2026.09.25 │ 京都大学・JST │ 元発表:2026.09.22

京都大学ら、細胞周期を独立に制御する仕組みを数学で予測し実証

ニュース紹介

「ネットワーク構造が作る細胞周期の独立制御~数学が予測した制御モジュールの定量的実証~」

京都大学 医生物学研究所の山内悠平特定助教、望月敦史教授らはこれまでに、細胞内の反応ネットワークの一部がある数式を満たすと「緩衝構造」となり、他の部分から独立して制御される「モジュール性」を獲得することを、数学理論によって示してきました。

今回、東京科学大学 地球生命研究所の杉山博紀特任助教、京都大学 生命科学研究科の後藤祐平准教授、青木一洋教授との共同研究により、細胞のライフステージを支配する「細胞周期システム」に実際にこの緩衝構造が存在し、重要な役割を果たしていることを実証しました。細胞周期の切り替わりを管理する2種のたんぱく質複合体が異なる緩衝構造に含まれることで互いに独立に制御されている可能性を示し、定量解析により一方が他方に対して独立に振る舞うことを確かめました。

さらに理論予測と実験検証の比較から、未知の反応を理論的に予測し、検証実験でその実在を証明しました。成果は2026年9月21日(現地時間)以降に米国科学アカデミー紀要(PNAS)にオンライン掲載予定です。

出典:京都大学・科学技術振興機構(JST) 2026年9月22日 共同発表
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20260922/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

細胞周期は、細胞が成長し、DNAを複製し、2つに分かれるまでの一連の段階です。段階を先へ進めてよいかを確かめるチェックポイント(点検の関所)があり、ここが正しく働かないと、傷ついたDNAを持ったまま細胞が増えてしまいます。

細胞の中では、ある反応でできた物質が別の反応の材料になるため、すべての反応が1つのネットワークとしてつながっています。つながっているのに、なぜ別々の働きを個別に切り替えられるのか。今回の研究はこの問いに、ネットワークの形(構造)から答えようとしたものです。

①つながっていても独立に動ける構造

研究グループが理論で示してきた緩衝構造とは、反応ネットワークの一部が特定の数式を満たすと、外側からの変化の影響を受けにくくなるまとまりのことです。まとまりの中は、ほかの部分から独立して制御できます。

今回、細胞周期の切り替わりを管理する2種のたんぱく質複合体が、それぞれ別の緩衝構造に含まれていることが分かりました。これが、2つを互いに独立に制御できる理由になっていると考えられます。

②理論から未知の反応を言い当てる

この研究のもう1つの特徴は、理論の予測と実験の結果を比べることで、まだ知られていなかった反応の存在を予測し、実験で確かめた点です。

生物の反応ネットワークは、すべての部品が分かっているわけではありません。研究グループは、理論と実験を組み合わせて未知の情報を必要条件として導く方法を、新しいシステム生物学(生命を部品のつながりとして理解する分野)の手法として提案しています。

編集部からひとこと

細胞の中の反応は複雑につながっており、1つずつ調べるだけでは全体の仕組みが見えにくいものです。ネットワークの形から働きを読み解くという今回の考え方が、細胞周期以外の生命システムにもどこまで当てはまるのか、今後の展開に注目します。

FrontJournal編集部

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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