2026.10.07 │ 科学技術振興機構(JST) │ 元発表:2026.10.03

東京科学大学ら、サブ5nmナノギャップでWSe2の狭線幅発光を電気駆動

ニュース紹介

「サブ5nmナノギャップで狭線幅電界発光を実現~2次元材料オンチップ量子光源への電気駆動基盤~」

東京科学大学(Science Tokyo)総合研究院 フロンティア材料研究所の真島豊教授と、カリフォルニア大学バークレー校のAli Javey教授らの国際共同研究グループは、単層二セレン化タングステン(WSe2)をサブ5nm(5nm未満)のAu/Ptナノギャップ電極に集積し、狭線幅の電界発光を電気的に発生させることに成功しました。電子線リソグラフィーと無電解金めっき(ELGP)で作製した電極に単層WSe2をドライ転写し、10MHzの矩形波ゲート電圧で駆動したところ、3.5K(約マイナス270℃)で1.652eVを中心とする見かけ線幅1.83meVの交流エレクトロルミネッセンス(ACEL)ピークを観測しています。

同じ素子を光励起した場合は多峰性の発光を示したことから、ナノギャップが電気的にアクセスする局在状態を空間的に絞り込んでいると考えられるとしています。49個の素子の統計評価や対照実験、電界シミュレーション、ひずみモデル解析から、サブ5nmの幾何学的閉じ込め、局所的な電界増強、曲面電極による局所環境の変調、高速な電圧遷移が重要であることが分かったと発表されています。成果は米国化学会の学術誌「Nano Letters」に2026年10月3日付で掲載され、研究はJST戦略的創造研究推進事業CRESTの支援を受けています。

出典:科学技術振興機構(JST) 2026年10月3日 共同発表プレスリリース(掲載誌:Nano Letters/DOI: 10.1021/acs.nanolett.6c03133)
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20261003/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

2次元半導体とは、原子数個分の厚さしかないシート状の半導体のことです。代表例の単層WSe2は、低温で幅の狭い鋭い発光線を出す「局在発光状態」(結晶のひずみや欠陥に電子と正孔の対が閉じ込められた状態)を持つことが2015年ごろから報告されており、光子を1個ずつ出す単一光子源の候補として研究が続いてきました。

単一光子源は、量子通信や量子計算、量子計測で情報を運ぶ部品です。研究者は、こうした光源を半導体チップの上に作り込む「オンチップ量子光源」を目指しており、そのためには光を当てて光らせる方式ではなく、電気で直接駆動する方式が求められています。

①光励起では発光がにぎやかになる

原文によれば、光を当てて励起する方法では多数の局在状態が同時に光るため、発光スペクトルが複雑になりやすいという課題がありました。一方、電気駆動にも、複数の2次元材料を精密に積み重ねる積層型素子は作製が複雑で、広い領域を交流で駆動する方式では発光スペクトルが広がるという課題があったとされています。今回は電極のすき間を5nm未満に絞ることで、電気的に届く範囲そのものを狭くしたのが特徴です。

②積層に頼らない平面型の構成

今回の素子は、平面上に並べたナノギャップ電極に単層WSe2を載せる構成で、原文は「積層構造に頼らず」局在発光状態を電気的に選択駆動する平面型プラットフォームと位置づけています。電極を作る無電解金めっきは、めっきで電極間隔を数nmまで詰める手法で、真島教授の研究室がこれまで単電子トランジスタなどの作製に用いてきた技術です。

編集部からひとこと

今回の観測は3.5Kという極低温での結果で、原文が示しているのは狭線幅の発光を電気で引き出せたという段階です。単一光子が1個ずつ出ているかを確かめる測定や、室温での動作、量子通信機器への組み込み時期については、発表資料では触れられていません。それでも、電極の形だけで光る場所を選べる点は、集積型量子フォトニクスを目指す研究で参照される可能性があります。詳細は論文とJSTの発表資料で確認してください。

FrontJournal編集部

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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