2026.08.17
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東北大学・島根大学・九州大学・大阪大学・JAMSTEC
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元発表:2026.08.04
東北大ら、鉄・クロム硫化物で磁化補償温度の制御に成功
ニュース紹介
「空孔の規則度制御でフェリ磁性体の補償温度をコントロール」
東北大学金属材料研究所の梅津理恵教授らの研究グループは、島根大学、九州大学、海洋研究開発機構(JAMSTEC)、産業技術総合研究所、大阪大学、株式会社アカデメイアと共同で、鉄・クロム硫化物((Cr,Fe)7S8)の製造プロセスを最適化し、フェリ磁性体の補償温度を制御することに成功したと発表しました。研究グループは、1323K および 1423K という高温域から急冷することで、不純物であるスピネル相の析出を抑えた単相を得ました。急冷温度を変えると結晶内の原子空孔の規則度をナノレベルで制御でき、1323Kから急冷した試料では磁化がゼロになる磁化補償温度が約200Kだったのに対し、1423Kからの場合は約90Kと100K以上変化したとしています。また1323Kから急冷した試料は5Kにおいて38kOeの磁気保磁力を示しました。第一原理計算(Akai-KKR)による電子状態の計算では、本物質が片方のスピンの電気伝導性のみをほぼ100%通すハーフメタル型電子状態を有することが示されたとしています。成果は2026年8月4日に学術誌 Small にオンライン掲載されました。
出典:東北大学・九州大学 2026年8月4日 プレスリリース
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/67070/26_0804_02.pdf
FrontJournalの解説
この研究分野について
スピントロニクスは、電子の「電荷(電気の流れ)」だけでなく「スピン(電子が持つ磁石としての性質)」も同時に利用する技術です。磁気ストレージや半導体デバイスの大容量化・省電力化に向けて研究が進んでいます。
素子を高い密度で並べると、隣どうしが磁気的に干渉して誤動作する問題が出てきます。そのため、外に漏れる磁場のもとになる全体の磁化がほぼゼロでありながら、スピンの向きは強くそろっている材料が求められてきました。
①磁化がゼロになる温度をずらせるか
補償型フェリ磁性体は、向きの異なる2種類の磁気が打ち消しあい、ある温度で全体の磁化がゼロになる材料です。この温度を磁化補償温度と呼びます。使う温度帯に合わせて補償温度を調整できることが、実用上の条件になります。
研究グループは鉄・クロム硫化物に着目し、焼結と急冷の条件を最適化しました。1323Kおよび1423Kという高温域から急冷することで、不純物であるスピネル相の析出を抑えた単相を得たとしています。
②急冷温度で空孔の並び方を変える
急冷する温度を変えると、結晶内の原子の隙間(空孔)の規則度をナノレベルで制御できることが分かったと報告されています。それに伴い磁化補償温度も動き、1323Kからの急冷で約200K、1423Kからでは約90Kと100K以上の差が生じました。
また1323Kから急冷した試料は、5Kにおいて38kOeの磁気保磁力を示したとしています。第一原理計算では、片方のスピンの電気伝導性のみをほぼ100%通すハーフメタル型電子状態を持つことが示されました。研究グループは、鉄・クロム・硫黄という豊富な元素の組み合わせで実現した点を成果の要点として挙げています。
編集部からひとこと
材料の性能は組成で決まると考えられがちですが、今回は同じ組成のまま熱処理の温度だけで補償温度を100K以上動かしています。製造プロセスが設計変数になるという意味で、量産を考えるうえでも扱いやすい成果です。希少元素を使わない点も、供給面の制約が小さいという評価につながります。
本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。
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