LABTECHS株式会社|遺伝子検査で無菌を数時間から1日で判定する迅速無菌試験キットを開発する富山大学発ディープテック

LABTECHS株式会社(ラボテクス)

LABTECHS「迅速無菌検査」を研究|研究領域=細菌の遺伝子を増幅し検出/強み=培養を待たず数時間〜1日/将来性=再生医療や輸血へ応用

企業紹介|LABTECHS株式会社とは?

医薬品や再生医療等製品が患者へ届くまでの時間を左右する、「迅速無菌検査」。LABTECHS株式会社は、その社会実装を目指す、富山大学発のバイオ・ヘルスケア系ディープテック企業です。主力製品の「迅速無菌試験キット」を、検査会社や再生医療を手がける医療機関、自前で無菌試験を行う一定規模以上の施設へ届けることを目指しています。

キーワード「迅速無菌検査」

迅速無菌検査は、培養より短い時間で製品に混じった細菌の有無を調べる検査で、同社はこれを遺伝子の増幅反応で実現しています。一般的な無菌試験は培地で細菌を増やして濁りを目で見るため、結果が出るまで7日から14日ほどかかります。同社の方式は培養の工程を挟まず、細菌の遺伝子を直接とらえて数時間から1日程度で判定する方式です。

市場課題|無菌の確認に7日から14日を要する

現状の無菌試験の課題|現状は、培養の判定に7日から14日/培養に7日から14日を要す/在庫と保管の負担が増す

培養の日数が出荷を縛る

無菌性が求められる製品では、検査に要する日数が出荷までの時間を決める要因です。無菌試験は、培地で細菌を増やして濁りの有無を目で見る方法が一般的で、結果が出るまでに7日から14日ほどかかります。工程の最後にこの待ち時間が固定で乗るため、製造そのものを速めても出荷の日付は動きにくくなります。

出荷判定までの在庫負担

培養を待つ時間は、そのまま在庫と保管の負担です。判定が出るまで製品を動かせないため、温度を管理した保管庫数週間分を置いておく必要が生じます。有効期間の短い製品では、この待ち時間が実際に使える期間を短くします。

他にも、検査に習熟した人員の確保、培地や器具の汚染による判定のやり直し、少量多品種の製造への対応、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 無菌試験医薬品や輸血用血液などに生きた細菌が混じっていないかを確かめる試験。培地で細菌を増やし、濁りの有無を目で見て判定する方法が広く使われる。

LABTECHS株式会社の強み|「迅速無菌検査」を開発

LABTECHSが「迅速無菌検査」を開発|今後は、数時間〜1日で判定が可能に/培養を省き遺伝子で検出/細菌DNAを含まない試薬

培養を省く遺伝子の検出

培地で細菌を増やす方法では、細菌が目に見える量まで育つ時間をそのまま待つ必要があります。

同社の迅速無菌試験キットは、細菌そのものを増やす代わりに、細菌が持つ遺伝子の一部を試薬の中で増幅して検出します。増幅の対象は多くの細菌に共通する遺伝子の配列で、菌の種類ごとに試薬を用意せずに細菌の遺伝子の有無を確かめられます。培養で細菌が育つのを待つ工程は要らなくなり、判定にかかる時間は数時間から1日程度です。従来の培養による判定と比べると、出荷までの待ち時間を縮められます。治療を待つ患者のもとへ製品が届くまでの日数も詰められます。

試薬に潜む細菌DNAの除去

遺伝子を増幅する試薬そのものに細菌の断片が残っていると、無菌の製品でも反応が出ます。

この誤りを避けるため、同社は細菌の遺伝子が混ざっていないTaq酵素を用意しました。試薬の側にあらかじめ細菌の痕跡が無ければ、反応が出たときに検体に由来する細菌の遺伝子だと判断できます。試薬に含まれる遺伝子まで取り除いたうえで検査する設計が、同社の技術の要点です。培養の結果を待たずに製造工程の途中でも汚染を確かめられるため、不良の発見が早まり、手直しの負担も減らせます。出荷前の検体を、同じ手順で何度でも確認できます。

FrontJournalの解説
  • Taq酵素遺伝子の増幅反応で使われる耐熱性の酵素。温度の上げ下げを繰り返しても働きを保つため、微量の遺伝子を短時間で何度も複製する反応に用いられる。

迅速無菌検査の未来|再生医療と輸血への応用

迅速無菌検査が変える医療の未来|再生医療や輸血の安全を高める/再生医療の現場で活用/輸血用血液の安全を確認/無菌検査を標準に広げる

再生医療の現場での活用

再生医療等製品(患者の細胞や組織を加工した製品)は、培養に長い日数をかけにくい製品です。細胞は時間とともに状態が変わるため、投与の予定に合わせた無菌の確認が必要です。判定が数時間から1日で済めば、採取から投与までの工程を組みやすくなります。培養を待つ従来の方法では、この工程を組みにくいまま残ります。

輸血用血液の安全確認

輸血用血液は保存できる期間が限られるため、無菌の確認に使える時間の余裕が少ない製品です。同社の技術なら、判定を数時間から1日で終えられます。同社の技術のもとになったのは、患者の血液に混じった細菌を見つけて敗血症起炎菌(感染症の原因になっている細菌)を素早く特定する検査システムです。富山大学附属病院で臨床検査として組み上げた手法を、製造工程の無菌確認へ振り向けています。

無菌検査の標準化を目指す

同社が見据えるのは、体外診断薬(採取した血液や細胞を体の外で調べる検査薬)の製造販売にとどまらない事業の広がりです。医療に限定しない迅速無菌検査の受託と、臨床検査による検診事業も柱に据えています。想定する提供先は、検査会社、再生医療を手がける医療機関、自前で無菌試験を行う一定規模以上の施設です。培養に頼らない判定を製造現場の標準として広げることを目指します。

会社概要|LABTECHS株式会社の事業内容・設立背景

兼業規定の改定を機に創業

LABTECHS株式会社は、2021年9月28日に設立された富山大学発の企業で、代表取締役は仁井見英樹氏です。仁井見氏は富山大学で臨床分子病態検査学を担う教授であり、同大附属病院の検査・輸血細胞治療部と遺伝子診療部の部長を務めています。創業の契機になったのは、2021年4月の同大の兼業規定の改定でした。臨床検査として育ててきた技術を医療以外の用途へも広げるため、同年9月に会社の形を取っています。本社は富山大学工学部の敷地内にある富山市新産業支援センターに置き、関東支社を神奈川県藤沢市に構えています。

県と大学の支援で事業化

同社は、富山県が運営するくすりのシリコンバレーTOYAMA創造コンソーシアムの研究支援で得られた成果を事業化するために立ち上がりました。富山大学からは認定ベンチャー第1号の認定を受けています。県の支援制度であるとやまスタートアップ創出事業(T-Startup)には、2023年から3年続けて選ばれました。制度のもとで事業体制の構築や人材の採用、ラボの整備が進み、県内の製薬企業とのフィージビリティスタディ(事業化の見込みを確かめる調査)も実施しています。

検査キット販売が主軸

主力は、迅速無菌試験キットの製造と販売です。キットを使う側の施設が自前で判定できるため、検体を外部へ送る手間を減らせます。加えて、自社で検査そのものを引き受ける受託と、臨床検査による検診事業も事業内容の柱です。2024年には研究者とマーケティング担当を社員に迎え、労務・会計・知財の専門家とは顧問契約を結んでいます。

会社情報

会社名LABTECHS株式会社(ラボテクス)
所在地富山県富山市下野16番地 富山大学工学部敷地内 富山市新産業支援センター3F303号室(関東支社:神奈川県藤沢市湘南台2-10-5 アンドウビルC36)
設立2021年9月28日
代表仁井見 英樹(代表取締役)
事業体外診断薬および医薬品の製造・販売。医薬部外品の製造・販売。検査(臨床検査、医療に限定しない迅速無菌検査)の受託。検診事業(臨床検査)の実施。主力製品は迅速無菌試験キット(2026年4月から量産販売)
技術領域迅速無菌検査、無菌試験、遺伝子検査、体外診断薬、再生医療等製品・輸血用血液の無菌確認
連携富山大学(認定ベンチャー第1号)。くすりのシリコンバレーTOYAMA創造コンソーシアムの研究支援。県内製薬企業とのフィージビリティスタディ
採択とやまスタートアップ創出事業(T-Startup)/2023年・2024年・2025年に選定
URLhttps://labtechs.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

無菌の確認は、医薬品や輸血用血液を扱う現場で必ず通る工程です。それでいて、結果を待つ7日から14日という時間は、長らく前提として受け入れられてきました。製造を速めても出荷の日付が動かない理由の一つが、この工程にありました。

LABTECHS株式会社が置き換えようとしているのは、待つという前提そのものです。培養を挟まず細菌の遺伝子を直接とらえる設計に加え、試薬から細菌の痕跡を取り除くという細かな詰めが効いています。判定が数時間から1日で済めば、再生医療のように時間の余裕が少ない治療にも道が開けます。臨床検査の現場で育った技術が製造の現場へ移っていく流れも、読み取りやすい形です。

富山大学の研究室で組み上がった検査が、患者へ届く速さを変える日を楽しみに待ちたいと思います。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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