2026.10.22 │ 理化学研究所(理研) │ 元発表:2026.10.22

理化学研究所、サブサイクル光を従来の100倍超に高出力化

ニュース紹介

「サブサイクル光の高エネルギー増幅に成功-アト秒を超えるゼプト秒パルス発生への重要な一歩-」

理化学研究所光量子工学研究センター 未踏レーザー科学研究チームの西宮海人基礎科学特別研究員、高橋栄治チームディレクターらの研究チームは、時間幅が光の振動周期よりも短いレーザーパルス(サブサイクル光パルス)の増幅法を開発しました。独自の「波形合成シード発生法」と、同チームが開発した増幅法「異種非線形結晶・二重チャープ光パラメトリック増幅(HNC-DCOPA)法」を組み合わせ、1.4オクターブの帯域を保ったまま出力エネルギーを50ミリジュール超に高め、これまでに報告されたサブサイクルレーザーの100倍以上としました。パルス幅は6.7フェムト秒で、光の電場振動は0.88回分です。

この光を使ったアト秒パルス発生では、スペクトルから見積もった最短のパルス幅(フーリエ限界パルス幅)が35アト秒でした。また、増幅法を拡張すれば、電場が0.5回しか振動しないハーフサイクル光も高出力で増幅できることを数値シミュレーションで示しています。成果は科学雑誌『Science Advances』オンライン版に2026年10月22日付で掲載されました。

出典:理化学研究所(理研) 2026年10月22日 プレスリリース
https://www.riken.jp/press/2026/20261022_1/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

この研究の分野は「超短パルスレーザー」(ごく短い時間だけ光るレーザー)です。光る時間が短いほど、速く動くものを止めたように観察できます。2023年のノーベル物理学賞は、1アト秒(100京分の1秒)単位の光パルスを作る実験手法を開発したピエール・アゴスティーニ氏、フェレンツ・クラウス氏、アンヌ・ルイエ氏に贈られました。アト秒の光を使うと、原子や分子の中を動く電子の様子を捉えられます。研究者が次に目指すのは、その1,000分の1の時間であるゼプト秒(10垓分の1秒)の光です。

①広い色の幅を保ったまま光を強くした

光のパルスを短くするほど、含まれる波長(色)の幅を広げる必要があります。サブサイクル光には1.4オクターブ(周波数が約2.6倍の範囲)という非常に広い帯域が必要です。研究チームは、レーザー光を二つの経路に分けて異なる波長域のシード光(増幅のもとになる弱い光)を作り、精密に重ね合わせました。この光をHNC-DCOPA法で約1万倍に増幅し、帯域を保ったまま50ミリジュール超に到達しました。

②より短いアト秒パルスへの足場になる

アト秒パルスは、強いレーザーを希ガスに当てて短い波長の光を生む「高次高調波発生」で作られます。もとになる励起レーザー(アト秒光を作るための強いレーザー)が短く強いほど、短く強いアト秒パルスが得られます。理化学研究所は、今回の成果が高次高調波のパルス幅を10アト秒未満まで縮める見通しを与えるとしています。

編集部からひとこと

今回の成果は、光源となるレーザーの出力を大きく高めた基礎研究の段階です。ゼプト秒パルスそのものはまだ実現しておらず、ハーフサイクル光の高出力化も数値シミュレーションで可能性が示された段階です。研究チームは次期計画として新たなレーザー開発を準備しています。将来、原子核の中の反応を時間を追って観測できるようになるかどうか、次の成果に注目したいと思います。

FrontJournal編集部

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