2026.09.28 │ 理研・メグレナジーほか │ 元発表:2026.09.25

理研ら、水素蓄電の水電解セルを安定させる運転条件と製法を導出

ニュース紹介

「水素蓄電の性能向上による防災性の高い地域づくり-大規模災害時の地域エネルギー供給に期待-」

理化学研究所 光量子工学研究センターの和田智之チームディレクター、公立阿伎留医療センターの武井正美院長、株式会社メグレナジーの図師誠代表取締役社長らの共同研究グループは、再生可能エネルギーを利用した水素蓄電システムによる自律エネルギー供給システムにおいて、水素を生成する水電解セルの安定性を向上させる制御方法を導出するとともに、水電解セルの製造方法の改良に成功しました。

共同研究グループは、水電解セルの触媒下での環境と、触媒に印加される電位の関係から「触媒が安定して存在するpHと電位の範囲」を導出しました。さらに水電解セルを構成する膜電極複合体の製造方法を改良して、水素発生の安定性向上に成功しました。

本研究成果は、災害などで大規模電源などからの電力供給が絶たれた場合にも、地域において一定のエネルギー供給を確保することへ貢献が期待されるとしています。成果は2026年第87回応用物理学会秋季学術講演会(9月8日)で発表されました。

出典:理化学研究所・公立阿伎留医療センター・株式会社メグレナジー 2026年9月25日 プレスリリース
https://www.riken.jp/press/2026/20260925_1/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

太陽光や風力による発電は、天候や時間帯によって発電量が変わります。必要なときに電気を使えるようにするには、余った電気をためておく仕組みが欠かせません。

方法の1つが水素蓄電です。余った電気で水を分解して水素をつくり、必要なときに燃料電池で電気に戻します。発表資料によると、蓄電池より電力の損失は多いものの、自己放電がないため長期間の保存に向いています。一方で、電気と水素の変換には時間がかかるため、急な変動には蓄電池などと組み合わせて対応します。

①触媒が溶けない電位で運転する

水素をつくる固体高分子型水電解セルでは、電解質膜の両側の触媒で水を分解します。これまで、酸素をつくる側の触媒の安定性が、セル全体の安定性に影響することが示唆されていました。

研究グループは、酸化マンガンに酸化イリジウムを混ぜた触媒について、触媒が置かれた環境の酸性度(pH)と電位の関係から、触媒が安定して存在できる範囲を導きました。この範囲で運転すると、水電解セルが安定して水素を生成することを確かめています。pHは装置の構造で決まるため、システム側で電圧の範囲を決めれば安定性を高められるとしています。

②圧着温度を上げて安定性を高める

膜電極複合体は、電解質膜と触媒層を高温で圧着して一体にした部品です。圧着温度は、膜のポリマーが変性しないとされる摂氏130度程度までとされてきました。

研究グループは、圧着温度を摂氏130度から165度に上げることで、安定性がさらに向上することを見いだしました。今後は、電気化学デバイスが満たすべき化学的な安定性の条件の解明を進め、試験的に使われているシステムの安定性を高めて普及を進めるとしています。

編集部からひとこと

停電が起きたとき、病院や地域が自前で電気をまかなえるかどうかは、命に関わる問題です。今回の研究は、電力システムの制御と部品の化学的な安定性を合わせて考える必要があることを示しました。医療機関と企業が加わった今回の取り組みが、どのように地域へ広がるかに注目します。

FrontJournal編集部

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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