イーディーピー|産業技術総合研究所発の「ダイヤモンド単結晶」を板状に量産する素材系ディープテック企業

株式会社イーディーピー

イーディーピー「ダイヤモンド単結晶」を開発|研究領域=向きのそろったダイヤの結晶/強み=結晶を板状に繰り返し複製/将来性=人工宝石から半導体の材料へ

企業紹介|イーディーピーとは?

人工宝石から次世代の半導体まで、用途が広がる素材として、注目を集める「ダイヤモンド単結晶」。イーディーピーは、その社会実装を目指す、産業技術総合研究所発の素材系ディープテック企業です。人工ダイヤモンドを育てる元になる「種結晶」(板状の小さな結晶)や、半導体研究用の基板・ウエハなどを、国内外の宝石メーカーや研究機関へ提供しています。

キーワード「ダイヤモンド単結晶」

「ダイヤモンド単結晶」は、炭素原子が全体にわたって同じ向きにそろって並んだ、一つながりのダイヤモンドの結晶です。特徴は、結晶の向きがそろっているため、ダイヤモンド本来の硬さや熱の伝えやすさを引き出せる点にあります。宝石の原石を育てる土台や、電気自動車に向けた次世代半導体の研究で、材料として使われています。

市場課題|ダイヤモンドは大きく薄い結晶を作りにくい

現状のダイヤモンド単結晶の課題|現状は、切断の手間と大型化の難しさで供給が限られる/硬い結晶の切り出しは高コスト/半導体の土台の大型ウエハが不足

硬い結晶の切り出しは高コスト

ダイヤモンドは非常に硬く、結晶から薄い板を切り出すには手間と時間がかかります。板の形で使う用途が多く、切断後に表と裏の研磨も必要です。その結果、板状の単結晶を安く大量に供給するのは難しい状況です。

半導体用の大型ウエハが不足

ダイヤモンドを半導体に使うには大きな円盤状のウエハ(半導体を作る土台となる薄い円板)が欠かせませんが、量産に使える大きさの単結晶ウエハは限定的です。製造装置の多くはウエハの形が前提で、ウエハが大きいほど多くのデバイスを作れます。ところが「マイクロ波プラズマCVD法」(ガスを分解して炭素を積み上げる合成法)では単結晶を大きく育てること自体が困難で、デバイスの量産に進みにくい状況です。

他にも、天然のダイヤモンドに多い窒素による用途の制限、従来のパワー半導体(電力を制御する半導体)の発熱による性能低下、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • ウエハ半導体の結晶を薄い円板の形に加工したもので、その表面に多数の電子部品を同時に作り込む土台である。直径が大きいほど1枚から多くのデバイスを作れ、製造コストを下げられる。

イーディーピーの強み|「ダイヤモンド単結晶」を開発

イーディーピーが「ダイヤモンド単結晶」を開発|現在は、結晶の複製で板状のダイヤを提供/イオン注入で結晶を板状に複製/単結晶をつなぎ大型ウエハへ

イオン注入で結晶を板状に複製

従来の製法では、土台の親結晶と上に育てた結晶が一体になるため、硬い結晶を切断して取り出す必要がありました。

イーディーピーの分離技術は、親結晶の表面のすぐ下に炭素イオン(電気を帯びた炭素原子)を打ち込み、結晶の並びを崩した薄い層を作る方法です。この親結晶の上にダイヤモンドを育て、崩れた層を電解エッチング(電気で少しずつ削り取る処理)で取り除き、育った結晶だけを板の形で取り外します。失われる親結晶の厚さは1µm(1000分の1mm)程度にとどまり、同じ親結晶を何度も使える仕組みです。切断の工程を省けるため、宝石メーカーは原石を育てる種結晶を安定して調達できるようになります。

単結晶をつなぎ大型ウエハへ

単結晶を一つずつ大きく育てる方法では、結晶の大きさに限界があり、半導体の製造に必要な大きさのウエハを得にくいという弱点がありました。

イーディーピーの「モザイク結晶」は、同じ親結晶から複製した複数の単結晶を横に並べ、その上にダイヤモンドを育ててつないだ大きな結晶です。元が同じ親結晶なので結晶の向きがそろい、継ぎ目以外の部分は単結晶として扱えます。2026年5月には、この方法で2インチウエハ用の53×53mmの結晶を開発しました。ウエハが大きくなるほど、研究機関や企業は1枚のウエハで多くのデバイスを同時に試作できるようになります。

FrontJournalの解説
  • イオン注入電気を帯びた原子を加速して固体に打ち込み、内部の性質を変える加工技術である。半導体の製造で広く使われ、打ち込む深さを加速の強さで調整できる。ダイヤモンドでは表面直下に分離用の層を作るのに用いる。

ダイヤモンド単結晶の未来|人工宝石から半導体へ

板状のダイヤモンド単結晶が変える未来|宝石から半導体へ、ダイヤの用途が広がる/人工ダイヤの宝石を大型化/2インチウエハの量産へ/電動車のパワー半導体へ

人工ダイヤの宝石を大型化

イーディーピーの種結晶は人工ダイヤモンドの宝石の製造に広く使われ、宝石の大型化を支えています。マイクロ波プラズマCVD法で宝石を育てる場合、種結晶の大きさが最終的な宝石の大きさを決めます。7×7〜10×10mmの種結晶は、1カラット以上の宝石に適した標準品として、インドなどへ数多く出荷されてきました。2026年5月には最大20×20mmの種結晶を発売し、大きな原石から形の異なる宝石を複数切り出せるようになりました。

2インチウエハの量産へ

次の段階は、ダイヤモンド半導体の開発に使う2インチウエハの量産です。モザイク結晶を親結晶にして、分離技術で子結晶(親結晶から複製した結晶)を作り、レーザーで直径50mmの円板に切り出す計画です。同社は、準備が順調に進めば2026年度下期には量産体制が整う見込みとしています。2インチに対応した製造装置もあるため、ダイヤモンドのデバイス開発や一部の少量生産に使えるようになります。

電動車のパワー半導体を目指す

同社が目指すのは、ダイヤモンドを電気自動車などのパワー半導体の材料として実用化することです。ダイヤモンド半導体は電力の損失を抑えられる可能性が大きく、窒化ガリウムなどで指摘される資源の問題もないとされています。2026年3月には本田技術研究所と、ウエハの大型化と高品質化をテーマとする共同研究に向けた意向確認書を結びました。ダイヤモンド半導体が実用化すれば、電気自動車の電力の損失が減り、省エネにつながると期待されています。

会社概要|株式会社イーディーピー

産総研の研究から事業化

イーディーピーは、2009年9月に設立された産業技術総合研究所(産総研)発のベンチャー企業です。創業者で代表取締役社長の藤森直治氏は、産総研のダイヤモンド研究センターでセンター長を務めたのちに独立しました。イオン注入による分離とモザイク結晶の基本技術は産総研で開発され、同社がそれを量産の技術へ発展させています。本社は大阪府豊中市にあり、大阪府茨木市に工場と開発部を構えています。

代表と同社の受賞歴

代表の藤森直治氏は、産学官の連携による事業化で国の表彰を受けてきました。受賞歴は、2016年の大学発ベンチャー表彰「科学技術振興機構理事長賞」と、2017年の産学官連携功労者表彰「内閣総理大臣賞」です。同社も2016年に、JEITA(電子情報技術産業協会)の第1回「ベンチャー賞」を受けました。

2022年に東証グロース上場

同社は2022年6月、東京証券取引所のグロース市場に株式を上場しました。グロース市場は、高い成長の可能性を持つ企業が上場する市場です。2026年3月期の売上高は約5億1,655万円で、主な取引先はインドや米国、欧州などの人工ダイヤモンドメーカーのほか、国内外の研究機関や大学です。

会社情報

会社名株式会社イーディーピー(EDP Corporation)
所在地大阪府豊中市上新田4-6-3(本社)。大阪府茨木市(横江工場・島工場・開発部)
設立2009年9月8日(産総研発ベンチャー第100号)
代表藤森 直治(代表取締役社長)
資本金22億9,546万円(2026年3月31日現在)
上場東京証券取引所 グロース市場(2022年6月・証券コード7794)
従業員80人(平均臨時雇用者13人を含む・2026年3月31日現在)
事業ダイヤモンド単結晶と関連製品の製造・販売・開発。人工宝石用の種結晶(最大20×20mm)。半導体研究用の基板・ウエハ(1インチウエハ、低窒素基板など)。ヒートシンク・光学窓。切削工具用の素材
技術領域マイクロ波プラズマCVD法による単結晶の合成、イオン注入による分離技術、モザイク結晶
連携本田技術研究所(ダイヤモンドデバイス用材料の共同研究に向けた意向確認書・2026年3月)
採択大学発ベンチャー表彰 科学技術振興機構理事長賞(2016年・代表の藤森直治氏)。産学官連携功労者表彰 内閣総理大臣賞(2017年・同)。JEITA 第1回ベンチャー賞(2016年)
URLhttps://www.d-edp.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

ダイヤモンドといえば宝石を思い浮かべますが、硬さや熱の伝えやすさでは、ほかの材料にない性質を持つ素材でもあります。その性質から、切削工具や放熱材料、光学部品にも使われてきました。イーディーピーが取り組むのは、その性質を生かせる大きな単結晶を、板の形のまま量産することです。

興味深いのは、同じ技術が人工宝石の種結晶と半導体のウエハという、まったく異なる市場を支えている点です。宝石向けの量産で培った技術が、ダイヤモンド半導体の研究の土台にもなっています。同じくダイヤモンド半導体に取り組む大熊ダイヤモンドデバイスのような企業も現れ、材料とデバイスの両面で開発が進んでいます。

産総研の研究から生まれた結晶が、宝石から自動車までをつなぐ素材になれるのか、引き続き注目していきたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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