2026.09.08 科学技術振興機構(JST) 元発表:2026.09.07

東京科学大発ANRis、変異遺伝子だけを抑えるsiRNA技術にJST出資

ニュース紹介

出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)における株式会社ANRisへの出資実行について」

科学技術振興機構(JST)は、出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)において、株式会社ANRis(本社:東京都文京区、代表取締役 川村渉)への出資を実行したと発表しました。

ANRisは、東京科学大学の程久美子特任教授が東京大学在籍時に創出した研究成果を基盤として設立された、siRNA医薬品の研究開発に取り組むスタートアップです。siRNA医薬品は、RNA干渉という細胞に元来備わる機能を利用し、生体内の特定の遺伝子発現を抑制することで疾患の治療を目指す医薬品です。

疾患の原因となる遺伝子は、正常な遺伝子の配列と比較して一塩基のみが変異していることが多く、既存のsiRNA設計技術では変異型と野生型を正確に区分して抑制することが難しいという課題がありました。ANRisが保有するプラットフォーム技術「SNPD-siRNA」は、一塩基変異mRNAのみを特異的に認識・識別し、選択的に発現抑制する配列の設計技術です。同社は今回の資金調達により、KRAS変異がんを治療する医薬品の開発を加速させる計画としています。

出典:科学技術振興機構(JST) 2026年9月7日 プレスリリース
https://www.jst.go.jp/pr/info/info1869/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

細胞には、もともと不要なRNAを壊す仕組みが備わっています。これをRNA干渉と呼びます。この働きを借りて、病気の原因になるタンパク質設計図だけを読ませないようにするのが、siRNA医薬品です。

低分子の薬や抗体では狙いにくかった標的にも届く可能性があり、遺伝性の病気やがんの治療手段として開発が進んでいます。

①正常な遺伝子まで止めてしまう

がんや希少疾患の多くは、遺伝子の変異が原因です。ただしその変異は、塩基が1つだけ入れ替わっているという小さな違いにとどまることが少なくありません。

設計図の並びがほとんど同じなので、これまでのsiRNA設計方法では、病気の原因になる変異型と、体に必要な正常型を見分けにくいという課題がありました。正常型まで抑えてしまえば、本来必要な働きも一緒に失われます。

②一塩基の違いを見分ける配列設計

ANRisSNPD-siRNAは、一塩基だけ変異したmRNAを特異的に認識し、そこだけを選んで発現を抑える配列を設計する技術です。正常な遺伝子の働きは残したまま、原因となる変異型だけを狙えます。

この技術は、JSTの大学発新産業創出プログラム(START)で2019年度に採択された研究開発課題の成果を活用したものです。同社は今回の出資により、KRAS変異がんに対する医薬品の開発を進める計画としています。

編集部からひとこと

研究室の成果が会社になり、公的資金がさらに開発段階を後押しする流れが見えます。KRASは長く狙いにくい標的とされてきた遺伝子で、siRNAという別の道筋から挑む取り組みが実際の薬に届くのか、次の段階の報告を待ちたいところです。

プレスリリース原文を読む ↗

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら