長岡モーターディベロップメント「磁石フリーモータ」を開発

長岡モーターディベロップメント株式会社

長岡モーターディベロップメント「磁石フリーモータ」を開発|技術領域=磁石を使わないモータを開発/強み=設計から評価まで一貫して対応/将来性=磁石に頼らない駆動の普及を目指す

企業紹介|長岡モーターディベロップメント株式会社とは?

磁石を使わずに、回転力を生み出す仕組みである「磁石フリーモータ」。長岡モーターディベロップメント株式会社は、その社会実装を目指す、長岡技術科学大学発のエレクトロニクス系ディープテック企業です。新潟県長岡市に拠点を置き、モータと駆動回路の設計から試作、評価までを受託で手がけています。

キーワード「磁石フリーモータ」

「磁石フリーモータ」は、回転子(回る部分)に永久磁石を使わないモータです。希土類磁石を使うモータは小型で効率が高い一方、磁石の供給や価格が変わりやすい点が懸念されます。同社は、磁石の代わりに鉄心の形で回転力を生む、SRM(スイッチトリラクタンスモータ)とSynRM(シンクロナスリラクタンスモータ)を開発しています。

市場課題|モータ開発に残る、磁石への依存と調整の負担

現状のモータ開発の課題|現状は、磁石の調達と事業者間の調整が負担|磁石の供給と・価格が不安定/開発の窓口が・分かれ調整に負担

磁石の供給と価格が不安定

希土類磁石(レアアースを原料とする、少量で強い磁力をもつ磁石)を使うモータは、小型で効率が高い一方、供給の不確実性と価格の変動がリスクです。モータは社会のさまざまな機器に使われています。磁石を使うモータでは、磁石の調達が不安定になると、モータを組み込む機器の開発や生産に影響が出ます。

開発の窓口が分かれ調整に負担

モータ開発は、担当が複数の事業者に分かれると、調整の負担が大きくなります。事業者間の調整や情報共有に手間がかかり、開発期間が長くなりがちです。不具合が出たときも、原因がモータ側か駆動側かをたどりにくくなります。

他にも、磁石のないモータの設計と制御、トルクの脈動や騒音の低減、駆動回路の準備、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 希土類磁石レアアース(希土類元素)を原料とする永久磁石である。少量でも強い磁力をもつため、小型で効率の高いモータに使われる。一方で、原料の供給や価格の変動を受けやすい。

長岡モーターディベロップメントの強み|「磁石フリーモータ」を開発

長岡モーターディベロップメントが「磁石フリーモータ」を開発|現在は、磁石不要のモータと一貫対応を提供|磁石不要の・SRMとSynRM/設計から評価まで・一貫対応

磁石不要のSRMとSynRM

従来の磁石を使うモータは、磁石の供給や価格の変動を受けやすいという弱点がありました。

同社が開発するのは、回転子に磁石を使わないSRMとSynRMです。SRMの回転子は鉄心だけです。SynRMは、フラックスバリア(回転子の中に設けた、磁束の通り道を整える空洞)の形で性能が決まります。フラックスバリアの形を、NSGA-II(複数の条件を同時に満たす形を探す計算手法)で15,000回試した結果、平均トルクが4%向上し、トルクリップル(回転力の周期的な揺れ)が53.1%から10.3%に下がりました。この結果は、磁石を使わないSynRMでも、トルクの揺れを抑えられることを示す事例です。

設計から評価まで一貫対応

従来のモータ開発では、モータと駆動回路の設計や評価が、別々の事業者に分かれがちでした。

モータと駆動回路の設計者が仕様を決める検討段階から加わり、両方の設計を並行して進める体制です。試作後の評価にも同じ設計者が立ち会うため、依頼者は複数の事業者と調整する手間を減らせます。SRMの駆動に使うのは、自社で作ったSiCインバータ(炭化ケイ素の半導体素子を使う電力変換回路)です。設計開始から1年程度で評価結果を得られるとしています。設計から評価までの情報が同じ設計者に集まるため、不具合の原因も追いやすくなります。

FrontJournalの解説
  • SRMスイッチトリラクタンスモータの略称である。回転子は鉄心だけで、磁石も巻線もない。巻線は固定子にある。固定子(回らない側)の磁極に鉄心が引き寄せられる力で回る。

磁石フリーモータの未来|磁石に頼らない駆動へ

磁石フリーモータが変える未来|磁石に頼らない駆動技術の普及を目指す|設計から・実機評価まで対応/騒音低減と・モデルベース開発/モータ駆動技術の・普及を目指す

設計から実機評価まで対応

同社はすでに、モータの設計から駆動回路、試作、実機の評価までを一貫して受託しています。開発例は、SRMで0.75kW、2.2kW、11kW、SynRMで0.5kW、0.75kW、5.5kWです。受託評価の試験台は、1.5kWから175kWまでの4台で、性能、効率、温度、振動、騒音を測れます。SRMのサイズとコイルの巻数を仕様から求める無料ツール「Motor Sketcher」も公開しており、登録なしで使えます。

騒音低減とモデルベース開発

SRMの振動と騒音を抑える研究も、進めています。ラジアル力(回転軸と垂直に働く力)のリップルを制御して、実機で騒音を下げました。さらに、モデルベース開発(コンピュータ上の模型で先に性能を確かめる開発手法)では、解析点(試算する条件の数)を4,880点から220点に減らしても、誤差は1%未満でした。こうした手法で、試作の前に性能を見積もる作業を軽くする取り組みを続けています。

モータ駆動技術の普及を目指す

モータを動かす技術を、もっと多くの人に使ってもらうことが、同社の目標です。その一つが、回路、モータ、制御ソフトを手で動かして学べる教材「パワエレトレーナー」で、販売は長岡パワーエレクトロニクス株式会社を通じた形です。教材の講師は、外部のセミナーも担当しています。磁石を使わないモータを設計できる技術者が増えれば、機器のメーカーは、磁石の供給や価格に左右されにくい選択肢を持てるようになります。

会社概要|長岡モーターディベロップメントの事業内容・設立背景

2016年設立の大学発企業

同社は、2016年8月に、長岡技術科学大学のテクノインキュベーションセンターで設立されました。代表取締役は佐藤大介と長井真一郎で、取締役の加藤尚和を含む3人は、いずれも工学の博士です。2018年8月に本社を長岡市のながおか新産業創造センターへ移し、2019年2月に実験室を開設しました。経済産業省の大学発ベンチャーデータベースには、長岡技術科学大学発の企業として掲載されています。

モータの受託開発と評価

事業は、モータとその駆動回路の受託開発と、受託評価です。開発の中心は永久磁石フリーモータで、設計から駆動、評価までが対象です。評価では、性能、効率、温度、振動、騒音を、4台の試験台で測定します。リスキリング(働きながら新しい技能を学び直すこと)向けの教材「パワエレトレーナー」や、モデルベース開発の支援も提供しています。

モータで困る人を助ける方針

同社は、モータで困っている人を助けることと、モータを駆動するノウハウを広めることを、方針に掲げています。技術面の発表は、電気学会での2024年から2026年にかけての論文です。長岡市が2024年11月に公表した入居企業の一覧にも、長岡技科大発のベンチャーとして、モータの受託開発と評価の事業が記載されています。

会社情報

会社名長岡モーターディベロップメント株式会社
所在地新潟県長岡市深沢町2085-16 ながおか新産業創造センター
設立2016年8月
代表代表取締役 佐藤 大介。代表取締役 長井 真一郎
資本金710万円
事業モータと駆動回路の受託開発。モータの受託評価。モデルベース開発の支援。リスキリング向け教材の提供
技術領域磁石フリーモータ(SRM、SynRM)の設計、駆動、評価
URLhttps://nagaoka-md.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

モータは身近な機器の多くを動かしますが、その中の磁石は、供給や価格が気になる部品でもあります。磁石への依存を減らす選択肢の一つが、磁石フリーモータです。長岡モーターディベロップメントは、磁石を使わない方式のモータを、設計から評価まで一貫して手がけています。

同社の特徴は、単なる試作の受託でなく、モータと駆動回路の設計者が仕様の段階から加わる点にあります。設計開始から1年程度で評価結果を得られるとしており、開発の見通しを立てる手がかりになります。駆動回路の設計から評価まで同じ窓口で相談できる点も、機器メーカーにとって調整先を絞れる点です。

モータ駆動の分野では、青山学院大学発の青山モータードライブテクノロジーが、位置センサを使わない制御を開発しています。長岡技術科学大学発の同社が、磁石に頼らない駆動技術をどう広げていくのか、今後も注目していきます。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら

この企業について、
もっと深く知りたい方へ

パートナーシップ・お問い合わせはこちらから。