連続運転をめざすステラレーター型核融合炉を研究する Proxima Fusion(ドイツ発)

連続運転をめざす「ステラレーター型核融合炉」を研究【Proxima Fusion|ドイツ発】

核融合発電の代表的な方式であるトカマク型は、プラズマ(高温で電離した気体)に流す大きな電流が不安定を招きやすく、止まらずに動く連続運転(止めずに発電し続けること)が課題とされています。この課題に挑むのが、ドイツのプロキシマ・フュージョン(以下Proxima Fusion)です。電流に頼らず外部の磁石でプラズマを閉じ込める「ステラレーター型核融合炉」を研究し、2026年7月には4億6,800万ドル(約700億円)の資金調達を発表しました。

核融合発電の課題

Proxima Fusionの紹介と、核融合発電でプラズマの電流が不安定を招くこと、磁石の設計と製造が難しいことを示す図

電流が不安定を招く

トカマク型の核融合炉は、プラズマに流す大きな電流が不安定を招きやすく、連続運転が難しいとされます。この方式は、電流が生む磁場を閉じ込めに使うため、電流が乱れると閉じ込めが崩れる場合があります。このままでは、安定して動き続ける発電所に近づきにくくなります。

磁石の設計と製造が難しい

外部の磁石で閉じ込めるステラレーター型は、ねじれた形の磁石の設計と製造が難しい課題があります。磁場を正確に計算して作る必要があり、わずかなずれも閉じ込めに響きます。このままでは、研究装置から発電所へ規模を広げるのが難しくなります。

FrontJournalの解説
  • プラズマ気体が非常に高い温度になり、原子核と電子がばらばらに飛び回る状態。核融合では、加熱した燃料がこの状態になる。
  • トカマク型ドーナツ状の容器にプラズマを閉じ込める方式。プラズマに電流を流して磁場を発生させる点が特徴で、研究が最も進んでいる方式の1つ。
  • ステラレーター型ねじれた形の磁石だけでプラズマを閉じ込める方式。プラズマに大きな電流を流さずに済むが、磁石の設計が難しい。

Proxima Fusionが「ステラレーター型核融合炉」を研究

ステラレーター型核融合炉の研究を示す図。高温超電導磁石で小型の発電所を設計し、磁石の試験装置と実証装置Alphaを段階的に進める

課題解決に挑むProxima Fusion

Proxima Fusionは、ステラレーター型の核融合発電所を設計するドイツの企業です。2023年に、マックス・プランクプラズマ物理研究所(IPP)の初のスピンアウト企業としてミュンヘンで創業しました。同社の設計は、IPPが主導する研究装置「Wendelstein 7-X」の成果を土台にしています。

超電導磁石で小型の発電所へ

Proxima Fusionは、高温超電導磁石を使うことで、従来のステラレーター発電所の設計より小型にできるとしています。2025年2月に発表した発電所の構想「Stellaris」は、現在入手できる材料だけで設計したとしています。設計は査読付きの学術誌『Fusion Engineering and Design』に掲載されました。核融合炉の材料は国内でも研究が進み、静岡大学がタングステン合金で水素が滞留する仕組みを解明しています。

実証装置で発電の実現へ

Proxima Fusionは、磁石の試験装置と実証装置「Alpha」を段階的に進め、発電所の実現をめざしています。試験装置「Stellarator Model Coil」で高温超電導磁石を確かめ、Alphaでは正味のエネルギー獲得を示す計画です。Alphaはミュンヘン近郊に建設し、バイエルン州、IPP、RWEと進め、2030年代前半の運転を目標にしています。50社超の産業パートナーが「Alpha Alliance」に参加しています。

FrontJournalの解説
  • 高温超電導磁石電気抵抗がゼロになる超電導の材料のうち、比較的高い温度で超電導になるものを使う磁石。強い磁場を小さな装置で発生させられる。
  • スピンアウト企業大学や研究機関の研究成果や人材をもとに、そこから独立して設立された企業。
  • 正味のエネルギー獲得加熱などに投入したエネルギーより、核融合で取り出すエネルギーが多くなること。発電所の成立に欠かせない条件。

「ステラレーター型核融合炉」の未来

ステラレーター型核融合炉の未来を示す図。連続運転に向く方式として、2030年代の商用発電所をめざし、シリーズA2で資金を調達した

連続運転に向く発電方式

ステラレーター型は、電流に頼らず外部の磁石で閉じ込めるため、連続運転に向くとされます。大きなプラズマ電流に頼らないため、電流による不安定を避けやすくなります。実証装置で確かめられれば、核融合を止まらずに電力を届ける電源として使える可能性があります。

2030年代の商用発電所をめざす

Proxima Fusionは、2030年代のうちに最初の商用ステラレーター発電所の稼働をめざしています。ドイツの電力大手RWEは、バイエルン州ギュンドレミンゲンの旧原子力発電所の敷地で、第1号発電所を進める契約を結びました。国内でも、同じステラレーター型のHelical Fusionが、安藤ハザマと発電初号機の建設に向けた基本合意書を結んでいます。

約700億円を調達し製造を拡大

Proxima Fusionは2026年7月、4億6,800万ドル(約700億円)を調達し、評価額は約27億ドル(約4,050億円)になったと発表しました。XTX VenturesとEast X Venturesが主導し、RWEとGoogleが戦略的な投資家として加わり、累計の調達額は6億5,000万ユーロ超(約9,500万ユーロの公的助成金を含む)です。この資金は、磁石の試験装置の完成と、高温超電導ケーブル・磁石の製造の拡大に充てる計画です。これにより、Alphaと商用発電所の設計と製造が進みます。

FrontJournalの解説
  • 評価額投資家が会社全体につけた価値。資金調達の際に、出資額と持ち分の割合などから算出される。

まとめ

核融合発電は電流による不安定と磁石の難しさが壁になっており、Proxima Fusionは高温超電導磁石で、この壁を低くしようとしています。磁石の試験装置と実証装置「Alpha」が、その設計を実機で確かめる場になります。国内でもStarlight Engineがグローバル・ブレインなどから出資を受け入れ、トカマク型のコンパクト設計で6大学と共同研究を進めています。FrontJournal編集部は、実証装置「Alpha」で連続運転の設計が確かめられることに期待しています。2026年11月18日にインテックス大阪で開かれる「FUSION POWER WORLD 関西」など国内の動きとあわせ、「ステラレーター型核融合炉」が電力を安定して届ける電源になることにも期待します。

※ 本記事は各社の公式発表・主要報道をもとに、FrontJournal編集部が再構成したものです。数値は各社・各媒体の公表値です。ドルの円換算は1ドル=約150円で概算しています。ユーロの金額は円換算せず、公表値のまま記載しています。
主な出典:Proxima Fusion 公式(Stellaris構想の発表)、Proxima Fusion の資金調達発表(Omnes Capital・UnternehmerTUM が掲載)、静岡大学・Helical Fusion・Starlight Engine の各発表。

この記事の作者

FrontJournal編集部

ディープテックを、ビジネスパーソンの視点でわかりやすく紹介するメディアです。

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら