2026.08.22 岡山大学・京都大学 元発表:2026.08.20

岡山大学ら、分子構造から炭素材料を作り分ける設計原理を発見

ニュース紹介

「有機物を高機能カーボンへ ~分子構造から読み解く炭素化の設計原理~」

岡山大学学術研究院先鋭研究領域(異分野基礎化学研究所)の仁科勇太卓越教授と、京都大学大学院工学研究科化学理工学専攻の生越友樹教授らの研究グループは、フェノール樹脂のモデル分子である「ピラーアレーン」を用い、分子の周囲に付ける官能基を変えるだけで、カーボンになるまでの反応経路と、できあがるカーボンの構造・機能が大きく変わることを明らかにしたと発表しました。同じ分子骨格から多孔質カーボンや層状カーボンといった異なる構造が生成され、ガス吸着や電気伝導の特性も変化することを実証しています。フェノール樹脂やリグニン、廃プラスチック由来の成分など、これまで十分に活用できていなかった有機物を、吸着材や導電材といった高機能カーボンへ変換する資源循環技術の設計指針として期待されるとしています。研究成果は2026年8月19日付で学術誌「Small」に掲載されました。

出典:科学技術振興機構(JST)・岡山大学・京都大学 2026年8月20日 プレスリリース
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20260820-3/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

木材、樹脂、廃プラスチックといった有機物を高温で加熱すると、水素や酸素などが抜けてカーボン(炭素材料)が残ります。この工程は炭素化と呼ばれ、活性炭や電極材、ガス吸着材など幅広い用途の材料製造に使われてきました。

ただし、原料の分子構造と、できあがるカーボンの構造・機能との関係は、実験の積み重ねから経験的に整理されてきた部分が大きく、原料設計から狙った材料を作り分ける手がかりは限られていました。未利用有機物の資源循環を進める上で、この設計指針の確立が課題となっています。

①モデル分子「ピラーアレーン」で反応経路を可視化

研究グループは、フェノール樹脂に共通する分子構造をもつ環状化合物「ピラーアレーン」をモデル分子に選びました。ピラーアレーンは5つの芳香環が柱状に連なった形をしており、外側に付ける置換基(官能基)を系統的に変えられます。

置換基の違いにより、加熱時の反応経路がどのように変わり、その結果として生成するカーボンの構造がどう変化するかを分子レベルで解析しました。同じ骨格から出発しても、置換基の設計によって多孔質カーボンや層状カーボンといった異なる構造が生成することを示しています。

②できあがるカーボンの機能を作り分け

生成物は構造だけでなく機能面でも違いを示しました。多孔質のカーボンはガス吸着に向いた性質を、層状のカーボンは電気を通す性質を発揮しています。分子設計を通じて、目的の用途にあわせたカーボン材料を狙って作り分ける道筋がひとつ具体化されたことになります。

研究グループは、この設計原理がフェノール樹脂やリグニン、廃プラスチック由来成分など未利用有機物の資源循環技術の指針になると説明しています。成果は学術誌「Small」に掲載されました(DOI:10.1002/smll.75161)。

編集部からひとこと

炭素材料の性能は経験と職人的な工夫で決まる面が長らく残ってきました。今回はモデル分子で反応経路を追い、置換基から生成物の構造・機能までを結び付けています。廃プラスチックや木質バイオマスなど、原料の種類が広いほど設計の指針は効いてきます。実用材料への展開に向けて、今後どのような分子ライブラリでこの指針が使えるかが注目点になります。

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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