2026.10.22 │ 理化学研究所・東京理科大学・島根大学・総合科学研究機構・J-PARCセンター │ 元発表:2026.10.21

理化学研究所ら、MOF内のマグネシウムイオン伝導の仕組みを実験で裏付け

ニュース紹介

「金属-有機構造体におけるMg2+伝導機構の実験的裏付け-ミクロな分子運動とマクロなイオン伝導の関係-」

理化学研究所開拓研究所の佐藤駿研修生、山室修研究員、小林玄器主任研究員、東京理科大学の貞清正彰准教授、島根大学の大政義典特任助教、総合科学研究機構(CROSS)の山田武副主任研究員らの共同研究グループは、極めて高いマグネシウムイオン(Mg2+)伝導度を示す金属-有機構造体(MOF:金属イオンと有機分子が組み合わさってできた、細かい穴を多数持つ材料)について、イオン伝導の仕組みに関わる要因を熱容量測定と中性子散乱で調べました。

この材料は、MOFの一種「MIL-101」にマグネシウム塩とアセトニトリル(有機溶媒の一種)の蒸気を入れたもので、室温で極めて高い伝導度を示すことが分かっていましたが、アセトニトリル分子の働きは不明でした。実験の結果、アセトニトリル分子はMg2+との相互作用で動きが遅くなり、サイトからサイトへ約1.6Å(オングストローム、1Åは100億分の1メートル)ずつ飛び移るように拡散していることが分かりました。これは、アセトニトリル分子がMg2+に配位(くっついて結合をつくること)することで伝導度が高まるという仮説を裏付ける結果です。成果は『Journal of the American Chemical Society』オンライン版(9月29日付)に掲載されました。

出典:理化学研究所 2026年10月21日 プレスリリース(掲載誌:Journal of the American Chemical Society/DOI: 10.1021/jacs.6c11926)
https://www.riken.jp/press/2026/20261021_2/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

次世代の二次電池(充電して繰り返し使える電池)では、希少なリチウムを資源量の多い金属に置き換える研究が進んでいます。中でもマグネシウムは安価で、2価の陽イオンとしてリチウムイオンの2倍の電荷を運べるため注目されています。

一方で、Mg2+は電荷が大きい分、周りのイオンと強く引き合い、固体の中を動きにくいことが課題です。そのため、Mg2+が速く動ける固体電解質(電池の中でイオンを運ぶ固体の材料)の開発が重要なテーマになっています。その解決策の一つとして、MOFの細孔をイオンの通り道に使う研究が行われてきました。

①熱と中性子で分子の動きを見る

研究グループは、まず断熱型熱量計(外から熱が出入りしない状態で温め、温度変化を精密に測る装置)で材料の熱容量を測り、温度によって材料の状態がどう変わるかを調べました。次に、中性子準弾性散乱(QENS:中性子を当て、分子の細かな動きを調べる手法)で、細孔内のアセトニトリル分子の動きを観測しました。実験には研究用原子炉JRR-3と大強度陽子加速器施設(J-PARC)の装置を併用し、ピコ秒(1兆分の1秒)からナノ秒(10億分の1秒)までの幅広い時間の動きを捉えています。

②分子の「飛び移り」が伝導のカギ

マグネシウム塩を含まない試料では、アセトニトリル分子は連続的に拡散していました。一方、マグネシウム塩を含む試料では、分子があるサイトから別のサイトへ飛び移る形で拡散していました。原文では、アセトニトリル分子はMg2+との配位結合の形成と切断を繰り返して拡散すると考えられる、と説明しています。提唱されていた伝導の仕組みが、溶媒分子の動きの観点から初めて実験で裏付けられたことになります。

編集部からひとこと

今回の成果は、高いイオン伝導が「なぜ起きるのか」を分子の動きから確かめた基礎研究です。原文は、MOFを用いた多価イオン(2価以上の電荷を持つイオン)固体伝導体の設計指針の確立に寄与すると期待を示しています。仕組みが分かることで、マグネシウム電池向け材料の設計がより狙いを定めやすくなる点に注目したい研究です。

FrontJournal編集部

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