2026.09.21 京都大学 元発表:2026.09.18

京都大学ら、塩基編集による遺伝性運動ニューロン疾患の治療可能性を実証

ニュース紹介

「運動ニューロン疾患に対する塩基編集治療の可能性を実証―患者さん由来神経筋オルガノイドとマウスで効果―」

京都大学iPS細胞研究所理化学研究所バイオリソースセンターの今村恵子氏、井上治久氏らの研究グループは、近位筋優位型遺伝性運動感覚ニューロパチーであるHMSN-Pの原因となる遺伝子変異を、一塩基単位で修正する塩基編集による治療法を開発し、その効果を調べたと発表しました。HMSN-PはTFG遺伝子のP285L変異で起こる希少な遺伝性神経疾患で、現在、病気の進行そのものを抑える治療法は確立していません。塩基編集システムをアデノ随伴ウイルスベクターに搭載し、病態を再現したモデルマウスの脊髄に投与したところ、運動神経軸索の減少の抑制、運動機能の改善、生存期間の延長が認められました。患者さん由来のiPS細胞から作製した神経筋オルガノイドでは、TFGタンパク質の異常な凝集と神経細胞死が減少しました。成果は2026年9月4日に国際科学誌Molecular Therapy Advancesにオンライン掲載されています。

出典:京都大学iPS細胞研究所 2026年9月18日 ニュース/掲載誌:Molecular Therapy Advances
https://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/news/260918-100000.html

FrontJournalの解説

変異した一塩基を直す塩基編集

HMSN-Pは、成人期に発症して手足の筋肉の力が徐々に低下する遺伝性の神経疾患です。変異型のTFGタンパク質運動ニューロンや感覚ニューロンにたまることが原因と考えられています。正常なTFG遺伝子は神経細胞で必要なため、変異型の働きを単に抑えるだけでは正常な働きまで損なうおそれがあります。研究グループは、DNAを切断せずに塩基を別の塩基へ変換できる塩基編集で、変異した一塩基だけを修正する方法を選びました。

①3種類の酵素から最適なものを選定

研究グループは、HMSN-P患者さん由来のiPS細胞で、3種類のアデニン塩基編集酵素であるABE7、sABE7、ABE8eの性能を比較しました。その結果、ABE8eが最も高い修正効率を示しました。解析した範囲では、設計上意図していない部位に問題となると考えられる明らかな編集は検出されませんでした。この結果をもとに、ABE8eの塩基編集システムを搭載したアデノ随伴ウイルスベクターを構築しました。

②マウスとオルガノイドの両方で効果

3か月齢のHMSN-Pモデルマウス腰部脊髄に、軟膜下投与でこのベクターを投与しました。治療群では、運動神経軸索の減少が抑えられ、運動機能の改善と生存期間の延長がみられました。アストロサイトとミクログリアの病的な活性化も、治療群ではみられませんでした。患者さん由来の神経筋オルガノイドでも、TFGタンパク質の凝集と神経細胞死が減少しました。

編集部からひとこと

今回の成果は動物モデルと培養細胞モデルを使った基礎研究の段階で、現時点で患者さんに使用できる治療法ではありません。臨床応用には、安全性の評価長期的な効果と副作用の検証が必要とされています。一塩基の変異が原因となる他の遺伝性神経疾患への応用も期待されており、詳細は京都大学iPS細胞研究所の公式発表および掲載論文をご参照ください。

FrontJournal編集部

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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