精密林業計測「森林境界明確化」を研究|ドローンとAIで森林の境界と木1本ごとの資源を把握する様子を描いたイラスト

精密林業計測株式会社

精密林業計測「森林境界明確化」を研究|研究領域=森林の持ち主の・境目を確かめる/強み=AIとドローンで・境界と木の量を把握/将来性=枯れた木の検出や・流域ごとの整備へ

企業紹介|精密林業計測株式会社とは?

持ち主や境目が分からない森林で、手入れを進める手段となる「森林境界明確化」。精密林業計測株式会社は、その社会実装を目指す、信州大学発の企業です。ドローンで撮影した空中写真とレーザ計測(レーザ光で木や地面までの距離を測る方法)のデータを解析し、境界の推測図と木1本ごとの資源情報を提供しています。

キーワード「森林境界明確化」

「森林境界明確化」は、森林の持ち主ごとの境目を確かめ、図面にまとめる作業です。従来の方式では、持ち主の立ち会いのもとで杭を設置し、人力で測量してきました。空中写真やレーザ計測のデータから境界を推測し、机上で持ち主に確かめてもらう方法も、国の支援の対象に加わっています。

市場課題|森林の境界が分からず、現地の調査にも人手がかかる

現状の森林整備の課題|現状は、境界が不明で調査にも人手がかかり整備が遅れる|林地の境界が・不明で整備停滞/現地の測量と調査に・人手が必要

林地の境界が不明で整備停滞

林地では、持ち主と境界を確かめる調査が、全体の平均より遅れています。土地の所有者・境界・面積を調べる地籍調査の進捗率は、令和5年度末で全体の53%に対し、林地は47%です。持ち主の転居や代替わりで境界が不明になると、間伐(木を間引く手入れ)などの森林整備に着手できず、土砂災害を防ぐ働きが弱まる恐れがあります。

現地の測量と調査に人手が必要

境界の確認も資源の調査も、人が山に入るため、多くの人手が必要です。測量には持ち主の立ち会いが欠かせず、立木の本数や樹高も、調査員が現地で測ります。林業従事者は令和2年に4万4千人まで減り、65歳以上の割合は25%で、全産業の15%より高い値です。

他にも、公図(法務局にある土地の図面)の精度不足、境界に詳しい住民の不在、マツ枯れやナラ枯れ、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 地籍調査国土調査法にもとづき、主に市町村が土地の区画ごとに所有者・地番・用途を調べ、境界の位置と面積を測量する調査である。結果は登記所へ送られ、登記簿に反映される。

精密林業計測の強み|「森林境界明確化」を研究

精密林業計測が「森林境界明確化」を研究|現在は、ドローンとAIで境界の推測を提供|AIで林相区分図・を自動作成/ドローンで木を・1本ずつ計測

AIで林相区分図を自動作成

山林の公図は精度が低く、地籍調査が進まない原因の一つとされています。

同社は、ドローンで撮影した最新の空中写真に、尾根や谷の起伏を視覚化した微地形表現図過去の空中写真を重ね、境界の候補を描き出します。森林の手入れは持ち主ごとに行われることが多いため、樹種や木の高さの違いが境目の手がかりになります。この違いをAIが画像から読み取り、林相区分図(樹種や樹高の違いで森林を区切った図)として自動で描き分ける仕組みです。持ち主は現地に行かずに集会所などで境界を確かめられるため、現地で立ち会う負担が減ります。

ドローンで木を1本ずつ計測

人が歩いて木を測る調査では、広い森林の資源量を細かく把握するのに時間と労力がかかります。

同社は、産業用ドローンに載せたレーザセンサで森林を上空から測り、3D点群(位置の情報を持つ無数の点の集まり)を得ます。そこから下草や重なる枝葉の影響を除き、樹冠(葉が茂る木の上部)を1本ずつ切り分けて樹高を求め、幹の太さと材積(木材としての体積)を計算式で推定します。これまで1本ずつの検出が難しかった落葉広葉樹も、対象の一つです。木1本ごとの資源量をもとに間伐や伐採の計画を立てやすくなり、調査の負担の軽減が期待されます。

FrontJournalの解説
  • 林相区分図樹種や樹高の違いによって、森林をまとまりごとに区切って示した図である。森林の手入れは持ち主ごとに行われることが多いため、林相の境目は所有の境界を推測する手がかりになる。

森林境界明確化の未来|枯れた木の検出から流域ごとの整備へ

ドローンとAIの森林境界明確化が変える未来|枯れた木の検出から流域ごとの整備へ|衛星画像で・枯れた木を検出/森林データを・住宅建築に活用/流域ごとの・境界明確化を目指す

衛星画像で枯れた木を検出

同社は2017年度から5年間、信州大学とともにJAXA(宇宙航空研究開発機構)の委託による実証実験に参加し、人工衛星の画像から被害木を見つける手法を確かめました。伊那市のマツ枯れと秋田県仙北市のナラ枯れを対象に、地球観測衛星「だいち3号」を想定して既存の衛星データを加工した画像から、被害木の地図を作成しています。人工衛星の画像から、被害を広い範囲で抽出できることが実証されました。地上の調査で見落としやすい被害も、広く把握できるようになると期待されます。

森林データを住宅建築に活用

森林のデータは、地域の木材で住宅を建てる仕組みにも使われます。同社は信州大学などと、建築と森林のデータをつなぐ共同研究「ドローンtoハウジング」を進めています。建築側の需要と森林側の供給をデジタル技術で結び付け、森林を木材の倉庫に見立てて、注文に応じて供給する受注生産の実現が目標です。木材の歩留まり(原木から製品になる割合)と流通を改善し、地域の木材で住宅を建てやすくすることを目指しています。

流域ごとの境界明確化を目指す

同社は、流域(川に水が集まる範囲)ごとに森林境界明確化を効率よく進める仕組みを目指しています。この取り組みは、市町村や林業事業体と連携して進める計画です。境界の確認と同時に資源の情報を集め、施業計画(伐採や植林の予定)の作成につなげます。手入れの行き届かない森林が減り、土砂災害を防ぐ働きの回復が期待されます。

会社概要|精密林業計測株式会社の事業内容・設立背景

信州大学の計測技術から創業

精密林業計測株式会社は、2017年5月10日に設立されました。信州大学農学部の加藤正人教授が開発した森林の計測・データ解析の技術を、林業の現場に広めることが設立の目的です。2018年6月には、第1回の信州大学発ベンチャー認定を受けています。現在は加藤正人氏が代表取締役を務め、長野県伊那市に本社を置いています。

SBIR採択と共同研究の受賞

2024年度には、ドローンとAIを使った流域単位の森林境界明確化の概念設計が、内閣府のSBIR(スタートアップの研究開発を国が支える制度)による「SBIR推進プログラム」フェーズ1に採択されました。共同研究「ドローンtoハウジング」は、ウッドステーション、森林連結経営、信州大学農学部 森林計測・計画学研究室とともに「ウッドデザイン賞2022」を受賞しています。受賞はソーシャルデザイン部門のコミュニケーション分野です。

森林計測と境界明確化の事業

同社の事業は、森林計測、データ解析、森林境界明確化のサービスで構成されています。森林計測では、ドローンによる写真計測とレーザ計測に加え、地上に据え置くレーザや持ち運べるレーザで森林の中からも点群を取得します。データ解析では、立木の位置・樹種・樹高・推定材積などの単木情報を、地図データとExcel形式のファイルで納品する仕組みです。マツ枯れ・ナラ枯れの被害木は、位置と本数の特定が対象です。国土交通省の測量業者登録を受けており、長野県SDGs推進企業にも登録されています。

会社情報

会社名精密林業計測株式会社(Precision Forestry Measurement Co., Ltd./PreFore)
所在地〒396-0041 長野県伊那市西箕輪7200-27 inadani sees内
設立2017年5月10日
代表代表取締役:加藤 正人
資本金4,795.7万円(資本準備金を含む)
事業森林計測サービス。データ解析サービス。森林境界明確化サービス。測量業登録:第(1)-37774号(国土交通省/関東地方整備局)。長野県SDGs推進企業
技術領域ドローン写真計測・ドローンレーザ計測・地上レーザ計測による森林の3D点群取得。AIによる林相区分図の作成。単木情報解析。病虫害被害木の検出
連携信州大学 学術研究・産学官連携推進機構。共同研究「ドローンtoハウジング」(ウッドステーション・森林連結経営・信州大学農学部 森林計測・計画学研究室)
採択内閣府「SBIR推進プログラム」(連結型)フェーズ1(2024年度)。「ウッドデザイン賞2022」受賞(共同研究)
URLhttps://www.prefore.org/

編集後記|FrontJournal編集部より

森林の境界という、地図の上では見えにくい課題に、ドローンとAIで向き合っている会社です。空から撮った画像の中に、持ち主ごとの手入れの違いが境目として残っているという発想が印象に残りました。持ち主の立ち会いという現場の負担に、計測データで答えた成果だと感じます。

大学の研究室で育った解析の技術が、集会所で持ち主が自分の森を確かめる場面にまでつながっている点に、この会社の価値があります。境界の確認と資源の計測を1つの会社で担えることも、自治体や森林組合の実務に合った強みです。ドローンで森林を解析する取り組みとしては、DeepForest Technologiesの記事もあわせて読むと、分野の広がりがよく分かります。

境界と資源の情報がそろった森林が、次の世代へどう手渡されていくのかを楽しみにしています。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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