輝翠|東北大学発の「農業ロボット」を研究するディープテック企業

輝翠株式会社

輝翠「農業ロボット」を研究|研究領域=果樹園で荷を運ぶ自律走行ロボット/強み=作業者に追従し凹凸の地面も走行/将来性=草刈りへの応用も進める

企業紹介|輝翠とは?

人手の足りない農場で、重い収穫物や資材の運搬を担う技術として、注目を集める「農業ロボット」。輝翠株式会社は、その社会実装を目指す、東北大学発のロボット系ディープテック企業です。果樹園向けの自律走行型AIロボット「Adam」を、国内外の農業現場へ提供しています。

キーワード「農業ロボット」

農業ロボットは、人が担ってきた運搬や草刈りなどの農作業を、機械が自動で行う装置です。人が運転席で操作する従来の農業機械と違い、運搬用などの農業ロボットはセンサーで周囲を把握しながら自分で進路を決めて走ります。担い手が減っても、少ない人数で広い農地の作業を続けられるようにすることが目的です。

市場課題|農業の担い手が減り、果樹園の運搬が重い負担に

現状の果樹園の運搬の課題|現状は、人手の確保が難しく果樹園の運搬が重い負担に/担い手が減り作業の維持が困難/凹凸の園内は運搬機械化が難しい

担い手が減り作業の維持が困難

農業を主な仕事とする人が大きく減り、農作業の人手の確保が難しくなっています。2025年の基幹的農業従事者は102万人で、2000年の240万人から半分以下に減り、平均年齢は67.6歳でした。今後も減少が見込まれ、少ない人数で広い農地を担う必要があります。

凹凸の園内は運搬機械化が難しい

果樹園は地面の凹凸やぬかるみが多く、運搬を機械に任せにくいため、人が荷を運ぶ場面が多く残っています。りんご農園では、収穫したりんごを入れるかごは1つ20kgあり、農園全体で1日に合計5,000kgを出荷場所まで人力で運ぶ例もあります。この運搬を人力で続けると、高齢の作業者ほど体への負担が大きくなりかねません。

他にも、木の根元や支柱を避けながら進める草刈りの手間、肥料や農薬を散布する作業の労力、傾斜地での作業の危険、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 基幹的農業従事者ふだん仕事として主に自営農業に従事している人を指す。農林水産省が農林業センサスで集計しており、農業の担い手がどれだけいるかを測る代表的な指標として使われている。

輝翠の強み|「農業ロボット」を研究

輝翠が「農業ロボット」を研究|現在は、AIロボット「Adam」を提供/作業者に追従し収穫物を運搬/凹凸を車輪ごとに吸収して走行

作業者に追従し収穫物を運搬

人が押す台車や運転する運搬車では、作業者が収穫の手を止め、荷物と一緒に園内を往復しなければなりません。

同社の自律走行型AIロボット「Adam」は、作業者の後を自動で付いて走り、収穫した果実を入れたコンテナを運びます。決めた経路を自動で走るルートモードも選べる作りです。走行を支えるのは、GPS(人工衛星で位置を測る仕組み)が使えない場所でも農園内の地図を作れるSLAM(自己位置推定と地図作成を同時に行う技術)など、月面探査ロボットの開発で使われてきた技術です。作業者は重いコンテナを持って往復せずに済み、体への負担を減らしながら少人数でも収穫を続けられます。

凹凸を車輪ごとに吸収して走行

平らな路面を前提に作られた運搬機械は、凹凸や傾斜、ぬかるみの多い園内では車体が揺れやすく、荷を傷めたり進路を変えにくくなったりします。

「Adam」は、4つの車輪がそれぞれ独立して上下に動き、路面の凹凸を吸収する4輪独立サスペンションを備えています。操舵には、曲がるときに内側の車輪の向きを外側より大きく変えるアッカーマン式を採用し、タイヤの擦れや土壌の傷みを抑えています。駆動は4輪で、最大300kgの荷を載せて最大15度の傾斜を走行できる設計です。サスペンションが凹凸による揺れを吸収するため、傾斜のある園内でも収穫物の傷みを抑えられます。

FrontJournalの解説
  • SLAM移動するロボットが、センサーで周囲を測りながら地図を作り、同時にその地図の中での自分の位置を推定する技術である。GPSの電波が届きにくい場所でも、ロボットが自分で経路を決めて走れるようになる。

未来|農業ロボットの用途が運搬から草刈り・農薬散布へ広がる

農業ロボットが変える未来|果樹園の運搬から、屋外の現場へ広がる/国内外の果樹園で運搬を支援/草刈りや農薬散布へ用途を拡大/屋外作業の自動化を目指す

国内外の果樹園で運搬を支援

「Adam」は、すでに国内外の果樹園で運搬作業に使われています。同社は2025年4月に一般販売を始めて初回生産分を完売し、同年中に国内外で合計14台を納入しました。青森県では2025年11月、JA全農あおもり(全国農業協同組合連合会青森県本部)、外川農機と三者連携覚書を結び、りんご農家への導入を共同で進めています。北海道岩見沢市の果樹園でも運搬の実証を行いました。

草刈りや農薬散布へ用途を拡大

「Adam」の用途は、車体に取り付ける作業機(アタッチメント)によって広がっています。草刈りのアタッチメントは電動の3枚刃を3基のモーターで回し、刈る高さも調整できる作りです。オーストラリアでは草刈りの自動化を主な目的に導入が決まり、同社としてオセアニア地域で初の導入事例となりました。農薬散布用のアタッチメントも開発しており、1台のロボットで運搬から草刈り、散布までの作業を担える見込みです。

屋外作業の自動化を目指す

同社は、農業に加えて建設やインフラなど、屋外で行う作業の自動化を目指しています。屋外の現場では、凹凸や傾斜、ぬかるみへの対応が欠かせません。東南アジア市場に向けては、出資者でもあるインドネシアの製造企業と組み、現地での生産・組立・供給体制の構築を進めています。重い荷物の運搬をロボットに任せられれば、人手の足りない農場や建設現場でも作業者の体への負担を減らせます。

会社概要|輝翠株式会社

月面ロボットの研究者が創業

輝翠は東北大学発のスタートアップで、代表取締役のブルーム タミル氏が2021年9月に仙台市で設立しました。ブルーム氏は米国の大学院で航空宇宙工学を学んだ後、東北大学大学院工学研究科の博士課程で吉田和哉教授のもと、月面探査ロボットの開発に取り組みました。東北各地で高齢の農家が体に負担のかかる作業を続ける姿を見たことが、起業のきっかけです。りんご農家への聞き取りを重ね、収穫したりんごを運ぶロボットから開発を始めました。

千葉大学の構内に拠点を置く

同社は2023年3月、開発拠点を千葉大学西千葉キャンパス内に移しました。現在は千葉大学柏の葉キャンパス内にオフィスを置いています。千葉県柏市内には製造拠点があり、千葉大学関連スタートアップの一覧にも掲載されています。創業期には、農林水産省の「令和3年度農林水産業等研究分野における大学発ベンチャーの起業促進実証委託事業」に採択されました。2025年11月には、北海道の地域課題の解決を目指す「Local Innovation Challenge HOKKAIDO 2025」の第3期に採択されています。

第三者割当増資を実施

同社は2026年7月、第三者割当増資(特定の出資者に新しい株式を割り当てる資金調達)を実施しました。インドネシアのPT Duta Laserindo Metal、三菱UFJキャピタル、シンニチ工業、脱炭素化支援機構、個人投資家などが参画しています。調達した資金は、「Adam」の量産体制の強化や国内外での販売・導入体制の拡大、自動化技術の開発に充てる計画です。

会社情報

会社名輝翠株式会社(Kisui Co., Ltd./旧社名 輝翠TECH株式会社)
所在地宮城県仙台市青葉区中央4丁目4-19 アーバンネット仙台中央ビル2F YUINOS内(登記上の本店)。柏の葉オフィス=千葉県柏市柏の葉6-2-1 千葉大学柏の葉キャンパス内
設立2021年9月
代表代表取締役 ブルーム タミル(Tamir Blum)
調達2026年7月に第三者割当増資(PT Duta Laserindo Metal、三菱UFJキャピタル、シンニチ工業、脱炭素化支援機構、個人投資家など)
事業自律走行型AIロボット「Adam」(最大積載300kg)の開発・販売。小型版「Mini Adam」(最大積載100kg)の開発。草刈りなどのアタッチメント。農業DX基盤「MyNojo」
技術領域農業ロボット、自律走行、SLAM、4輪独立サスペンション、画像認識、データサイエンス
連携東北大学(大学発ベンチャー)。千葉大学(関連スタートアップ一覧に掲載・キャンパス内に拠点)。JA全農あおもり・外川農機(2025年11月に三者連携覚書)
採択農林水産省「令和3年度農林水産業等研究分野における大学発ベンチャーの起業促進実証委託事業」。「Local Innovation Challenge HOKKAIDO 2025」第3期(2025年11月)
URLhttps://kisui.ai/

編集後記|FrontJournal編集部より

輝翠は、月面を走るロボットの研究で培った自律走行の技術を、果樹園の運搬という身近な重労働に向けた企業です。凹凸の多い地面で自分の位置を把握しながら走るという点で月面と果樹園には共通点があり、宇宙のための技術が農家の負担を軽くする道具へ姿を変えた点に、この会社の面白さがあります。現場の農家への聞き取りから開発を始めたことも、使う人の作業に合わせたロボットの開発につながっています。

「Adam」は単なる運搬車ではなく、草刈りや散布の作業機を付け替えて使う屋外作業の土台として設計されています。担い手が減るなかで、1台のロボットが担える作業の幅がどこまで広がるのか、国内外の農場での広がりに注目していきます。

FrontJournal編集部

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月29日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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