FiberCraze「ナノ多孔繊維」を開発|孔の開いた繊維の断面イラスト

FiberCraze株式会社(ファイバークレーズ)

FiberCraze「ナノ多孔繊維」を開発|研究領域=繊維に孔を開け・成分を閉じ込める/強み=強度を保ち・成分を多く保持/将来性=量産化と染色の・省資源化を目指す

企業紹介|FiberCrazeとは?

繊維に目に見えない孔(あな)を開け、機能を持つ成分を閉じ込める技術として、注目を集める「ナノ多孔繊維」。FiberCraze株式会社は、その社会実装を目指す、岐阜大学発の素材系ディープテック企業です。機能性繊維「Craze-tex®」を開発し、その素材サンプルを販売しています。

キーワード「ナノ多孔繊維」

「ナノ多孔繊維」は、数十ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)の孔を多数開けた化学繊維です。特徴は、繊維の強度を保ったまま、その孔に防虫や保湿などの成分を閉じ込められる点にあります。衣料や資材の現場で、防虫などの成分を含ませる用途が見込まれます。

市場課題|機能性繊維の成分量と染色の環境負荷が課題

現状の機能性繊維と染色の課題|現状は、成分を表面に付ける加工と高温高圧の染色に課題|防虫成分の量に・限りがある/高温高圧の染色は・負荷が大きい

衣類の防虫成分は量に限りがある

防虫衣料に使う成分は、繊維に持たせられる量が限られる点が課題です。機能性繊維は成分を繊維の表面に付ける加工が一般的で、付けられる量は表面に収まる分に限られ、洗濯を重ねると減りやすくなります。蚊が媒介するデング熱やマラリアが深刻な地域でも、この制約は同じで、防虫衣料の効き目を保ちにくくなります。

高温高圧の染色は負荷が大きい

ポリエステルの染色には高温と高圧が必要で、多くの水とエネルギーを使います。衣類の製造では、染色の工程が環境負荷の大きな要因の一つです。この工程は長く変わっていないため、素材の側から負荷を減らす工夫が求められます。

他にも、染色を助ける薬剤(助剤)の廃液処理、環境負荷の小さいフッ素フリー素材への置き換え、マイクロカプセル(成分を包む微小な容器)に代わる機能付与、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • デング熱デングウイルスを持つ蚊に刺されて感染する、熱帯や亜熱帯に多い感染症である。蚊に刺されないようにする対策が、予防の基本とされる。

FiberCrazeの強み|「ナノ多孔繊維」を開発

FiberCrazeが「ナノ多孔繊維」を開発|現在は、成分入り繊維のサンプルを提供|孔の中に・成分を閉じ込める/常温に近い染色・を目指す

孔に成分を閉じ込める

従来の繊維は孔を持たないため、成分を内部に入れにくく、表面に付けるのが一般的でした。

同社の「Craze-tex®」は、化学繊維に後加工(繊維を作った後に行う加工)で孔を開け、その内部へ防虫などの成分を入れる繊維です。加工には、従来は不良とされてきたクレーズ(材料が割れ始める手前の状態)という現象を使い、強度を保ったまま孔を作ります。孔の内部に入れるため、表面に付ける加工より多くの成分を含ませやすく、洗濯耐久性も高いとされています。成分が放出された後も、スプレーなどで付け直せるため、防虫衣料の効き目を長く保てる見込みです。

常温に近い染色を目指す

従来の染色は、染料が繊維の内部へ入りにくいため、高温と高圧をかけて染まる状態にする方法でした。

同社は、孔を開けた繊維の内部へ染料を入れることで、高温高圧に頼らない、常温に近い染色を目指しています。孔は、繊維を作った後の後加工で開ける数十ナノメートルの大きさで、加工後も繊維の強度は保たれます。同社は、この染色を常温常圧で行う方法を開発中です。素材の側から染色の負荷を減らす、という取り組みを進めています。量産できれば染色にかかる水とエネルギーを減らせ、衣類を製造する工程の環境負荷を下げられる見込みです。

FrontJournalの解説
  • クレーズ高分子材料に力を加えたとき、完全に割れる手前で現れる、微細なすき間を含むひび状の構造を指す。この状態を制御すると、強度を保ったまま孔を作れる。

ナノ多孔繊維の未来|衣服への採用から、量産と省資源の染色へ

ナノ多孔繊維が変える未来|衣服への採用から量産と省資源の染色へ|パリコレの・衣服に採用/マレーシアで・防虫素材を実証中/量産と省資源の・染色を目指す

パリコレ発表の衣服に採用

「Craze-tex®」は、2025年1月に開かれたパリ・ファッションウィーク(通称パリコレ)で、ファッションブランド「doublet」のコレクションに採用されました。doubletは井野将之氏が手がけるブランドです。協業のきっかけは、同社が素材を紹介したことでした。素材の質感に着目した同ブランドが採用を決め、学術研究から生まれた繊維がコレクションの衣服として披露されました。

マレーシアで防虫素材を実証中

同社は、2024年にマレーシアの研究機関と覚書(MoA)を結び、防虫成分を入れた素材の実証実験を進めています。覚書の相手先は、マラヤ大学の研究機関です。実証の目的は、感染症対策に使う防虫繊維の検証。創業者の長曽我部氏は、東南アジアを訪れ、デング熱やマラリアの患者が多い状況を目にしたことが、防虫素材の開発の原点です。

量産と省資源の染色を目指す

同社は、「Craze-tex®」の量産化と、染色にかかる水やエネルギーの削減を目指しています。2025年9月には、生産が始まっています。現在は、研究開発から量産へ移行する重要な時期です。

会社概要|2021年に設立された岐阜大学発の素材ベンチャー

岐阜大学の研究から事業化

FiberCraze株式会社は、2021年9月に岐阜県で設立されました。創業の中心となったのは、当時岐阜大学大学院に在籍していた長曽我部竣也氏で、当時同大学の教授だった武野明義氏とともに創業しました。岐阜大学で長年研究されてきたナノ多孔化技術を、産業に応用することが目的です。代表取締役社長には長曽我部氏が就任し、武野氏はCTO(最高技術責任者)を務めています。長曽我部氏は、2023年に「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」にも選ばれています。

岐阜大学発ベンチャーに認定

同社は、岐阜大学発ベンチャーの7号として認定されました。岐阜大学は2019年4月に大学発ベンチャーの認定制度を始めており、同社は令和3年度第1回の審査委員会の選考を経ています。制度は、大学と大学発ベンチャーとの関係を明確にし、支援を円滑に進めることを目的としています。

シードで4,000万円を調達

同社は、2023年8月に、初の資金調達として4,000万円をシードラウンドで調達しました。シードラウンドは、事業を立ち上げる時期に行う、ごく初期の資金調達です。出資したのは、リバネスのジャーミネーションファンド1号投資事業有限責任組合、長谷虎紡績、OKBキャピタル、NOBUNAGAキャピタルビレッジの4社です。資金は、経営幹部を中心とする人材の採用と、試作機の開発に充てる計画でした。

会社情報

会社名FiberCraze株式会社(FiberCraze Co., Ltd.)
所在地岐阜県岐阜市柳戸1番地1 国立大学法人東海国立大学機構岐阜大学インキュベーション施設ユニット15
設立2021年9月
代表代表取締役社長 長曽我部竣也。CTO 武野明義
資本金2,100万円
調達2023年8月にシードラウンドで4,000万円。出資はリバネス(ジャーミネーションファンド1号投資事業有限責任組合)、長谷虎紡績、OKBキャピタル、NOBUNAGAキャピタルビレッジ
事業防虫・保湿・抗ウイルスなどの機能を持つ繊維の研究開発。液体の吸着・分離などの機能を持つ多孔質フィルムの研究開発。繊維素材とフィルム素材のサンプル販売
技術領域繊維やフィルムの多孔化(ナノ・クレージング技術)。ブランド「Craze-tex®」
連携岐阜大学、マレーシアの研究機関(2024年に覚書)、doublet(2025年1月のパリ・ファッションウィークで採用)
採択岐阜大学発ベンチャー7号に認定
URLhttps://www.fibercraze.com/ja

編集後記|FrontJournal編集部より

ひび割れは不良のしるし、という製造の常識を逆手に取り、割れる手前の状態を意図して作ることで機能に変えた発想が、この会社の核にあると感じます。見えない孔に成分を閉じ込める発想は、不良の現象を価値に変えるという点で、素材の見方を一段広げる試みです。同社はその発想を、防虫や染色といった身近な用途へ結びつけています。

同じ岐阜大学発では、無人搬送台車を研究するエココロロボのように、地元の産業の現場へ研究を届ける会社が育っています。繊維メーカーの量産の現場と、大学の基礎研究が出会う土壌です。同社も、岐阜大学の研究を産業に応用する会社です。

岐阜から生まれた素材が、衣服や防虫衣料の分野で使われていく日を、楽しみに待ちたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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