2026.10.19 │ 理化学研究所・千葉大学ら │ 元発表:2026.10.16

理研ら、年上のきょうだい数と幼児の腸内細菌タイプの関連を発見

ニュース紹介

「年上のきょうだい数と幼児の腸内細菌タイプの関連を発見」

理化学研究所生命医科学研究センター粘膜システム研究チームの柴田涼平客員研究員、大野博司チームディレクター、千葉大学予防医学センターの櫻井健一教授、山本緑講師、兵庫医科大学看護学部の島正之特命教授らの研究グループは、環境省エコチル調査の追加調査に参加した2歳児903人と、そのうち4歳時にも参加した684人の便検体を16S rRNA遺伝子解析で調べ、腸内細菌叢の構成タイプ(エンテロタイプ)と年上のきょうだい数との関連を調べた。細菌の多様性と便中プロピオン酸濃度が最も低いタイプ1は、2歳時に413人(46%)、4歳時にはタイプ2が345人(50%)で最多だった。年上のきょうだい数が0人の子どもを基準にすると、タイプ2に対するタイプ1の調整オッズ比は、きょうだい1人で2歳時0.49(95%信頼区間0.34–0.69)・4歳時0.45(0.26–0.77)、きょうだい2人以上で2歳時0.32(0.19–0.54)・4歳時0.22(0.08–0.53)となった。年上のきょうだいが多いほど、タイプ1に分類される割合が低いという関連を示している。4歳時については、直近3カ月の抗菌薬使用がこの関連の一部に関わる可能性が示された。成果は2026年10月14日に国際科学誌Pediatric Researchにオンライン掲載された。

出典:理化学研究所 2026年10月16日 プレスリリース
https://www.riken.jp/press/2026/20261016_1/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

腸内細菌叢(腸の中に住む細菌の集まり)は、消化や免疫、代謝など全身のはたらきと関わることが報告されています。乳児期の腸内環境は、母乳・離乳食・分娩方式・抗菌薬の使用など、たくさんの要因で変わることが知られていますが、2歳以降の幼児期については調査例が限られていました。本研究が用いたエコチル調査(子どもの健康と環境に関する全国調査)は、2011年から環境省を中心に進む大規模な出生コホートで、全国約10万組の親子を対象としています。研究者たちはこの枠組みの中で、16S rRNA 遺伝子解析により菌の種類と割合を調べ、短鎖脂肪酸(腸内細菌の発酵でできる酢酸・プロピオン酸・酪酸など)の濃度と合わせて腸内環境のタイプ分けを行っています。

①903人の便検体で見えた「きょうだい効果」

研究グループは、2歳児903人の便検体を細菌の構成で3つのエンテロタイプに分けました。タイプ1は細菌の多様性と便中プロピオン酸濃度が最も低い組み合わせで、2歳時に413人が該当しました。年上のきょうだいが0人の子どもと比べ、1人いる子どもではタイプ1への分類割合が低くなり、2人以上ではさらに低下するという用量反応的な関連が見られました。4歳時にも同じ傾向が確認され、きょうだい2人以上ではタイプ1への調整オッズ比が0.22(95%信頼区間0.08–0.53)まで下がりました。媒介分析でも、保育所通い・ペット・住居環境など検討した要因だけでは関連の大部分は説明できないという結果でした。

②病気との因果はまだ先の課題

この研究が明らかにしたのは、きょうだい数と腸内環境のタイプとの関連までです。研究グループはプレスリリースで、きょうだいがいること自体が病気を予防すること、腸内環境の違いが疾患リスクの低下を直接もたらすことは示されていないと注記しています。今後の課題として、アレルギー疾患など特定の病気と腸内細菌タイプとの関連、原因と結果の順序の検証が挙げられています。幼児期の腸内環境が将来の健康にどう効くかが分かれば、食事や生活習慣による介入の設計にもつながる可能性があります。

編集部からひとこと

「きょうだいが多いとアレルギーが少ない」という古くからの観察(衛生仮説)に、腸内細菌の側から新しい材料を加えた研究です。エコチル調査という大規模コホートに支えられている点、2歳と4歳の2時点で同じ傾向を確かめている点が丁寧でした。ただし「因果はまだ」と研究グループ自身が線を引いており、ここから疾患との関係へ進むのはこれからの仕事です。数値をそのまま育児の指針にするのではなく、長期の追跡の中で何が見えてくるかに注目したいところです。

FrontJournal編集部

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