2026.08.26 科学技術振興機構(JST) 元発表:2026.08.25

京都大学ら、ナノ孔の周期構造で金属の疲労耐性を約2倍に向上

ニュース紹介

「常識を覆す、疲労の蓄積を抑える材料設計~ナノ構造化により軽く壊れにくい金属を実現~」

京都大学大学院エネルギー科学研究科の澄川貴志教授、杉坂浩太博士課程学生を中心とし、東京大学生産技術研究所の梅野宜崇教授、山梨大学大学院総合研究部の島弘幸教授、名古屋大学未来材料・システム研究所の荒井重勇特任准教授らの研究グループは、ナノメートルサイズの孔を周期的に配置した金属メタマテリアルを作製し、転位の枯渇によって疲労耐性が高まる機構を明らかにしたと発表しました。相対密度を約半分に抑えながら、約2倍の疲労耐性を示すことを引張圧縮疲労試験で実証しています。

出典:科学技術振興機構(JST) 2026年8月25日 プレスリリース(掲載誌:Advanced Materials/DOI: 10.1002/adma.74447)
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20260825/index.html

FrontJournalの解説

金属疲労と材料設計の基礎

金属疲労とは、繰り返し加えられる力によって金属内部に少しずつ損傷が蓄積し、静的な強度よりもはるかに低い力で破断する現象です。橋梁・航空機・自動車・産業機械など、繰り返し荷重を受ける構造物の寿命を決める要因として長く研究されてきました。従来の材料設計では、疲労き裂の起点になりやすい孔(ボイド)や欠陥はできる限り減らすことが基本方針とされてきました。

金属を薄く軽くするとほとんどの場合、疲労耐性は下がります。そのため航空・宇宙・輸送機器などの分野では、「軽くしたい」と「壊れにくくしたい」を同時に満たす材料の開発が長年の課題となってきました。

①孔を「避ける」から「積極的に配置する」への転換

今回の研究の特徴は、材料内部にナノメートルサイズの孔を周期的に配置するという発想です。孔を減らすのではなく、意図的に規則正しく配置することで金属の変形挙動を制御しました。研究グループは、この構造を持つ金属単結晶に引張と圧縮を繰り返し加える疲労試験を行い、相対密度が約半分に抑えられているにもかかわらず、約2倍の疲労耐性を示すことを確認しました。孔を減らす方向に進んできた材料設計の考え方に、新しい選択肢を示す成果です。

②「転位の枯渇」で疲労が抑えられる仕組み

金属が繰り返し変形すると、内部の転位(結晶格子のずれ)が動き回り、集まり、絡み合うことで損傷が蓄積していきます。研究グループは、ナノメートル間隔で孔を配置すると、その表面で転位が消滅しやすくなり、内部に転位が溜まりにくい「転位の枯渇」状態が保たれることを明らかにしました。転位が動くたびに消えていくため、繰り返し荷重を受けても損傷が積み重なりにくくなります。掲載誌はAdvanced Materialsで、論文タイトルは「Nano-Architected Metallic Metamaterial With Enhanced Fatigue Resistance via Dislocation Starvation」です。

編集部からひとこと

本発表は基礎研究段階の成果であり、具体的な応用製品や実用化時期には言及されていません。ただし、軽くしても疲労耐性が落ちない材料設計の指針は、輸送機器や医療デバイスなど「軽さ」と「壊れにくさ」を両立したい分野で参照される可能性があります。詳細な実験データや理論解析は、掲載誌および京都大学・JSTの公式発表を参照してください。

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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