2026.09.29 │ 理研 │ 元発表:2026.09.28

理研、アト秒レーザーをサブミクロンまで集光しピーク強度を向上

ニュース紹介

「アト秒レーザーのサブミクロン集光を実現-電子の動きを「アト秒で変化させて利用する」研究に道-」

理化学研究所(理研)光量子工学研究センターの今坂光太郎基礎科学特別研究員、高橋栄治チームディレクター、山形豊チームディレクターらの研究チームは、アト秒(1アト秒は100京分の1秒)という極めて短い時間幅を持つアト秒レーザーをサブミクロン(1,000分の1mm未満)サイズまで集光することに成功しました。

理研で開発・運用する、パルス幅226アト秒のギガワット級アト秒レーザーに対し、高精度な楕円面多層膜ミラーを用いた集光光学系と、焦点位置の揺らぎを抑えながら集光サイズを測る手法を新たに開発しました。その結果、460nm×360nmの集光を実現し、テーブルトップ型光源由来のアト秒レーザーとして世界最高値となる3.0×1015W/cm2のピーク強度を達成しました。

アト秒非線形光学やアト秒レーザー加工など、電子の動きを「変化させて利用する」研究の進展が期待されます。論文は科学雑誌「Ultrafast Science」オンライン版(9月23日付)に掲載されました。

出典:理化学研究所 2026年9月28日 プレスリリース
https://www.riken.jp/press/2026/20260928_1/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

アト秒レーザーは、アト秒という極めて短い時間だけ光るレーザーです。カメラのストロボのように使うことで、原子や分子の中を動く電子の動きを観測する研究に使われてきました。

発生の仕組みは2023年のノーベル物理学賞の対象にもなりました。研究チームは2022年に、研究室の光学テーブルに収まるテーブルトップ型光源として、ピーク出力1.1ギガワットのアト秒レーザーを開発しています。次の課題は、この光を小さく絞り、電子の状態を変えられるほど強くすることでした。

①ミラーの誤差を1nm未満に

アト秒レーザーを理論上の限界近くまで絞るには、集光に使う鏡の表面を極めて精密に仕上げる必要があります。研究チームはシミュレーションで、局所的な高さのずれを数nm以下に抑える必要があると試算しました。

製作した楕円面ミラーの基板は、1mm四方での形状誤差が0.892nm(二乗平均平方根)でした。その表面に約60電子ボルトの光をよく反射するモリブデンとシリコンの多層膜を重ね、集光用のミラーに仕上げています。

②揺れを抑えて正しく測る

光をここまで小さく絞ると、焦点のわずかな揺れで測定値がぶれます。研究チームは焦点の複製像をリアルタイムで監視し、位置をフィードバック制御する仕組みを作りました。

さらに、測定値の平均を使うと集光径を大きく見積もってしまうことをシミュレーションで見いだし、中央値で評価する方法に改めました。その結果、集光サイズは水平460nm、鉛直360nmとなり、回折限界に近い大きさであると評価しています。

編集部からひとこと

発表資料によると、ビームを運ぶ途中の損失を減らせば、ピーク強度は2.6×1016W/cm2に届くと試算されています。これは従来のテーブルトップ型光源で報告された値の100倍以上です。気体に限られていたアト秒非線形光学が、固体を含む幅広い物質へ広がるかに注目します。

FrontJournal編集部

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