超臨界技術センター株式会社|有機溶媒の代わりに超臨界CO2で成分を取り出す「超臨界CO2抽出」を研究する名古屋大学発の企業

超臨界技術センター株式会社

超臨界技術センター「超臨界CO2抽出」を研究|研究領域=CO2を溶媒に成分を抽出/強み=CO2と水だけでデカフェ加工/将来性=素材やリサイクルに応用

企業紹介|超臨界技術センターとは?

高い圧力をかけた二酸化炭素で、植物や食品から溶媒を残さずに成分を取り出す「超臨界CO2抽出」。超臨界技術センター株式会社は、その社会実装を目指す、名古屋大学発の化学系ディープテック企業です。食品・化粧品・化学品などのメーカーから依頼を受けて抽出の試験から生産までを担い、コーヒー豆や茶葉のカフェインを取り除くデカフェ加工も手がけています。

キーワード「超臨界CO2抽出」

「超臨界CO2抽出」は、温度と圧力を臨界点(液体と気体の区別がなくなる境目)以上に保った二酸化炭素を溶媒にして、原料から目的の成分を溶かし出す方法です。圧力を下げると二酸化炭素は気体に戻るため、抽出物に溶媒が残りません。欧米では1980年代からコーヒー豆のデカフェに使われてきました。

市場課題|有機溶媒の抽出は後処理が負担

現状の成分抽出とデカフェの課題|現状は、溶媒の分離と廃液処理が負担、デカフェは輸入中心/溶媒の分離と廃液処理が負担/輸入デカフェは鮮度に課題

溶媒の分離と廃液処理が負担

有機溶媒で成分を取り出す方法は、溶媒の分離と廃液の処理が欠かせず、製品に溶媒がわずかに残る懸念もあります。植物や食品から有用な成分を取り出す工程では、ヘキサンやエタノールなどの有機溶媒が広く使われてきました。口や肌に触れる食品や化粧品の製造ほど、溶媒の残留と廃液処理への対応が重くなります。

輸入デカフェは鮮度に課題

国内で流通するデカフェのコーヒー豆は、これまで海外でカフェインを取り除いた輸入品が占めてきました。海外で処理された豆は輸送に時間がかかり、どの工程をどこで経たのかも追いにくくなります。国内での処理を求める声は多くありましたが、鮮度と履歴の分かるデカフェ豆は届けにくい状況でした。

他にも、脱炭素に向けた排出CO2の使い道の不足、食品残渣など未利用資源の廃棄、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 有機溶媒ほかの物質を溶かす性質をもつ、炭素を含む液体の総称である。ヘキサンやエタノールなどが代表例で、油分や香り成分を取り出す抽出工程に広く使われる。

超臨界技術センターの強み|「超臨界CO2抽出」を研究

超臨界技術センターが「超臨界CO2抽出」を研究|現在は、溶媒が残らない抽出を提供/減圧だけで溶媒を分離/CO2と水だけでデカフェ

減圧だけで溶媒を分離

有機溶媒による抽出では、取り出した成分から溶媒を除く工程が欠かせず、廃液も発生します。

同社が使うのは、31.0℃・7.37MPa(約73気圧)の臨界点を超えた二酸化炭素です。この状態の二酸化炭素は、気体のように原料のすき間へ入り込み、液体のように成分を溶かし出します。抽出を終えて圧力を下げると二酸化炭素は気体に戻って成分から離れるため、加熱や蒸留で溶媒を除く工程が要りません。ラボ用の小型装置から容量30Lのパイロット装置(量産前の試作用装置)まで、処理規模を段階的に拡大して試せる設備も備えています。溶媒が残らず廃液も抑えた方法で、食品や化粧品の原料を製造できるようになります。

CO2と水だけでデカフェ

国内のデカフェ豆は、薬品を使う方法を含め、長く海外での加工に任されてきました。

同社の「GREEN DECAF PROCESS」(グリーンデカフェプロセス)は、水と超臨界CO2だけでカフェインを取り除く方法です。水を含ませた生豆や茶葉に超臨界CO2を接触させてカフェインを溶かし出し、乾燥させて仕上げる工程です。使い終えた二酸化炭素は工場内で循環させ、再び使います。カフェインを除く工程で、クロロゲン酸(コーヒーに多いポリフェノールの一種)がほとんど減らないことも、研究で確かめられた特徴です。薬品の残留を心配せずに、風味を保ったデカフェを国内で加工できるようになります。

FrontJournalの解説
  • 臨界点物質の温度と圧力をある値以上にすると、液体と気体の区別がなくなる境目を指す。二酸化炭素の臨界点は31.0℃・7.37MPaで、これを超えた状態を超臨界流体と呼ぶ。

未来・応用|食品から素材・リサイクルへ展開

超臨界流体の技術が変える未来|食品から素材・リサイクルへ応用が広がる/国内加工のデカフェが流通/素材やリサイクルに応用/CO2で素材製造を目指す

国内加工のデカフェが流通

超臨界CO2による国内加工のデカフェは、すでに実用化されています。同社は2019年に三重県桑名市へ超臨界デカフェのプラントを導入し、アラビカ種のコーヒー生豆を7kgから受け付けています。2021年から2025年の5年間で、コーヒーのデカフェは247件、茶のデカフェは88件を手がけました。国内で処理するため、コーヒーや茶の事業者は、どの豆がいつ加工されたかをたどれるデカフェを選べるようになりました。

素材やリサイクルに応用

超臨界流体の用途は、食品の抽出から素材とリサイクルの分野へ広がりつつあります。デカフェとは別に集計した同じ5年間の受託試験では、材料が159件、リサイクルが136件と、食品・飲料・健康食品の77件や香粧品の82件を上回りました。2022年と2025年には、高温高圧の水で有機物を分解・変換する水熱反応リアクターを導入しました。廃棄物から有用な素材を回収する試験も、社内で行える体制です。

CO2で素材製造を目指す

同社は、工場から回収した二酸化炭素を溶媒として使う工程を、食品から素材の製造へ広げることを目指しています。現在も抽出に使う二酸化炭素には、石油化学プラントや製鉄工場から排出されたものを回収し、食品添加物グレードに精製したものを充てています。その先に掲げるのが、超臨界技術と社会課題を結びつける「超臨界プラットフォーム」の構想です。排出されたCO2を製造工程の溶媒として繰り返し使う場面が、食品以外の分野にも広がることが期待されます。

会社概要|超臨界技術センター株式会社

名古屋大学の研究から設立

超臨界技術センター株式会社は、2013年9月に三重県桑名市で設立されました。超臨界流体技術に約40年携わってきた福里隆一博士と、名古屋大学大学院の後藤元信教授(現・名古屋大学名誉教授、同社取締役)の発案がきっかけです。2014年に桑名市で事務所兼研究棟が完成し、2017年には名古屋大学発ベンチャーの称号を受けました。

デカフェ技術で2つの賞

超臨界二酸化炭素を用いたコーヒー豆のデカフェ技術の工業化は、2020年に分離技術会の「技術賞」を受けました。2024年には、コーヒー生豆と茶葉のデカフェ技術の確立と実用化により、新化学技術推進協会の「グリーン・サステイナブル ケミストリー賞」でベンチャー・中小企業賞を受賞しています。研究面では東北大学や熊本大学、タイのチュラロンコン大学などと開発連携を進めています。

技術相談から受託生産まで

同社の事業は、超臨界流体を使った技術相談、受託試験、受託開発、試作品製造、受託生産までを一貫して担う技術サービスです。無料の技術相談から始め、ラボ機での試験、パイロット装置での試作、量産へと段階的に進める流れです。自社で製造設備を導入したい企業には、設備の新設に向けた技術支援も行っています。高圧ガス製造保安責任者などの有資格者も社内にそろい、高圧設備を安全に運転できる体制です。

会社情報

会社名超臨界技術センター株式会社
所在地三重県桑名市大字和泉字ハノ割391番地3
設立2013年9月
代表田中 雅裕(代表取締役)
資本金1,000万円
事業超臨界流体技術を用いた受託開発、試作品製造、受託生産等の技術サービス。コーヒー豆・茶葉のデカフェ加工
技術領域超臨界CO2抽出、超臨界流体、水熱反応、微粒子製造
連携名古屋大学(名古屋大学発ベンチャー称号 第019号)。東北大学、熊本大学、チュラロンコン大学などと開発連携
採択2020年 分離技術会 技術賞。2024年 グリーン・サステイナブル ケミストリー賞 ベンチャー・中小企業賞
URLhttps://www.sctc.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

超臨界流体という言葉は、化学の教科書の片隅で見かける程度で、身近な技術だと感じる人は多くないかもしれません。しかし調べると、コーヒーや緑茶のデカフェという、毎日の一杯に直結する形ですでに使われていることに驚かされました。印象的だったのは、試験の依頼件数の内訳です。デカフェで知られる同社ですが、受託試験では材料やリサイクルの依頼が食品を上回っています超臨界流体の技術が、食品以外のものづくりの現場でも求められていることの表れだと感じました。

排出されたCO2を溶媒として生かす技術が、食品から素材まで広がっていく過程に注目したいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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