2026.10.01 │ 大阪大学・理化学研究所・高エネルギー加速器研究機構 │ 元発表:2026.10.01

大阪大学ら、ノーベリウムが「軟らかい」金属イオンの性質をもつと解明

ニュース紹介

「102番元素ノーベリウムは「軟らかい」!?-重い元素に働く相対論効果がもたらす新しい性質-」

大阪大学大学院理学研究科の笠松良崇教授、高エネルギー加速器研究機構共通基盤研究施設の渡邉瑛介助教(研究当時、大阪大学大学院理学研究科大学院生)、および理化学研究所仁科加速器科学研究センターの羽場宏光室長らの研究グループは、人工元素であるノーベリウムがクラウンエーテルと予測以上に強く相互作用することを観測しました。研究グループは、これが重い元素に顕著に働く相対論効果によって現れた金属イオンとしての「軟らかさ」に起因していることを明らかにしたとしています。詳細は大阪大学大学院理学研究科・理学部のホームページに掲載されています。

出典:理化学研究所 2026年10月1日 プレスリリース(大阪大学・理化学研究所・高エネルギー加速器研究機構/DOI: 10.1126/sciadv.aeh4903)
https://www.riken.jp/press/2026/20261001_2/index.html

FrontJournalの解説

ノーベリウムと「軟らかい」金属イオンとは

ノーベリウム(元素記号No)は原子番号102の人工元素で、周期表の下部に並ぶアクチノイドの一つです。大阪大学の研究紹介ページによると、半減期3.5分の255Noのように短寿命で、一度の実験で扱える原子数も非常に少ないため、化学的性質には多くの謎が残されているとされています。

化学では、金属イオンなどの酸を「硬い」「軟らかい」に分けて考える見方があり、1963年にピアソンがHSAB則として整理しました。一般に、電荷密度が高く分極しにくいものが「硬い」、分極しやすいものが「軟らかい」とされます。一方「相対論効果」は、原子番号が大きい元素で内側の電子の速度が光速に比べて無視できなくなり、軌道のエネルギーや広がりが変わる現象です。

①クラウンエーテルへの吸着で調べた性質

クラウンエーテルは、環状の構造の中に金属イオンを取り込む化合物です。大阪大学の紹介ページによると、研究グループは理化学研究所RIビームファクトリーのAVFサイクロトロンで255Noを合成し、クラウンエーテルを担持した樹脂への吸着率(分配係数)を測定しました。その結果、No²⁺はストロンチウムイオン(Sr²⁺)と同程度に強く抽出される一方、イオンサイズだけから予想される傾向からは外れ、鉛イオン(Pb²⁺)と似た性質を示したと報告されています。

②相対論的量子化学計算が示した結合の性質

この結果に対して相対論的量子化学計算を行ったところ、No²⁺とクラウンエーテルの結合には単純な静電相互作用だけでなく、共有結合的な性質が現れることが示されました。研究グループは、No²⁺がカルシウムイオン(Ca²⁺)やSr²⁺などのアルカリ土類金属に似た性質に加え、Pb²⁺に似た「軟らかい」金属イオンとしての性質も併せ持つとしています。また、元素の「硬さ」のパラメータが相対論効果の影響を顕著に受けることに初めて着目した研究で、ニホニウムなど他の重元素の化学的性質を調べる研究への波及が期待されるとしています。

編集部からひとこと

今回の成果は、一度に扱える原子数が非常に少ない元素の化学的性質を、吸着率の測定と理論計算を組み合わせて調べた基礎研究です。発表内容では、他の元素の性質への一般化や具体的な応用には言及されていません。詳細な実験条件や計算の内容は、Science Advances掲載論文および大阪大学・理化学研究所の公式ページをご参照ください。

FrontJournal編集部

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