サイエナジー|軟X線で包装のシール部を調べ「噛み込み検査」を自動化する計測系ディープテック企業

サイエナジー株式会社

サイエナジー「噛み込み検査装置」を開発|研究領域=袋のシール部のはさまりを検査/強み=軟X線で薄い噛み込みを検出/将来性=包装の不良品の出荷を防ぐ

企業紹介|サイエナジーとは?

食品や医薬品の包装で、シール部に内容物がはさまった不良品を機械で見つけ、包装の品質を守る「噛み込み検査装置」。サイエナジーは、その開発と製造に取り組む、計測系ディープテック企業です。透過力の弱い軟X線を使う検査装置「FIX」シリーズや、包装機に組み込める「X線センサシステム」を、食品や医薬品の包装の現場へ提供しています。

キーワード「噛み込み検査装置」

噛み込み検査装置は、袋を熱で閉じ合わせるシール部に、内容物がはさまった状態を見つける装置です。噛み込みがあると袋の気密性が損なわれ、中身の品質を保てない場合があります。アルミを使った包材のように中が見えない袋でも、X線などで袋の中を見通して、はさまった内容物を検出します。

市場課題|包装の噛み込みは目で見つけにくい

現状の噛み込み検査の課題|現状は、目視の確認で基準がばらつき見逃しやすい/噛み込みで袋の気密性が低下/目視の検査は基準が定まらない

噛み込みで袋の気密性が低下

シール部に内容物がはさまる「噛み込み」が起きると、袋の気密性が損なわれます。食品の小袋は、フィルムを熱で圧着するヒートシールで閉じられており、粉や液体がはさまった部分にはすき間が生じかねません。気密性が保てない袋は、カビや中身の変質、漏れの原因になり、見逃せば不良品として市場へ出る恐れがあります。

目視の検査は基準が定まらない

目視による噛み込みの確認は、作業者の熟練度で判定の基準がばらつき、見逃しが起きることがあります。人手が少ないときは検査の速度も落ち、生産の効率が下がります。見逃した不良品が出荷されると、クレームにつながりかねません。

他にも、検査を担う人員の確保、中身が見えないアルミ蒸着フィルム(アルミを薄く付けたフィルム)の袋の確認、HACCP(食品の衛生管理の手法)で求められる検査結果の記録、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • ヒートシール熱と圧力を加えて、プラスチックフィルムどうしを溶かして貼り合わせ、袋を閉じる方法。食品や医薬品の小袋に広く使われ、貼り合わせた部分に異物がはさまると、そこから空気や水分が出入りしやすくなる。

サイエナジーの強み|「噛み込み検査装置」を開発

サイエナジーが「噛み込み検査装置」を開発|現在は、軟X線で噛み込み検査を提供/軟X線で薄い噛み込みを検出/包装機に組み込むX線センサ

軟X線で薄い噛み込みを検出

エネルギーの高い一般的なX線は、物を通り抜ける力が強すぎるため、薄いフィルムやシール部にはさまった薄い内容物では弱まりにくく、画像に写りにくいという弱点がありました。

サイエナジーの検査装置が使うのは、X線の中でもエネルギーの低い軟X線です。X線が物を通り抜ける量は物の材質や密度、厚みによって変わり、軟X線は透過力が弱いぶん、薄い物のわずかな違いでも透過量に差が出ます。そのため、包材のフィルムや、シール部にはさまった密度の低い内容物が、画像の濃淡の差として浮かび上がります。アルミ蒸着フィルムや印刷のある袋でも中を見通せるので、目では確かめにくい袋の噛み込みまで、機械による全数検査が可能です。

包装機に組み込むX線センサ

目視の検品を包装機の後ろに置く検査装置で置き換えるには、生産ラインの配置を変える必要がありました。袋を閉じた後では、シールの熱で液体が蒸発し、薄い液体の噛み込みも見分けにくくなる場合があります。

同社の「X線センサシステム」は、従来のX線検査装置よりさらにエネルギーの小さいX線を使い、画像処理を省いて透過量だけを測ることで、センサを小さくしました。小型で既存の包装機に後から組み込め、袋を閉じる直前に、シール部へ内容物がずれていないかを確かめられます。検査幅は「SPOT型」(狭い範囲用)が最大10mm、「LINE型」(線状のセンサ)が最大200mmで、判定の基準は、透過量が設定した値を下回るかどうかです。判定の基準が人で変わらず、不良品を包装の段階で取り除けるため、材料の無駄も減ります。

FrontJournalの解説
  • 透過量物に当てたX線のうち、吸収されずに反対側へ通り抜けた量を指す。物の材質や密度、厚みで変わるため、透過量の分布を測れば、外から見えない内部の物の有無や厚みの違いを知ることができる。

未来|軟X線が包装の品質検査を変える

軟X線の噛み込み検査が変える未来|目視の検品を自動化し、品質管理を容易に/目視の検品を機械で自動化/検査の記録で品質管理を容易に/X線センサの新たな用途を目指す

目視の検品を自動化

軟X線による噛み込み検査は、食品の製造現場で目視の検品を置き換え始めています。鰹節などを製造するシーラック株式会社は、充填後の噛み込みを目で確かめていた工程に、同社の「LINE型」を導入しました。導入後は目視での検品が不要になり、作業の効率が上がったとされています。検査を機械に任せることで、作業者の負担が減り、判定の基準も一定に保てます。

検査の記録で品質管理を容易に

同社の検査装置は、検査の履歴や画像を保存でき、食品の衛生管理で求められる記録を残しやすくします。HACCPでは、危害の要因を防ぐうえで重要な工程を管理し、その結果を記録することが求められます。検査の結果はUSBメモリへ出力できるため、記録を手で書き写す手間がかかりません。包装の品質を記録で示せれば、取引先に対して品質管理の体制を説明しやすくなります。

X線センサの新たな用途を目指す

同社が目指すのは、軟X線センサを噛み込み以外の検査にも使う部品として育て、製品の幅を広げることです。同社のX線センサは噛み込みの検知にとどまらず、中身の有無や数量を調べる入味検査にも使われ、推定重量を出す機能も備えています。包材の材質や印刷の影響を受けにくく、紙を使った包材にも対応可能です。噛み込みと入味の確認を1つのセンサで担えれば、食品工場は検査の装置を増やさずに、不良品の出荷を防ぎやすくなります。

会社概要|サイエナジー株式会社

放射線検出の技術から創業

サイエナジーは、2005年4月に神奈川県相模原市で設立されました。創業の目的は、高エネルギー物理学の分野で使う、感度の高い放射線検出システムの技術開発です。設立翌月には、研究用の部材として「ガス電子増幅器」(ガス中の電子を電場で増やし、放射線を信号として捉える部品)の「SMASH」を発売しました。経済産業省の大学発ベンチャーデータベースでは、東京大学の関連ベンチャーとして収録されています。

東京大学と増幅器を改良

同社は、東京大学原子核科学研究センターとガス電子増幅器の改良に取り組みました。2006年1月に同センターが示した資料には、改良した増幅器が、1枚あたりで欧州原子核研究機構(CERN)製の約1.7倍の増幅率(電子を何倍に増やせるかを示す値)を示したと記されています。「SMASH」は現在も、高エネルギー物理の実験や宇宙放射線の検出に使う部材として、要望に応じた大きさと形で製作されています。

軟X線の検査装置へ展開

同社は放射線検出の技術を産業へ広げ、2008年に軟X線イメージセンサ「SSXRDシリーズ」を発売しました。2010年には食品業界向けの軟X線シール検査装置「FIX3」、2011年には医薬品業界向けの「MIS-3」を発売しています。2016年と2017年には包装機に組み込める「LINE型」と「SPOT型」を、2020年と2022年には軟X線検査装置「FIX-7」と「FIX-8」を発売しました。包装機械メーカーの株式会社トパックとの開発は、サイエナジーの提案で始まりました。サイエナジーはトパックが求めたセンサの小型化を実現し、製品化につなげています。

会社情報

会社名サイエナジー株式会社(SCIENERGY Co., LTD.)
所在地神奈川県相模原市中央区宮下2-21-16
設立2005年4月
代表元田 良一(代表取締役社長)
資本金7,840万円(2012年6月の第三者割当増資後)
事業軟X線検査装置「FIX-7」「FIX-8」(「FIX-7」はX線出力 最大25kV・50W、検査領域幅120mm以下、検査速度60m/min以下)、X線センサシステム「SPOT型」「LINE型」(X線出力2W、検査幅 SPOT型最大10mm・LINE型最大100mm/200mm)の開発・製造・販売。研究用部材「SMASH」(ガス電子増幅器)の製作
技術領域軟X線による透過検査、放射線検出(ガス電子増幅器)
連携東京大学原子核科学研究センター(ガス電子増幅器の改良・2006年の同センター資料による)。株式会社トパック(X線センサの製品化)
URLhttps://scienergy.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

ふだん手に取る小袋のお菓子やドリップコーヒーは、袋の縁が確実に閉じていることで品質が保たれています。その縁にはさまったわずかな粉や液体を見つける仕事に、高エネルギー物理学の実験のために磨かれた放射線検出の技術が生かされています。研究の道具として生まれた技術が、身近な食品の品質を支える側へ回った点に、研究と産業のつながりを感じました。

透過力の弱いX線をあえて選ぶことで、薄いフィルムの違いを見分けるという発想も印象的です。放射線をわずかな量まで捉える技術を磨いてきたことが、透過量の小さな差を扱う検査に生きていると感じます。検査の技術では、フォトニックラティスのように、偏光カメラで光の性質を使って見えない不良を捉える企業もあり、手法の違いを比べると理解が深まります。

人手不足が続く食品工場では、検査の自動化が作業者の負担軽減につながります。軟X線による検査がどこまで広がっていくのか、引き続き注目していきたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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