クロバーナ「ノンコーディングRNA創薬」を研究

株式会社クロバーナ

クロバーナ「ノンコーディングRNA創薬」を研究|研究領域=設計図にならないRNAを標的に創薬/強み=RNA上の標的を探索相互作用を選択阻害/将来性=製薬企業と共同で新薬の実現を目指す

企業紹介|株式会社クロバーナとは?

タンパク質の設計図にならないRNAを標的とする創薬として、注目を集める「ノンコーディングRNA創薬」。株式会社クロバーナは、その社会実装を目指す、川崎医科大学発のバイオ系ディープテック企業です。RNAを認識する独自の技術で、RNA上の創薬標的を探索し、新しい核酸医薬の開発を進めています。

キーワード「ノンコーディングRNA創薬」

「ノンコーディングRNA創薬」は、タンパク質の設計図にならないRNA(ノンコーディングRNA)を標的に、医薬品を開発する取り組みです。従来の創薬は、主にタンパク質を標的としてきました。タンパク質の設計図にならない領域のRNAを標的にできれば、創薬の対象が広がります。

市場課題|ノンコーディングRNAを、創薬の標的にしにくい

現状のノンコーディングRNA創薬の課題|タンパク質中心で標的が限られる/長鎖RNAは解析が難しい

タンパク質中心で標的が限られる

医薬品の研究開発は、主にタンパク質を対象としてきました。ヒトゲノム(全遺伝情報)のうち、タンパク質の設計図になっている領域は2%にすぎず、残る領域の機能や疾患との関わりは十分に分かっていません。疾患への関与が注目されるものの、解析の難しさから創薬は進みにくい状況です。

長鎖RNAは解析が難しい

長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)は、構造の予測が難しい分子です。1つの分子が多数のDNAやRNA、タンパク質と相互作用するため、病気に関わる部分を特定しにくくなります。このため、創薬の標的にしにくいとされてきました。

他にも、ノンコーディングRNAの機能解析、疾患へのノンコーディングRNAの関与の解明、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • ノンコーディングRNAタンパク質の設計図にならないRNAの総称である。ヒトゲノムでタンパク質の設計図になる領域は一部にとどまり、残る領域のRNAの機能や疾患への関与が研究されている。

株式会社クロバーナの強み|「ノンコーディングRNA創薬」を研究

クロバーナが「ノンコーディングRNA創薬」を研究|RNA認識で標的を探索/相互作用だけを選択的に阻害

RNA認識で標的を探索

従来は、ノンコーディングRNAの構造予測が難しく、RNA上のどこに薬を作用させればよいかを絞り込みにくい状況でした。

同社は、CRISPR(特定の配列を狙って認識する、細菌由来の仕組み)を応用したdCas13(RNAに結合するタンパク質)によるRNA認識技術で、ノンコーディングRNA上の創薬標的を探索します。この技術は、疾患に関わるlncRNA上で、病気の発生や進行に重要な相互作用をする領域を見つけ出す仕組みです。これまで標的にできなかったRNAに対しても、創薬の狙いどころが明確になり、新しい薬の開発に取り組める範囲が広がるとしています。

相互作用だけを選択的に阻害

RNAを分解して働きを抑えるギャップマー(標的のRNAを分解する核酸医薬)は、RNAを分解するアプローチです。同社は、RNAを分解せず特定の相互作用だけを抑える手法として、SRiMを位置づけています。

同社は、SRiM(Selective RNA-interaction Modifier)と呼ぶ、新しいコンセプトの核酸医薬(RNAやDNAの配列を利用した医薬品)の開発を目指しています。SRiMは、lncRNAを分解せず、探索した相互作用の領域だけを選択的に阻害するアプローチです。標的の領域は、同社のRNA標的探索技術で見つけ出します。必要な相互作用だけを抑えるため、従来は標的にできなかったRNAに対して、より選択的な創薬ができるようになることを目指しています。

FrontJournalの解説
  • SRiMSelective RNA-interaction Modifierの略である。RNAを分解せず、疾患に関わる特定の相互作用だけを阻害する、新しいコンセプトの核酸医薬を指す。

ノンコーディングRNA創薬の未来|標的となるRNAの広がり

ノンコーディングRNA創薬が変える未来|標的探索がすでに可能/がんや難病の研究へ展開/共同創薬で新薬を目指す

標的探索がすでに可能

同社は、創薬標的になりうる領域を、lncRNA上で探索できる段階にあります。2023年6月に掲載された、同社の基盤技術を用いた論文では、CRISPR/dCas13を使ったRNA免疫沈降(dCas13で標的のRNAに結合するRNAを取り出して調べる方法)が行われました。この方法で、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のRNAの5'UTR(タンパク質に翻訳されない先頭側の領域)が、ヒトの脂質代謝の過程と相互作用することが示されています。同社は、この基盤技術を創薬標的の探索に用いています。

がんや難病の研究へ展開

がんの発生・悪性化・転移や、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、拡張型心筋症(DCM)が、同社の対象疾患として挙げられています。RNA創薬標的認識システムによる、RNA上の治療標的配列やRNA結合タンパク質の機能解析が、同社の取り組みです。解析が進めば、創薬の対象になりうるRNAが広がる可能性があります。

共同創薬で新薬を目指す

ノンコーディングRNAを標的とする創薬を、自社または製薬企業との共同で進めることを目指しています。従来は創薬標的にできなかったRNAへの創薬で、難治性疾患の患者さんに新しい薬を届けたいとしています。ミッションは、患者さんに新たな希望を届けることです。開発が進めば、タンパク質標的では届かなかった領域に、新しい薬の選択肢が広がる可能性があります。

会社概要|川崎医科大学の研究から生まれたクロバーナ

川崎医科大学発の創業

同社は、2020年に株式会社ポワロシステムとして設立され、2022年に株式会社クロバーナへ社名を変更しました。創業者は川崎医科大学衛生学教授の伊藤達男氏で、共同発明者の清水由梨香氏が共同創業者です。川崎医科大学発のスタートアップとして、本社は岡山県倉敷市にあります。

受賞と認定、論文発表

同社は、2020年5月に「第2回岡山テックプラングランプリ」で最優秀賞を受賞しました。2022年11月には「Future Hope Award」を受賞しています。2023年には、中国経済産業局が創設した「J-Startup WEST」に選定されました。同年6月には、同社の基盤技術を用いた論文が、学術誌『Scientific Reports』に掲載されています。

資金調達と事業の方針

資金面では、慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)から、事業の立ち上げ前後にあたる、ごく初期の資金調達段階のプレシードとして、総額約1億円を調達しています。事業は、RNA上の創薬標的を探索する技術を軸に、自社または製薬企業との共同でノンコーディングRNA標的創薬を進める方針です。

会社情報

会社名株式会社クロバーナ(CLOVERNA Inc.)
所在地岡山県倉敷市松島577番地
設立2020年(旧社名 株式会社ポワロシステム。2022年に社名変更)
調達プレシード総額約1億円(慶應イノベーション・イニシアティブ)
事業ノンコーディングRNA標的創薬の研究開発
技術領域CRISPR/dCas13によるRNA認識技術、核酸医薬のコンセプト「SRiM」
採択第2回岡山テックプラングランプリ最優秀賞(2020年)。Future Hope Award(2022年)。J-Startup WEST選定(2023年)
URLhttps://www.cloverna.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

多くの医薬品は、タンパク質を標的に開発されてきました。クロバーナは、その手前にある、タンパク質の設計図にならないRNAに着目しています。創薬の対象そのものを広げる試みであり、新しい選択肢が生まれる点に期待します。

RNAを分解せず、必要な相互作用だけを抑える「SRiM」の考え方は、標的を選んで作用させる、創薬の精度を高める方向を示していると考えます。大学の研究室で培われた技術が、創薬のコンセプトに結びつく過程に、大学発の研究が社会へ広がる姿を感じました。標的の探索から創薬までを目指す点にも、意義があると思います。

製薬企業との共同研究を通じて、ノンコーディングRNAを標的とする創薬が、現実の選択肢として広がることを期待します。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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