クアドリティクス|京都大学・熊本大学発の「てんかん発作予知」のプログラム医療機器を開発するディープテック企業

クアドリティクス株式会社

クアドリティクス「てんかん発作予知」を研究|研究領域=発作の兆候を事前に知らせる技術/強み=心拍の揺らぎを機械学習で解析/将来性=発作の前の備えを目指す

企業紹介|クアドリティクスとは?

発作の前に体の変化を捉え、患者に知らせる技術として研究が進む「てんかん発作予知」。クアドリティクス株式会社は、その社会実装を目指す、京都大学・熊本大学発の医療機器系ディープテック企業です。ウェアラブル心電計で測った心拍の揺らぎをアプリで解析し、発作の兆候を知らせるプログラム医療機器(ソフトウェアとして働く医療機器)を、薬事承認に向けて開発しています。

キーワード「てんかん発作予知」

てんかん発作予知は、発作が起こる前に体に現れる変化を捉え、発作が近いことを知らせる技術です。同社が手がかりにするのは心拍の間隔の揺らぎで、この揺らぎには自律神経(心拍や呼吸を無意識に調整する神経)の働きの変化が表れます。発作の前に知らせが届けば、患者は自ら安全を確保する対策を取れるようになります。

市場課題|予測できない発作と予兆を知らせる機器の不足に課題

現状のてんかん発作の課題|現状は、予兆を知る手段が乏しく事故の不安が続く/約3割は薬で発作を抑えきれない/予兆を知らせる機器が乏しい

約3割は薬で発作を抑えきれない

てんかんの患者のうち、薬で発作を完全には抑えられない人は約3割です。国内の患者は約100万人と推計され、そのうち薬が効きにくい人は、予測できない発作と隣り合わせの生活を続けています。発作がいつ起こるか分からない状態が続けば、転倒によるけがや料理中のやけどの危険が消えず、行動範囲や社会参加が狭まる恐れがあります。

予兆を知らせる機器が乏しい

発作の直前に予兆を検出して知らせる、体への負担が少ない機器による予知は、まだ社会実装されていないとされます。そのため患者と家族にとって、交通事故や浴槽での溺水といった危険は常に身近な問題です。このままでは、発作に伴う事故や受傷の不安が続く恐れがあります。

他にも、1年以上発作がない患者にも残る再発への不安、薬が効きにくい難治性てんかん、人前で発作を起こす恐怖、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • てんかんけいれんに代表される突発的な発作を繰り返す、脳の神経の病気。脳の神経細胞に突然起こる激しい電気的な興奮が発作の原因となる。人口の約1%が発症するとされ、多くは薬で発作を抑えられる。

クアドリティクスの強み|「てんかん発作予知」を研究

クアドリティクスが「てんかん発作予知」を研究|今後は、心拍の解析で発作前の備えが可能に/心拍の揺らぎで発作を予知/心電計とスマホで常時解析

心拍の揺らぎで発作を予知

心拍の揺らぎから発作を予知する試みでは、従来の解析手法だと平常時と発作前の差が分かりにくく、誤報が多くなる点が課題でした。

同社の予知技術の中心は、ウェアラブル心電計で測った「心拍変動」を機械学習で解析する仕組みです。心拍変動は自律神経の働きを映す指標で、体の細やかな変化を反映します。山川俊貴氏(現・同社CTO)らの研究では、複数の指標をまとめて監視する統計の手法で心拍変動を分析し、平常時と発作前の差を見分けやすくして誤報を抑えました。兆候が事前に分かれば、患者が発作の前に安全を確保し、けがや事故の危険を減らせるようになることが期待されます。

心電計とスマホで常時解析

脳の活動から発作を予知する方法には、持ち運びのできない大型の脳波計や、頭に埋め込む小型装置を用いるものがあります。

同社が開発するのは、ウェアラブル心電計とスマートフォンだけで発作を予知する仕組みで、現在は薬事承認前の段階です。心電計が測った心拍のデータをスマートフォンのアプリがその場で解析し、心拍変動を常に監視します。兆候を検知したら発作の数分前に本人へ警告を出すことを目指しており、通知は周囲の人にも届けられる設計です。大型の装置を持ち歩いたり、頭に装置を埋め込んだりせずに済むため、患者の負担を抑えながら、普段どおりの生活の中で発作に備えられる仕組みを目指しています。

FrontJournalの解説
  • 心拍変動心臓が拍動する間隔が、1拍ごとにわずかに揺れ動く現象。自律神経の働きを反映するため、その解析は循環器の病気やストレスの診断に用いられている。

未来|てんかん発作予知が患者の安全な暮らしを支える

心拍によるてんかん発作予知が変える未来|国内治験と海外での承認で実用化を目指す/国の優先審査の対象に指定/国内治験と豪州承認へ準備/発作を恐れない暮らしを目指す

国の優先審査の対象に指定

「心拍変動解析に基づくてんかん発作警告機」(仮称)は、2023年3月に厚生労働省の「プログラム医療機器に係る優先的な審査等」の対象品目に指定されました。この制度は、画期性や医療上の有用性などの要件を満たすプログラム医療機器を優先して審査するものです。同品目は、この制度で最初に指定された3品目の1つです。同社は同年12月に第二種医療機器製造販売業許可を取得し、クラスⅡ(人体へのリスクが比較的低い区分)までの医療機器を製造販売できる体制を整えました。

国内治験と豪州承認へ準備

クアドリティクスは、国内での治験(人で安全性と有効性を確かめる試験)と、海外での薬事承認に向けた準備を進めています。オーストラリアでは子会社を設立し、現地の大学や病院と臨床研究を進めています。同国の薬事承認と、「NDIS」(オーストラリアの障害者保険制度)による保険償還(公的保険による費用の支払い)を足がかりに、2028年の上市(製品として発売すること)が目標です。実用化されれば、発作を抑えきれない患者が、発作の前に身の安全を確保しやすくなります。

発作を恐れない暮らしを目指す

同社が目指すのは、「人類がてんかん発作を恐れず暮らせる未来を創造する」というビジョンです。アメリカでも2030年の展開に向けた準備中です。将来は、予知の通知と、発作前に服用する超即効型の抗てんかん薬を組み合わせ、発作そのものを未然に防ぐ構想も掲げています。発作に前もって備えられれば、患者が社会生活への支障を減らし、より自分らしく生活できるようになることが期待されます。

会社概要|クアドリティクス株式会社

京都大学と熊本大学から創業

クアドリティクスは、臨床医学・情報学・電子工学の研究者が2012年に始めた研究をもとに、2018年2月に京都大学・熊本大学発のベンチャーとして設立されました。創業の中心となったのは、京都大学のAIデータ解析の専門家と熊本大学の医用工学の専門家です。共同創業者で最高技術責任者(CTO)の山川俊貴氏は、熊本大学大学院先導機構の准教授です。

採択と資金調達

2021年には、名古屋大学を代表機関とする「心拍変動解析によるてんかん発作予知AIシステムの研究開発」が、AMED(日本医療研究開発機構)の事業に採択されました。同社の立場は、研究の一部を受け持つ分担機関です。2024年9月にはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「ディープテック・スタートアップ支援事業」に採択され、最大3億円の助成を受けます。2025年5月にはシリーズA(事業を本格化させる段階の資金調達)で3億円の第三者割当増資(特定の投資家に新株を発行する資金調達)を実施し、同社はNEDOの助成と合わせ、今回のシリーズAの総調達額を6億円としています。

医療機器開発を軸に事業展開

事業の柱は、医療機器とソフトウェアの開発、医療サービス、データ解析に関するコンサルティングです。心拍変動の解析を応用し、症状が出る前の早期対処や自己管理を支えるサービスの研究も進めています。本社は京都市下京区にあり、神戸市とオーストラリアのメルボルンにも拠点を置いています。

会社情報

会社名クアドリティクス株式会社(Quadlytics Inc.)
所在地京都府京都市下京区中堂寺南町134 ASTEM棟7階(ほか神戸オフィス、メルボルンオフィス=豪州子会社 Quadlytics Pty Ltd)
設立2018年2月
代表代表取締役 林康平
調達2025年5月 シリーズAで3億円(引受先:ライフタイムベンチャーズ、京都キャピタルパートナーズ、クロステックベンチャーズ、個人投資家)。NEDOの助成(最大3億円)と合わせ、同社発表の総調達額は6億円
事業医療機器の開発、ソフトウェアの開発、医療サービス及びデータ解析に関するコンサルティング。開発品は「てんかん発作警告器」(仮称、一般的名称:てんかんアラーム・薬事承認前)。第二種医療機器製造販売業許可(2023年12月、許可番号 28B2X10042)
技術領域心拍変動(HRV)解析、機械学習による異常検知、ウェアラブル心電計とスマートフォンアプリによるてんかん発作予知
連携モナシュ大学・アルフレッド病院(豪州での臨床研究)。日本光電工業(2026年「MedTech ROUND」でマッチング)
採択AMED 医工連携・人工知能実装研究事業(2021年・分担機関)。厚生労働省「プログラム医療機器に係る優先的な審査等」の対象品目(2023年3月)。NEDO ディープテック・スタートアップ支援事業(2024年)。Mayo Clinic Platform_Accelerate/Mayo Clinic Innovation Exchange。京都市 京都スタートアップ・海外展開支援プロジェクト(2026年)。Plug and Play Japan「Summer 2026 Batch」(2026年)。J-StarX UK HealthTech Launchpad フェーズ1(2026年)
URLhttps://www.quadlytics.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

てんかん発作予知は、日常生活の中でどれだけ負担なく使えるかが普及の鍵を握る技術です。心拍を使う予知では、誤報の多さが実用化の壁でした。クアドリティクスは、心拍の揺らぎと機械学習を組み合わせ、この壁を越えようとしている会社です。

興味深いのは、情報学と医用工学という異なる分野の研究者が、一つの病気の課題に向けて手を組んだ点です。同じ熊本大学からは、体に貼るウェアラブルエコーを開発するサーモンテックのような企業も生まれています。予知の技術が患者の手元に届く日に向けた、同社の今後の歩みに注目していきます。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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