仁科マテリアル「酸化グラフェン」を開発

株式会社仁科マテリアル

仁科マテリアル「酸化グラフェン」を開発|研究領域=炭素1枚の厚みの・酸化グラフェン/強み=機械剥離で・グラフェンを製造/将来性=用途開発と・量産を目指す

企業紹介|株式会社仁科マテリアルとは?

炭素原子が蜂の巣状に並んだ薄い素材「グラフェン」の仲間で、触媒やポリマーの補強材などに使われる「酸化グラフェン」。株式会社仁科マテリアルは、その製造と用途開発を手がける、岡山大学発の素材系ディープテック企業です。黒鉛を原料に、グラフェンや金属との複合体も製造しています。

キーワード「酸化グラフェン」

「酸化グラフェン」は、黒鉛を化学的に酸化して層を1枚ずつはがした、炭素1枚の厚みの素材です。炭素の薄い層が重なった黒鉛から作るため、原料には黒鉛が使われます。同社の公式サイトでは、透明電極やポリマー補強材、触媒担体(触媒の粒子を支える土台)、機能性薄膜などへの用途が挙げられています。

市場課題|グラフェンの量産と製法の配慮

現状のグラフェン製造の課題|現状は、量産とコストが課題で製法は複数ある|量産と製造コストが・課題とされてきた/酸化剤を用いる製法は・薬品の工程が加わる

量産とコストの課題

グラフェンは、大量生産による生産効率の向上が、これまで製造面の課題とされてきた素材です。炭素原子が蜂の巣状に並んだ、厚さ1ナノメートルの素材です。強度や電気伝導率、熱伝導率が高く、電極や触媒、放熱材などへの応用が期待されています。

一般的な製法の種類

グラフェンの製造では、機械剥離や酸化剤(物質を化学的に酸化させる薬品)を用いた製法が一般的とされています。製法によって、製造時の工程は異なります。他にも、製造コストの低減といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • ナノメートル1メートルの10億分の1を表す長さの単位。ナノ材料は、この大きさに近い厚みや粒子の大きさをもつ素材を指す。

仁科マテリアルの強み|「酸化グラフェン」を開発

仁科マテリアルが「酸化グラフェン」を開発|現在は、重金属不使用の素材を提供|機械剥離で・安全性と環境に配慮/重金属不使用と・金属複合体も製造

グラフェンの機械剥離

酸化剤を用いる製法では、薬品を扱う工程が加わります。

同社は、丸紅の2020年11月のリリースによると、独自の機械剥離技術でグラフェンを製造しています。機械剥離とは、黒鉛の層に力を加えて、1枚ずつ薄くはがす方法です。この製法は、酸化剤を使用しないため、安全性が高く環境への負荷が少ないとされます。この製法で作るグラフェンの用途が広がるよう、同社は丸紅および丸紅テツゲンと提携しています。公式サイトが掲げる理念は、基礎研究から実用化までの一気通貫型の研究開発です。

重金属不使用と金属複合体

電子材料や触媒など、用途ごとに求められる素材の条件は異なります。

同社は、特殊な製法により重金属を使用せずに製造した酸化グラフェンを提供しています。用途は、電子材料や塗料、ポリマー補強材、触媒担体などと案内されています。パラジウムや白金を酸化グラフェンに複合させた素材もあり、触媒や導電性材料として使える素材です。自立膜の形にした製品もあり、濾過膜や触媒担体への利用が公式サイトで挙げられています。公式サイトには、酸化グラフェンの種類や金属との複合体が製品として紹介されており、用途に応じて選ぶことができます。

FrontJournalの解説
  • 重金属比重が大きい金属の総称。鉛や水銀、カドミウムなどが代表例で、人体や環境への影響が懸念される種類もある。

酸化グラフェンの未来|用途開発と量産の目標

仁科マテリアルの素材が変える未来|提携で用途を広げ、量産を目指す|丸紅と提携し・用途開発を推進/木粉と竹粉から・繊維素材を製造/グラフェンの量産と・コスト低減を目指す

丸紅との提携で用途開発

2020年11月に、同社は丸紅および丸紅テツゲンと戦略的業務提携契約を結びました。目的は、同社が開発した新規製法で製造するグラフェンの、新たな用途の開発と需要の開拓でした。丸紅の発表では、この製法は独自の優れた機械剥離技術によるものとされています。素材を作る企業と商社が組み、用途と需要の両面から開拓を進める形です。

木粉から作る繊維素材

2026年4月には、木粉や竹粉から直接製造するセルロースファイバーが、新しい製品として公式サイトに掲載されました。セルロースファイバーは、植物の細胞壁に含まれるセルロースを繊維状にした素材です。独自の製法により開発したとしています。用途は、フィラー(樹脂などに混ぜる充填材)やフィルムです。

量産と低コスト化の目標

2020年の発表では、グラフェンの大量生産による生産効率の向上と製造コストの低減が、今後の目標として挙げられました。公式サイトには、1日あたり1トンのマイクロ波加熱炉を設計する事業も掲載されています。マイクロ波加熱炉は、マイクロ波で材料を加熱する装置です。同社の事業には、マイクロ波プロセスのほか、炭素ナノ材料と金属ナノ材料もあります。

会社概要|仁科マテリアルの事業内容・設立背景

岡山大学の研究から創業

同社は2012年11月に創業した、岡山大学発のベンチャー企業です。起業の目的は、大学での基礎研究の知見を社会に活かすことにあります。代表取締役の仁科勇太は、略歴によると2024年4月から岡山大学異分野基礎科学研究所の教授です。同社の研究所は岡山市北区芳賀の岡山リサーチパークインキュベーションセンター内にあり、本社は同区北方です。

補助事業と研究開発

公式サイトによると、同社は令和2年度に酸化グラフェンの新規製造法を、令和3年度にグラフェンの製造法を、次世代産業研究開発プロジェクト創成事業補助金の補助事業として取り組んだとのことです。2022年度には、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「エネルギー・環境新技術先導研究プログラム」で、テーマ「超スマート社会の高性能なIoTシステムを革新する酵素電池の開発」の実施体制に、東京理科大学や理化学研究所などとともに名を連ねています。公式サイトの「実施プロジェクト」には、2021年度NEDO先導研究プログラムの「超長寿命グラフェン被覆鋼材および塗料の開発」が記載されています。

炭素と金属のナノ材料

事業は、炭素ナノ材料、金属ナノ材料、天然資源調達・市場調査、マイクロ波プロセスなどです。炭素ナノ材料では、黒鉛を化学的に酸化して剥離し、酸化グラフェンを製造します。金属ナノ材料は、ナノ粒子にした金属が触媒反応の効率を高める点を生かした素材で、燃料電池の電極触媒や有機合成の触媒が用途です。天然資源調達・市場調査では、黒鉛について、スリランカ、中国、カナダ、エジプトの企業や研究機関と協力するとしています。

会社情報

会社名株式会社仁科マテリアル(NiSiNa materials Co. Ltd.)
所在地岡山県岡山市北区北方2-6-20-3
設立2012年11月
代表仁科 勇太
従業員5名(2026年4月時点)
事業炭素ナノ材料、金属ナノ材料、天然資源調達・市場調査、マイクロ波プロセス
技術領域酸化グラフェン。グラフェン(機械剥離)。金属-酸化グラフェン複合体
URLhttp://nisina-materials.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

グラフェンは性能への期待が高い一方で、量産とコストが課題とされてきた素材です。製造時の安全性や環境への負荷も、素材を選ぶ際に気になる点です。そのため、どの製法で作られたかが、素材選びの判断材料の一つになります。

仁科マテリアルの特徴は、酸化剤を使わない機械剥離のグラフェンや、重金属を使わない酸化グラフェンなど、製法に配慮した素材をそろえている点です。2020年に丸紅らと提携し、用途開発を目指した点も特徴です。公式サイトは理念として、基礎研究から実用化までの一気通貫型の研究を掲げています。

従業員5名の小さな会社ですが、2026年4月にはセルロースファイバーを新製品として公式サイトに掲載しています。素材の幅を広げながら、量産とコスト低減にどう取り組むかが注目されます。

FrontJournal編集部

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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