ウェーブレット「CCSモニタリング」を研究

株式会社ウェーブレット

ウェーブレット「CCSモニタリング」を研究|研究領域=地下の振動で・貯留層を監視する/強み=小型の震源装置で・振動を連続して発生/将来性=地熱や水道管へ・用途を広げる

企業紹介|株式会社ウェーブレットとは?

CCS(二酸化炭素の回収・貯留)で地中に貯めたCO2の漏洩や変化を、継続して監視する技術「CCSモニタリング」。株式会社ウェーブレットは、その社会実装を目指す、東京大学発の環境計測系ディープテック企業です。小型の震源装置「PASS」を使った地下の振動計測サービスを、地下埋設物の調査や地熱開発などの分野へ提供し、CCSでの実証に向けた開発を進めています。

キーワード「CCS」(二酸化炭素の回収・貯留)

CCSは、排出されたCO2を回収し、地下深くの地層(CO2の貯留層)に閉じ込めて貯留する技術です。貯留したCO2が地層の中で移動したり漏洩したりしていないかを、長期にわたって監視する技術が「CCSモニタリング」です。貯留の場所が増えるほど、この監視を続けられる仕組みが重要になります。

市場課題|CCSの貯留層を監視し続ける費用の重さ

現状のCCSの課題|現状は、大型の震源装置と高い費用で連続観測が難しい|貯留場所が増え・監視の対象も拡大/1回の調査に・1億円単位の費用

貯留場所の拡大に監視が必要

CCSの普及で、CO2を貯める場所が増えるほど、地下の状態を監視する作業も増えます。国際エネルギー機関(IEA)は、気温上昇を1.5度以内に抑えるには、CCSで約15%のCO2を削減する必要があるとしており、年間100万トンを貯留する場所が世界で約6,000か所必要な計算です。CO2の漏洩と、漏洩が誘発する地震が懸念されており、状態を継続して監視する仕組みが求められています。

従来の監視は費用と手間が重い

従来の監視は、大型の震源装置を使い、1回の調査に1億円単位の費用がかかる方法です。調査を繰り返すことが難しく、CO2の動きを連続して捉えにくいため、急な漏洩に対応できないおそれがあります。貯留場所が増えるほど、費用と手間が重なります。

他にも、大型の震源装置では、車両が入れない地形でのデータ取得、トンネルや傾斜地への長期の設置、貯留後の連続観測、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 震源装置地面に人工的な振動を送り出す装置である。振動が地下の層で反射して戻る時間や強さから、地下の構造を調べる。

ウェーブレットの強み|「CCSモニタリング」を研究

ウェーブレットが「CCSモニタリング」を研究|現在は、PASSによる計測サービスを提供|弱い振動を・足し合わせて遠くへ/用途で選べる・機種を用意

弱い振動を足し合わせて遠くへ

従来の人工震源は大型の装置で、トンネルや傾斜地のような場所へ長期にわたって設置することが難しいものでした。

同社が事業で使う「PASS」(Portable Active Seismic Source、可搬型の人工震源)は、弱い振動を連続して発生させる装置です。弱い振動も、連続した信号を足し合わせれば遠くまで届きます。東京大学の研究グループが2022年に開発した試作機では、直径4cmのモータで約10gの偏心オモリを回し、水平に約1km先まで信号が伝わりました。駆動は12Vのバッテリーで、3か月の連続運転で地盤の時間変化を捉えられることが示されました。小型の装置で、長期の観測を続けることが可能になります。

用途で選べる機種構成

用途に合わせた機種を用意しています。

浅い地盤や社会インフラ向けには10×10×12cmの「PASS-S1」、上下方向の振動を強調して伝えられる24×24×12cmの「PASS-P28」、CCSにも対応する52×66×47cmの「PASS-M1」があり、「PASS-M1」は深さ2,000mまで信号の到達が確認されています。小型の機種は約1kgと軽く、動作音も静かで、複数を連結して信号を強められる点が特徴です。そのため、機材を持ち込みにくい場所でも、地下の調査を実施できるようになります。

FrontJournalの解説
  • 偏心オモリ回転軸の中心からずらして取り付けた重りである。回すと遠心力で装置が揺れ、弱い振動を連続して作り出せる。

CCSモニタリングの未来|地熱・水道管での活用とCCSの実証

CCSモニタリングが変える未来|地熱や水道管へ用途を拡大|地熱地帯の・断層構造を可視化/水道局と・埋設物の位置を推定/CCSの実証と・用途拡大を目指す

地熱地帯の断層構造を可視化

国内の地熱地帯で弾性波探査(人工の振動で地下の構造を調べる方法)を行い、地下1,000m程度の断層構造を可視化しました。車両型の震源に加えてPASSも使い、車両が入れない地形でもデータを取得しました。取得したデータは、過去の地質調査や他の手法のデータと整合しています。2025年5月に公表された成果です。

水道管の位置特定へ用途を広げる

同社は、2024年度に東京都水道局と、PASSを使って地下4mまでの埋設物の位置を特定する手法に取り組みました。この取り組みでは、埋設された水道管の大まかな位置を、外れることなく推定できています。同社は2025年3月28日付で、東京都から「新事業分野開拓者」に認定されました。認定期間は2028年3月までで、期間中は、東京都の機関が同社のサービスを随意契約(競争入札によらない契約)で購入できます。

CCSの実証と用途拡大を目指す

PASSは超小型のため、CO2の貯留場所に多数を常時設置でき、アクセスの悪い場所にも設置できます。同社は、この特徴を生かし、CCSの陸上での実証に取り組む計画です。同社は、貯留した場所の常時監視によって、CCS事業の実現可能性に貢献できるとしています。あわせて、海域の貯留層に向けた機器の開発を進め、用途の拡大を目指します。

会社概要|ウェーブレットの事業内容・設立背景

東京大学の研究成果から設立

同社は、東京大学の辻健教授の研究室のグループが長年続けてきた研究成果を、社会で使える形にするため、2022年7月に設立された大学発のスタートアップです。辻は取締役 Chief Scientist を務め、東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻の教授でもあります。同社の事業は、地下の振動計測を用いた環境モニタリングの技術サービスです。

採択と連携の実績

2022年10月に東大IPC(東京大学協創プラットフォーム開発)の支援プログラム「1stRound」の第7回支援先に採択され、2022年秋のJR東日本スタートアッププログラムにも選ばれました。2024年度には東京都の「現場対話型スタートアップ協働プロジェクト」に採択され、東京都水道局と実施しました。2026年度にはNEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「フロンティア育成事業」で、東京大学の「天然水素活用を実現する探査・ポテンシャル評価技術の研究開発」というテーマに再委託事業者として参画し、インドネシアのバンドン工科大学とは、データ処理と事業開発に関する協力協定を結んでいます。

資金調達の状況

2024年11月の時点で、東大IPCなどを引受先とする第三者割当増資により、シード(事業の立ち上げ期)の段階で約2.5億円を調達しています。調達した資金は、人員の強化、CCSの陸上実証、海域CCS向けの機器開発、他分野への展開に充てる計画です。2026年10月には、プレシリーズA(シードの次の段階にあたる、本格的な事業拡大の前の資金調達)の第三者割当増資による資金調達の完了を公表しています。

会社情報

会社名株式会社ウェーブレット(Wavelet, Inc.)
所在地東京都文京区後楽2丁目3番21号 住友不動産飯田橋ビル3階 Room 6
設立2022年7月19日
調達シードで約2.5億円(2024年11月時点)。プレシリーズAの資金調達を2026年10月に公表
事業振動計測を用いた環境モニタリングの技術サービス
技術領域小型の震源装置「PASS」による地下の振動計測
連携東京大学(辻健教授の研究室の研究成果を社会実装)。インドネシアのバンドン工科大学(データ処理・事業開発の協力協定)
採択東大IPC「1stRound」第7回支援先(2022年10月)。JR東日本スタートアッププログラム(2022年秋)。東京都「現場対話型スタートアップ協働プロジェクト」(2024年度)。NEDO「フロンティア育成事業」(2026年度・再委託)
URLhttps://wvl.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

CO2を地下に貯める取り組みは、貯めたあとも状態を確かめ続けてはじめて、安心して広げられます。監視の費用が高いままでは、貯留の場所を増やすほど、確かめる作業が重くなります。常時監視は、CCSを広げるための土台の一つです。

ウェーブレットの特徴は、約1kgの小型の震源装置を複数連結して、信号を強められる点です。大型の震源装置を使う従来の調査とは、装置の置き方と監視の頻度が異なります。地熱地帯や水道管の調査にも同じ装置「PASS」を使っている点は、技術の幅を示しています。

CCSの貯留場所が増えていく時期に、地下の様子を連続して監視できる手段が選べるかどうかは、CO2の削減の進み方にも関わります。地下の動きを連続して捉える技術が現場に根づき、貯留の安全を確かめる標準的な手段の一つになる日を期待しています。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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