2026.11.04 │ 大阪公立大学・科学技術振興機構(JST) │ 元発表:2026.10.26

LLMの薬剤推奨、1製品に集中 大阪公立大学ら

ニュース紹介

「AIモデルによる薬剤推奨は特定製品に集中~約88万件の分析から医療費への影響を示唆~」

大阪公立大学 大学院医学研究科 人工知能学/イノベーションアカデミー共創研究院の植田大樹教授、米国 テキサス大学 MDアンダーソンがんセンターの佐藤淳哉博士研究員らの研究グループは、5種類のLLM(GPT-5.4、Claude Sonnet 4.6、Gemini 3.1 Flash、Llama 4、MedGemma)による約88万件の薬剤推奨の回答を分析しました。

疾患と有効成分の組み合わせごとに複数の製品があるにもかかわらず、第1候補として推奨される製品は、平均97.5%のケースで特定の1製品が選ばれていました。また、先発医薬品と後発医薬品では先発医薬品が優先される傾向があり、推奨に従った場合には薬剤費が増加する可能性も示されました。本研究成果は、2026年10月26日(現地時間)付で国際学術誌「Nature Health」にオンライン掲載されました。

出典:大阪公立大学・科学技術振興機構(JST) 2026年10月26日 共同発表(掲載誌:Nature Health/DOI:10.1038/s44360-026-00205-y)
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20261026/index.html

FrontJournalの解説

医療で使われ始めた大規模言語モデル

今回の研究は、「大規模言語モデル」(LLM:大量の文章を学習し、質問に文章で答える生成AIの一種)が薬を推奨するときの偏りを、約88万件の回答から確かめたものです。プレスリリースによると、LLMは医療現場でも利用が広がり、薬の選択を支援するツールとしても期待されていますが、推奨する薬の偏りはこれまで十分に検証されていませんでした。

分析の前提には、同じ有効成分の薬が複数の製品として流通している事情があります。新しく開発された「先発医薬品」の特許が切れると、同じ有効成分を使う「後発医薬品」(ジェネリック医薬品)が複数の会社から発売されるためです。

①第1候補の製品は平均97.5%で1つに集中

研究グループは、疾患と有効成分の組み合わせごとに、LLMが第1候補として挙げる製品名を調べました。選べる製品が複数あっても、平均97.5%のケースで特定の1製品が選ばれていました。論文のタイトルにある「product name convergence」(製品名の収束)は、この現象を指しています。

分析の対象には、汎用のGPT-5.4やClaude Sonnet 4.6に加え、医療向けの「MedGemma」も含まれています。

②先発医薬品の優先が薬剤費を押し上げる可能性

LLMは後発医薬品より先発医薬品を優先する傾向を示したため、研究グループは、推奨に従うと薬剤費が著しく増加する可能性を指摘しました。後発医薬品は一般に先発医薬品より薬価が低く、推奨が先発医薬品へ偏るほど薬剤費の支払いが膨らみます。

日本では「厚生労働省」が、後発医薬品の使用促進に関するロードマップの資料で、2029年度末までに数量シェアを全ての都道府県で80%以上、金額シェアを65%以上とする目標を示しています。医師や薬剤師がLLMを参考に薬を選ぶ場面では、先発医薬品への偏りが、こうした使用促進と逆の方向に働く可能性があります。

FrontJournalからのひとこと

LLMによる薬の推奨の偏りを、約88万件という規模で製品名と薬剤費の両面から数値で示した点が、今回の特徴です。医療でAIを使う際に、推奨された製品を後発医薬品も含む選択肢と照らし合わせる運用が広がるか、注目しています。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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