2026.10.14 │ 名古屋大学・大阪大学・東北大学ほか │ 元発表:2026.10.07

名古屋大学ら、単原子層と金属の界面に「重い電子」が生じることを実証

ニュース紹介

「界面に潜んだ重い電子の存在をはじめて実証 ―界面を利用した新たな強相関量子状態の人工設計へ―」

名古屋大学未来材料・システム研究所の宮町俊生准教授らの研究グループ(大阪大学、東北大学、筑波大学、量子科学技術研究開発機構、分子科学研究所の研究者も参加)は、単原子層の物質と金属の界面に、近藤効果に由来する「重い電子状態」が存在することを世界で初めて明らかにしたと発表した。銅(Cu)の単結晶基板の上に、高品質な単原子層のイッテルビウム・銅(YbCu2)薄膜を作製して電子状態を調べ、YbCu2層のYb 4f電子と、Cu基板に由来する伝導電子が、界面を越えて混ざり合って重い電子状態を形成していることを実証した。測定には、シンクロトロン光を用いた角度分解光電子分光(ARPES)を使い、KEK放射光実験施設フォトンファクトリーと、分子科学研究所の極端紫外光研究施設UVSOR-IIIを利用した。

出典:名古屋大学 2026年10月7日 プレスリリース(掲載誌:Communications Materials/DOI: 10.1038/s43246-026-01332-5)
https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/2026/10/post-1075.html

FrontJournalの解説

重い電子とは何か

重い電子とは、低温で、電気を運ぶ伝導電子が近藤効果によって、局在した電子(希土類では4f電子)と混ざり合い、見かけの質量(有効質量)が大きくなる現象です。この状態は、従来のBCS理論では説明できない特殊な超伝導などの起源とされています。

近藤効果は、磁性をもつ不純物を含む金属で、ある温度以下になると電気抵抗が増える現象です。1964年に近藤淳博士が物理的な仕組みを理論的に解明したことから、この名前が付けられました。

①界面の電子状態を直接調べる難しさ

異なる物質の界面で重い電子状態が形成されることは、これまで予測されていましたが、その形成の様子を直接捉えることは難しいとされてきました。研究グループは、Cu(111)の単結晶基板の上に、原子1層分のYbCu2薄膜を高い品質で作製しました。原子1層の薄膜と基板が接する界面が、調べる対象になります。

②光のエネルギーを変えて二次元か三次元かを区別

電子状態の測定には、角度分解光電子分光(ARPES:光を当てて飛び出す電子の角度とエネルギーから、固体の中の電子の運動量と束縛エネルギーを調べる手法)が使われました。入射する光のエネルギーを変えると、電子状態が原子層の中に閉じ込められた二次元的なものか、基板の内部まで広がる三次元的なものかを区別できます。この測定により、YbCu2層の4f電子と基板由来の伝導電子が、界面を越えて混ざり合っていることが示されました。

編集部からひとこと

今回の成果は、原子1層の材料と金属基板の組み合わせで重い電子状態が生じることを示した基礎研究です。研究グループは、界面の構造、電子軌道、モアレ構造を精密に制御することで、低次元の系に新しい強相関量子状態を作り出せる可能性があるとしており、特異な超伝導などの新しい量子現象につながることが期待されるとしています。具体的な応用や実用化の時期は、発表では触れられていません。

FrontJournal編集部

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