca-Mn系(マグネシウム・アルミニウム・カルシウム・マンガン)で、押出材の強度も既存の合金を上回ります。電子機器やLED用の放熱基材など、熱の管理が必要な用途にも使えるようになります。

FrontJournalの解説
  • 酸化被膜金属の表面が酸素と結びついてできる、酸化物の薄い膜。緻密で安定した膜ができると、内側の金属が酸素に触れにくくなり、腐食や燃焼の進行が抑えられる。

未来|MG Portが軽いマグネシウム合金を医療機器と輸送機器へ広げる

軽いマグネシウム合金が変える未来|医療機器と輸送機器へ用途を広げる/体内で分解される医療用合金/高強度合金を輸送機器へ/製品の軽量化で脱炭素を目指す

体内で分解される医療用合金

同社は、熊本大学が開発した、医療機器に使える強度と耐食性を備えたマグネシウム合金の実用化も目指しています。マグネシウムは体内の必須成分で、役目を終えると体内で分解され、残留しないとされています。ただし従来の合金は、骨の固定や血管を広げる器具には強度と耐食性が不十分でした。液体急冷法(溶けた金属を急速に冷やして固める製法)で作る新しい合金は、ステント(血管を内側から広げる網状の筒)や骨固定具などへの応用が想定されます。

高強度合金を輸送機器へ

2024年7月、熊本大学の先進マグネシウム国際研究センターは、難燃性を併せ持つ高強度合金の開発を発表しました。降伏強さ(力を取り除いても元の形に戻らなくなり始める強さ)は418MPa(MPaは単位面積あたりの力=応力の単位)で、従来の汎用高強度マグネシウム合金の1.7倍以上です。軟らかい層と硬い層が重なる「ミルフィーユ構造」をもち、「キンク強化」と呼ばれる強化法で強度を高めています。大学は同社と協力して、この合金の社会実装を進めるとしています。

製品の軽量化で脱炭素を目指す

同社は、熊本大学発のマグネシウム合金で製品を軽くし、社会に貢献することを目指しています。熊本大学も、2024年発表の高強度合金を、ロケットや自動車などの構造材料へ適用する方針です。構造材料が軽くなれば、燃費やエネルギー効率が高まり、温室効果ガスの排出削減にもつながるとされています。航空機や自動車の部品が軽くなれば、脱炭素社会に近づくことが期待されます。

会社概要|株式会社MG Port

熊本大学の合金をもとに創業

MG Portは、熊本大学が開発してきた新しいマグネシウム合金の実用化を進めるため、2021年3月に設立されました。創業メンバーは、代表取締役の原豊氏と、熊本大学先進マグネシウム国際研究センター長・教授の河村能人氏らです。原氏はリクルートで新規事業開発と技術移転事業に携わり、アドバンストソフトマテリアルズ(現ASM)の代表取締役や東京工業大学の産学連携部門長を務めました。河村氏は「KUMADAI不燃マグネシウム合金」などの開発者で、2017年に紫綬褒章を受章しています。

大学との知財合意と連携

同社は、熊本大学との知的財産権に関する合意のもとで事業を進めています。熊本大学は2003年に「KUMADAIマグネシウム合金」を、2012年に不燃マグネシウム合金を開発しました。2019年12月には、もう1つの系統である「KUMADAI耐熱マグネシウム合金」に微量の元素を加え、発火温度を1,000℃超へ高めたと発表しました。耐熱合金と不燃合金の両合金は、米国連邦航空局(FAA)のマグネシウム燃焼試験に合格しています。同社の関連機関は、熊本大学先進マグネシウム国際研究センターとテックマネッジ株式会社です。

用途開拓と素材企業との連携

同社の事業は、新しいマグネシウム合金の用途の開拓と、素材企業とのネットワーキングです。金属材料の提供に関わるパートナーと連携し、熊本大学発の合金を提供していくことを目指しています。中心となるのは、不燃合金、高熱伝導合金、医療用高強度合金などです。本店は熊本市中央区の熊本大学内にあります。

会社情報

会社名株式会社MG Port(MG Port Inc.)
所在地熊本県熊本市中央区黒髪2丁目39番1号(熊本大学内)
設立2021年3月
代表代表取締役 原豊。創業メンバー 河村能人(熊本大学先進マグネシウム国際研究センター長・教授)
資本金120万円
事業熊本大学との知的財産権に関する合意のもと、新しいマグネシウム合金の用途開拓と素材企業とのネットワーキング
技術領域不燃合金(発火温度 約1,050℃)。高熱伝導合金(熱伝導率 120W/m・K)。医療用高強度合金(液体急冷法で作製)。いずれも熊本大学が開発したマグネシウム合金
連携熊本大学(知的財産権に関する合意)。熊本大学先進マグネシウム国際研究センター。テックマネッジ株式会社
URLhttps://www.mgport.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

マグネシウムは最も軽い実用金属でありながら、燃えやすさや熱の伝えにくさが用途を狭めてきた素材です。熊本大学は20年以上にわたって合金の組成と製法を工夫し、燃えやすさや熱の伝えにくさといった弱点の解消に取り組んできました。MG Portが担うのは、大学で生まれた合金を、使い手である産業界へ橋渡しする役割です。熊本大学からは、熊本大学発スタートアップ10選で紹介したように、分野の異なる複数の企業が生まれています。研究室の材料が航空機や医療機器の部品として使われる日を、期待を込めて見守りたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月29日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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