2026.10.13 │ 東京大学大学院工学系研究科 │ 元発表:2026.09.30

東京大学、腸管表面を採取するブラシ付き磁気駆動カプセルを開発

ニュース紹介

「腸管表面サンプリング用のブラシ構造を持つ磁気駆動カプセルの開発に成功 ―腸内細菌叢の分析に向けた、非接触磁気操作による腸管表面サンプルの採取のための基盤技術―」

東京大学大学院工学系研究科の新井史人教授と戴玉国特任研究員らによる研究グループは、腸管表面から生体試料を採取するための磁気駆動カプセル(外部磁場で非接触に遠隔操作できるカプセル型デバイス)を開発しました。カプセルには出し入れ可能な柔軟なブラシと、2つの内部永久磁石、スクリュー機構が組み込まれています。ロボットマニピュレータで外部の永久磁石を操作し、カプセルを腸管表面に保持した状態で内部のブラシを動かして試料を採取し、採取後はブラシをカプセル内に収納します。

研究グループは摘出したブタ小腸でサンプリング能力を評価し、異なるブラシ構造でも生体試料を採取できることを確認しました。採取サンプルから細菌DNAを抽出し、PCRおよび16S rRNA遺伝子シーケンシング(細菌の16SリボソームRNA遺伝子の塩基配列から細菌群集を解析する手法)を行った結果、試料がその後の生物学的解析に利用できることが確認されました。成果は2026年9月29日付で、Cell Pressの学術誌「Device」オンライン版に掲載されました。本研究はJSTムーンショット型研究開発事業の支援を受けています。

出典:東京大学大学院工学系研究科 2026年9月30日 プレスリリース(掲載誌:Device/論文:Magnetically Actuated Brush-Structured Capsule for Intestinal Surface Sampling/DOI: 10.1016/j.device.2026.101304)
https://www.t.u-tokyo.ac.jp/press/pr2026-09-30-001

FrontJournalの解説

この研究分野について

今回のテーマは、口から飲み込んで消化管の中で働く「カプセル型デバイス」です。代表例はカプセル内視鏡で、小型カメラを内蔵したカプセルを飲み込み、腸の内部を撮影します。カプセル内視鏡は2001年に海外で発売され、日本でも2007年に保険収載されました。小腸を苦痛の少ない方法で調べられる点が利点とされています。

一方で、カプセルで腸の中から「試料を持ち帰る」研究も進んでいます。原文によると、これまでの研究は組織の生検や腸液・管腔内容物(腸の中を流れる内容物)の採取が主で、腸の壁の表面から直接試料を取ることに焦点を当てた研究はほとんどありませんでした。

①磁石2つでカプセルを保持し、ブラシを出す

カプセルの移動は、外部磁石の回転でカプセルを転がす「回転モード」と、外部磁石を動かして磁力で引き寄せる「並進モード」の2通りで行います。採取の際は外部磁石を2つ使い、一方でカプセルを腸壁の近くに保持し、もう一方で内部のサンプリング用磁石を回します。この回転がねじ機構で軸方向の動きに変換され、ブラシがカプセルの外へ伸びて腸壁に触れます。回転を逆にするとブラシが引き込まれ、採取した試料がカプセル内に保持されます。電池やモーターを積まず、外からの磁場だけでブラシの出し入れまで行う点が、この設計の特徴です。

②腸の壁の表面にいる細菌を調べる

腸内の微生物は消化管全体に均一にいるわけではなく、腸管表面の微生物は腸の中を流れる内容物にいる微生物と異なる場合があると原文は説明しています。腸管表面は宿主(人の体)と腸内細菌叢(腸にすむ細菌の集まり)が接する場所です。便の分析では分からない、場所ごとの細菌の違いを調べる手段として、今回の研究は採取した試料を16S rRNA遺伝子解析まで通せることを示しました。

編集部からひとこと

今回の実証は摘出したブタ小腸を使った実験段階で、生体内での試験や実用化の時期について原文は触れていません。それでも、外部磁石だけでカプセルの位置決めから試料の採取・保持までを行う仕組みが動いたことは、腸の局所環境を調べる新しい方法の土台になり得ます。今後、生きた体の中でどこまで狙った場所から採取できるかが、次の確認点になりそうです。

FrontJournal編集部

プレスリリース原文を読む

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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