株式会社Vitalizarは呼吸中の胸と腹の動きを非接触で数値化するアプリを開発する東京科学大学発の企業

株式会社Vitalizar(ビタリザ)

Vitalizar「非接触呼吸計測」を研究|研究領域=器具を付けずに呼吸の動きを測る/強み=胸と腹の動きをミリ単位で数値化/将来性=呼吸から不調の把握を目指す

企業紹介|株式会社Vitalizarとは?

施術や運動の効果を目で確かめられる技術として、注目を集める「非接触呼吸計測」。株式会社Vitalizarは、その社会実装を目指す、東京科学大学発のライフサイエンス系ディープテック企業です。呼吸計測アプリ「BREVI」を、治療院やトレーナー、健康用品メーカーへ提供しています。

キーワード「非接触呼吸計測」

「非接触呼吸計測」は、体に器具を付けずに呼吸の動きを数値で捉える計測方法です。特徴は、タブレット端末のLiDARセンサ(光の反射が戻るまでの時間から距離を測る装置)だけで、胸と腹の動きをミリ単位で追える点にあります。施術や運動の前後で波形を並べれば、呼吸の変化を利用者と一緒に確認できます。

市場課題|見えにくい呼吸の変化

現状の呼吸評価の課題|呼吸の変化は本人も気づきにくい/評価は施術者の主観に頼りやすい

呼吸の変化は本人も気づきにくい

呼吸は無意識に繰り返される動作のため、本人が変化に気づきにくいものです。息の深さや、胸と腹の使い方は、姿勢や痛み、緊張の度合いによって日々変わります。変化に気づかないまま過ごすと、体の不調と呼吸との関わりを確かめる手がかりが乏しく、施術や運動の効果も感覚に頼った判断にとどまりがちです。

評価は施術者の主観に頼りやすい

呼吸の評価は、視診や触診といった施術者の目と手に頼る方法が中心です。目視でも大きな特徴はつかめますが、変化の度合いや傾向を一定の基準で比べることは容易ではありません。そのため、施術の前後で何がどう変わったのかをめぐって、施術者と利用者のあいだに認識のずれが生じかねません。

客観的に測ろうとすると、体表にマーカーを貼る手間が生じます。他にも、機器のある施設まで足を運ぶ負担、意識するとふだんの呼吸から離れる難しさ、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 視診体を目で見て状態を判断する診察の方法である。呼吸では胸と腹の上下の動きを観察するが、動いた量を数値として残せないため、比較の基準は観察者の経験に左右される。

Vitalizarの強み|呼吸を数値で捉える

Vitalizarが「非接触呼吸計測」を研究|胸と腹の動きを波形で示す/タブレット端末で1分ほどで計測

胸と腹の動きを波形で示す

呼吸を客観的に測る方法としては、体表にマーカーを貼って動きを追う手法が用いられてきました。貼る位置の決め方や機材の準備に手間がかかり、わずかな変化を安定して捉えることは容易ではありません。

「BREVI」は、タブレット端末のLiDARセンサが捉えた3次元の画像から、呼吸にともなう胸と腹の動きを読み取ります。AIが、胸部の呼吸を安定して計測できる胸骨の位置と、腹部の呼吸の計測に適したへその位置を自動で抽出するため、マーカーの貼り付けも、測るたびの位置合わせも要りません。読み取った動きは、呼吸数と胸腹部の振幅としてミリ単位で数値化され、時間にそって並ぶ波形グラフとして表示されます。この計測方式は特許にもとづくもので、非接触のままでの計測は誤差5ミリメートル以下が可能とされています。

三脚とタブレットで1分計測

機器をそなえた施設でしか測れない方式は、日々の施術や運動の現場へ持ち込みにくく、計測のたびの機材の設置も負担になります。

「BREVI」の計測は、三脚やスタンドiPad Proを固定し、利用者を撮影するだけで終わります。撮影時間の設定範囲は、スタンダードプランで30秒から120秒、ゴールドプランで30秒から600秒です。座った姿勢でも計測できますが、体のぶれが少ない臥位(あおむけの姿勢)が推奨されています。撮影する側の操作は、三脚に固定した端末のカメラをかざすだけです。施術の前後に続けて測れば、胸と腹の波形から動きの大きさやタイミングのそろい方まで、施術者と利用者が同じ画面で確かめられます。

FrontJournalの解説
  • 振幅波の中心から山や谷までの大きさを指す。呼吸では胸と腹が上下に動いた量にあたり、この値を胸と腹それぞれで比べることで、どちらを主に使って息をしているかが分かる。

非接触呼吸計測の未来|医療と健康産業へ

非接触呼吸計測が変える未来|治療院やジムを主な提供先に/手元の端末でも測れるように/呼吸から不調の把握を目指す

治療院やジムが主な提供先

「BREVI」は2025年7月1日にリリースされ、治療院やトレーナーを主な提供先としています。リリースに先立つ事前の申し込みは、約70社にのぼりました。施術やトレーニングの前後で呼吸を測り、変化を利用者へ示す使い方です。料金は、標準的な機能をそなえたスタンダードプランと、より詳しいデータを取得できるゴールドプランが用意され、結果は画像やCSV(表計算ソフトで開ける形式)のデータとして保存できます。

対応端末の拡大を検討

同社は、対応する端末をiPhone Proなどへ広げることも検討しているといわれています。現在の対象はLiDARセンサを備えたiPad Pro(第4世代以降)に限られており、導入には端末の準備が必要です。手元のスマートフォンで測れるようになれば、機材をそろえずに導入でき、計測できる場所も広がります。提供先として想定されているのは、治療院やトレーナーに加えて、健康用品メーカーや研究機関です。

呼吸から不調の把握を目指す

同社が目指すのは、呼吸の状態から身体と精神の不調をとらえ、不調に悩む人の負担を軽くすることです。呼吸は、生化学や生理、心理、循環、そして運動器(骨や筋肉など体を動かす仕組み)と、体の幅広い働きに関わるといわれており、その状態を数値で残す意味は小さくありません。運動器の形態と機能の研究で積み重ねられた知見を土台に、まずは呼吸運動の可視化から着手しています。数値として残る記録の蓄積は、呼吸と不調との関わりを確かめる研究への足がかりです。

会社概要|Vitalizarの事業内容と設立背景

東京科学大学の研究から創業

株式会社Vitalizarは、2024年8月に東京都千代田区で設立されました。母体となったのは、同大学 大学院医歯学総合研究科の運動器機能形態学講座です。同講座の二村昭元教授が積み重ねてきた運動器の形態と機能に関する研究の知見を、身体と精神の不調に悩む人へ届けることを目的としています。

代表取締役は大石裕氏、二村教授は取締役です。同教授は2008年に東京医科歯科大学で医学の博士号を取得しています。二村教授は2016年から同講座に加わり、2020年に教授へ就任しました。

認定ベンチャーの称号を取得

2025年、同社は東京科学大学が初めて認定した2社のうち1社として、認定ベンチャーの称号を授与されました。この制度は、同大学の研究成果や人的資源を活用する企業に、審査のうえ称号を授与するものです。「BREVI」に用いる計測技術は、東京科学大学と日本電気(NEC)が共同で開発したもので、両者が特許を保有しています。2025年5月には、呼吸の指導を取り入れるための導入支援サービス「呼吸コンディショニングスペシャリスト powered by きほんの呼吸®」のオプションメニューとして採用されました。同じ計測技術は、日本電気が法人向けの「NEC呼吸可視化サービス」として2025年3月末を目標に提供を始めるとしており、Vitalizarは個人事業主や中小規模の事業者への提供を担っています。

利用料を収益の柱に据える

収益は「BREVI」の利用料によるものです。事業は、体の専門家に向けた法人向けの提供と、その先の利用者へ届ける形で組み立てられています。資本金は750万円です。

会社情報

会社名株式会社Vitalizar(ビタリザ)
所在地東京都千代田区神田須田町1丁目7番8号 VORT秋葉原Ⅳ 2F
設立2024年8月
代表代表取締役:大石 裕。取締役:二村 昭元(東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 運動器機能形態学講座 教授)
資本金750万円
事業ヘルスケアアプリの企画・開発・運営。呼吸計測アプリ「BREVI」の提供(治療院・トレーナー・健康用品メーカー・研究機関など)
技術領域LiDARセンサによる非接触の3次元計測。AIによる胸骨とへその位置の自動抽出。呼吸数と胸腹部の振幅の数値化と波形表示
連携日本電気(NEC)。東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 運動器機能形態学講座
採択東京科学大学認定ベンチャー(2025年・初回認定の2社のうち1社)
URLhttps://vitalizar.net/

編集後記|FrontJournal編集部より

呼吸は誰もが一日中続けている動作でありながら、その良し悪しを確かめる手立てはほとんどありませんでした。Vitalizarが選んだのは、専用の装置を新しく作るのではなく、すでに広く使われているタブレット端末の力を借りる道です。医学の研究室で積み重ねられた運動器の知見が、街の治療院の施術台まで届いている点に、社会実装としての手応えを感じます。

注目したいのは、単なる計測の自動化ではなく、施術者と利用者が同じ画面を見るという体験の設計です。数値と波形が間に入ることで、これまで言葉だけでやり取りしていた体感が、施術者と利用者のあいだで共有できるものに変わります。対応端末がスマートフォンへ広がれば、使える現場はさらに増えると見込まれます。

自分の呼吸の変化を、その場で目で確かめられる日常が広がることを期待しています。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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