株式会社ライフモジュレーションは上肢の動きを測る電子ペグボードを開発する前橋工科大学発の企業

株式会社ライフモジュレーション

ライフモジュレーション「電子ペグボード」を研究|研究領域=上肢の動きを・電子ペグボードで測定/強み=タッチパネルで・動きを自動記録/将来性=リハビリ現場から・健康管理へ展開目指す

企業紹介|株式会社ライフモジュレーションとは?

腕や手指の運動を、機器に触れる動作を通じて数値化する「電子ペグボード」。株式会社ライフモジュレーションは、その社会実装を目指す、前橋工科大学発の医療機器系ディープテック企業です。電子ペグボード「PEGASUS K3100」を開発し、リハビリテーションの現場への提供を少しずつ着実に進めています。

キーワード「電子ペグボード」

「電子ペグボード」は、木製の穴とペグを使う従来のペグボード(作業療法で使われる訓練器具)に、モーションキャプチャとタッチパネルを組み合わせた機器です。腕や手指の動きを三次元で解析し、動作にかかった時間を自動で計測できる点が特徴です。上肢の運動機能を数値で捉える用途に使われます。

市場課題|高齢化で上肢機能訓練が増え、評価の記録に手間がかかる

現状の上肢機能評価の課題|現状は、目視での記録で評価にばらつきが生じる|検者がストップ・ウォッチで計測/目視での記録は・ばらつきが生じやすい

高齢化で訓練の場面が増加

日本では、高齢化に伴いリハビリテーションの需要が高まっています。総務省が2022年の敬老の日にちなみ公表した人口推計では、65歳以上人口は約3,627万人で、総人口の29.1%を占める規模です。高齢者が増えるほど、脳卒中などの後遺症による上肢機能の低下に対応する訓練の場面も増えていく見通しです。

評価は目視と手作業に頼る

上肢機能の代表的な検査は、検者の目視と手作業による記録に頼っています。パーデュー・ペグボード・テスト(手指の巧緻性を測る代表的な検査)などでは、検者がストップウォッチで時間を測り、動きの正確性を目視で記録する方法が広く使われています。検者ごとに記録の取り方が変わりやすいことが、複数回の検査を比べにくくしている一因です。

他にも、検者にかかる負担や、結果を他施設の記録と比べにくいこと、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • パーデュー・ペグボード・テスト1948年に考案された、ペグの抜き差しの速さと正確さを測る代表的な上肢機能検査。一定時間内の作業を検者がストップウォッチで計測し、点数化して評価基準値と比べる。

ライフモジュレーションの強み|「電子ペグボード」を開発

ライフモジュレーションが「電子ペグボード」を開発|今後は、タッチパネルで動きの記録が可能に|タッチパネルで・位置と時刻を記録/動きを三次元の・データとして解析

タッチパネルで動きを自動記録

従来のペグボード検査は、検者が目視とストップウォッチで動作を記録するため、同じ動作でも検者ごとに評価がばらつきやすいという課題がありました。

同社は、モーションキャプチャとタッチパネルを組み合わせた電子ペグボード「PEGASUS K3100」を開発しています。被験者がタッチパネルの上でペグを動かすと、触れた位置と時刻をセンサーが自動で記録します。動作の速さや正確性を、検者の目視に頼らず数値として残せる仕組みです。この仕組みにより、検者によって記録の取り方が変わりにくくなります。数値の記録が残ることで、同じ検査を複数回行っても、検者の技量に左右されず結果を比較できるようになります。

動きを三次元データで解析

紙の記録用紙では、動作の詳しい軌跡までは記録できず、検査結果の比較は主に合計時間に限られていました。

同社は、電子ペグボードで記録した動きを三次元のデータとして解析し、動作の軌跡や到達時間を自動で算出しています。軌跡のデータには、動作の途中で速度が落ちる位置なども含まれます。時間の計測も自動化されているため、検者が都度ストップウォッチで測る手間がかかりません。動きの軌跡と時間の両方が記録として残ることで、訓練の前後でどこが変わったかを具体的に把握できます。経過を数値で追えるようになれば、訓練の効果を確かめながら計画を見直しやすくなります。

FrontJournalの解説
  • モーションキャプチャ対象の動きをカメラやセンサーで捉え、位置や速度のデータとして記録する技術を指す。電子ペグボードでは、腕や手指の動きを三次元で解析する用途に使われる。触れた位置と時刻はタッチパネルが記録する。

電子ペグボードの未来|リハビリの現場から健康管理へ

電子ペグボードが変える上肢訓練の未来|運動計測の技術が健康管理へ広がる|特許技術をもとに・製品化を実現/健康チェックアプリ・など周辺製品を拡充/リハビリ以外の・現場へも展開目指す

レンタル提供で導入を後押し

現在は、電子ペグボード「PEGASUS K3100」を、販売のほかレンタル方式でもリハビリの現場へ提供しています。購入前に、必要な期間だけ機器を使えるため、施設側は導入の負担を抑えながら機器を試せます。大学の特許をもとに開発した機器を、実際の現場で使える形に仕上げた段階です。レンタルの実績を重ねることで、電子ペグボードを使った評価方法が現場に浸透しやすくなります。

周辺のアプリ・機器を拡充

同社は、電子ペグボードで培った運動計測の技術をもとに、周辺のアプリや機器の開発も進めています。2025年5月には、健康状態を確認できるアプリ「Machi-AI」を公開しました。同年6月には、ゲーム利用者向けのアプリ「確率共鳴ジェネレータ」も公開しています。上肢の運動計測にとどまらず、健康管理の分野などへ製品の幅を広げています。

リハビリ以外への展開を目指す

電子ペグボードで培った計測技術を、リハビリ以外の現場にも役立てることを、同社は目指しています。高齢化が進む国内では、施設や在宅での運動機能の把握に、同様の技術を生かせる場面が増える見込みです。同社は海外の大学との取引もあり、技術移転や製品展開を海外へ広げることも視野に入れています。上肢の動きを客観的な数値で捉える仕組みが広がれば、訓練の効果を確かめながら計画を見直せる現場が増えていきます。

会社概要|ライフモジュレーションの事業内容・設立背景

研究成果ベンチャーとして設立

株式会社ライフモジュレーションは、前橋工科大学の小田垣雅人准教授を代表として、2022年2月に設立されました。小田垣氏は、大学での研究を通じて、高機能な電子ペグボードの開発に取り組んできました。2017年には、その研究成果に対して日本福祉工学会から賞が贈られています。同社は、この研究を製品化する研究成果ベンチャー(大学の研究成果を基に設立された企業)にあたります。

大学発の特許を製品化

同社は、前橋工科大学が持つ特許(作業療法支援装置に関する技術)のライセンス契約を結び、電子ペグボード「PEGASUS K3100」を製品化しました。前橋工科大学として初のライセンス契約といわれています。なお、代表の小田垣氏は、設立前の2021年に、群馬県内の技術シーズを対象とする「ぐんまテックプラングランプリ」で「Taisho FRC賞」を受けています。

医療機器以外の事業も展開

同社は、電子ペグボードの販売のほか、福祉車両のプロモーション事業や、企業向けのコンサルティング事業、PLC(プログラマブルロジックコントローラー。工場の設備などを制御する装置)の教材販売も手がけています。複数の事業を組み合わせた運営を進めています。

会社情報

会社名株式会社ライフモジュレーション(Life Modulation Inc./法人番号 1070001038916)
所在地群馬県前橋市天川原町2-38-19
設立2022年2月
代表代表取締役 小田垣 雅人(前橋工科大学 工学部 准教授)
資本金200万円
事業電子ペグボードの販売・運動機能の解析。福祉車両プロモーション、コンサルティング、PLC教材販売など
技術領域医療機器(上肢運動計測)。モーションキャプチャとタッチパネルを組み合わせた電子ペグボード「PEGASUS K3100」を中核製品とする
連携前橋工科大学(小田垣雅人研究室の特許のライセンス契約に基づき製品化)
採択ぐんまテックプラングランプリ2021(代表・小田垣氏が設立前の2021年に受賞)
URLhttps://www.lifemodulation.com

編集後記|FrontJournal編集部より

上肢機能の評価は、長らく検者の目視とストップウォッチに支えられてきた分野です。高齢化でリハビリの需要が高まる一方、評価の記録は担当者の技量に左右されやすいという課題がありました。動きを機械が自動で数値化するという発想は、現場の負担を軽くする方向を示しています。

注目したいのは、同社が大学の研究室の特許を、実際に使える製品として仕上げている点です。木製のペグボードという昔ながらの検査器具に、タッチパネルとモーションキャプチャを組み合わせることで、記録の手間を減らしながら、より詳しい動きのデータを残せるようにしています。大学の研究室が持つ技術を、地域の企業がそのまま製品にまで仕上げた例として参考になります。

電子ペグボードで培った計測技術は、健康チェックアプリなど周辺の製品にも生かされ始めています。上肢の動きを数値で追う仕組みが、リハビリの現場を超えてどこまで広がっていくのか、今後の展開を見ていきたいところです。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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