2026.11.02 │ 筑波大学・北海道大学・科学技術振興機構(JST) │ 元発表:2026.10.29

筑波大学ら、睡眠を促すたんぱく質から抗菌ペプチドを発見

ニュース紹介

「ショウジョウバエの睡眠誘引因子に由来する抗菌ペプチドを発見」

筑波大学高等研究院(TIAR)国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)の戸田浩史特任助教・主任研究員、北海道大学遺伝子病制御研究所の野田展生教授らの研究グループは、ショウジョウバエ由来の睡眠誘因因子「Nemuri」から生じる複数の短いペプチドを同定し、これらが薬剤耐性菌を含む幅広い微生物の増殖を抑えることを発見しました。大腸菌や黄色ブドウ球菌では、同程度の濃度で増殖阻止に加え殺菌性も示しました。

これらのNemuriペプチドは、細菌膜に顕著な損傷を与えずに内部へ入り、RNAとリボソームが集まる領域に蓄積しました。リボソームが集まる領域の配置を変え、リボソームの動きを低下させるとともに、たんぱく質合成が抑えられました。昆虫・哺乳類培養細胞への毒性は低いことも分かりました。本研究成果は2026年10月29日(現地時間)付で、科学誌「Nature Communications」に掲載されました(DOI:10.1038/s41467-026-78960-5)。

出典:筑波大学・北海道大学・科学技術振興機構(JST) 2026年10月29日 プレスリリース
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20261029-2/index.html

FrontJournalの解説

睡眠を促すたんぱく質「Nemuri」と薬剤耐性菌

今回の研究の出発点は、ショウジョウバエの睡眠を促すたんぱく質「Nemuri」です。この遺伝子は、戸田氏らが2019年に米科学誌「Science」で報告したもので、名前は日本語の「眠り」に由来します。

研究の背景には、抗菌薬が効きにくい「薬剤耐性菌」の広がりがあります。プレスリリースは、従来とは異なる仕組みで働く抗菌薬が求められていると述べており、今回の成果もその流れに位置づけられます。

①リボソームの集まり方を変えてたんぱく質合成を抑える

リボソームは、細胞の中でたんぱく質を合成する分子の装置です。Nemuriペプチドは細菌の膜を大きく傷つけずに内部へ入り、RNAとリボソームが集まる領域にたまりました。続いてリボソームの配置と動きを変え、細菌のたんぱく質合成を抑えたと報告されています。

原文によると、この作用はリボソームの特定の結合部位に働くものとは異なり、その物理的な集合状態と動的な活動を標的にしています。

②培養細胞への毒性は低く、次は動物モデルで検証

昆虫と哺乳類の培養細胞に対する毒性は、低いことが確認されました。大腸菌と黄色ブドウ球菌に対しては、増殖を止める濃度と同程度で殺菌性も示しています。

本成果は基礎研究の段階にあり、研究グループは今後、細菌に感染させた動物モデルで有効性と安全性を確かめる計画です。安定性や体内での動き、免疫反応の起こしやすさ、耐性化のリスクも検証の対象になります。

FrontJournalからのひとこと

睡眠を促すたんぱく質が、抗菌薬の設計に向けた手がかりにつながりました。細菌の中の「分子の集まり方」を狙う考え方が、動物モデルでどのような結果を示すかに注目しています。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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