グリーンケミカル「HMF」を研究

株式会社グリーンケミカル

グリーンケミカル「HMF」を研究

企業紹介|株式会社グリーンケミカルとは?

石油由来の樹脂を植物由来の原料へ置き換える動きの中で、原料の中間体として扱われる「HMF」。株式会社グリーンケミカルは、その社会実装を目指す、東京科学大学(旧・東京工業大学)発の素材系ディープテック企業です。非可食バイオマス由来の糖を原料に、HMFとFDCAを高純度で供給できる触媒プロセスを手がけ、量産に向けた実証のパートナー企業の獲得を目指しています。

キーワード「HMF」

HMF(5-ヒドロキシメチルフルフラール)は、糖から合成する中間体で、バイオ樹脂の原料につながる化合物です。HMFからは、PEF(ポリエチレンフラノエート)という樹脂の原料になるFDCA(2,5-フランジカルボン酸)などを合成できます。同社は、このHMFを非可食バイオマス由来の糖から高純度で得る技術を扱っています。

市場課題|植物由来の樹脂原料に求められる条件

現状のバイオ樹脂原料の課題

食料と競合しない原料が必要

バイオプラスチックの原料では、食料との競合への配慮が課題の一つです。環境省のバイオプラスチック導入ロードマップ(2021年1月)は、国内バイオマスの原料利用を広げる際、食料競合等に配慮する方針を示しています。同ロードマップは、より持続可能性が高いバイオプラスチックへの転換を目指しています。

石油由来の樹脂の置き換えが課題

石油由来の樹脂からの転換は、国の戦略に位置づけられています。プラスチック資源循環戦略(2019年5月策定)は、2030年までにバイオマスプラスチックを約200万トン導入するマイルストーンを掲げています。ロードマップの目的は、この戦略の実現に向けた転換です。

他にも、供給の拡大、コストの最適化、使用後のリサイクルや堆肥化との調和、温室効果ガスや生物多様性への配慮、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 非可食バイオマス食用にならない植物資源の総称である。食料と競合しにくい資源として扱われ、糖に分解して樹脂の原料に利用する取り組みがある。

グリーンケミカルの強み|「HMF」を研究

グリーンケミカルが「HMF」を研究

非可食の糖から原料を作る

バイオプラスチックの原料利用では、食料との競合への配慮が求められています。

同社は、独自の新しい触媒プロセスを用い、未利用のパルプやもみ殻などの非可食バイオマスから得た糖を100%原料にして、HMF(5-ヒドロキシメチルフルフラール)を作ります。触媒(反応を速める物質)が、糖をHMFへ変える化学反応を進めます。石油を出発点にせずに、バイオ樹脂の原料となる物質を植物由来の糖から得られる仕組みです。非可食の糖が原料のため、食料との競合に配慮したバイオ樹脂原料の選択肢が広がります。

FDCAまで一貫して製造

同社のNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)事業には、FDCA(2,5-フランジカルボン酸)を外部でPEF(ポリエチレンフラノエート)樹脂に重合し、仕様を確認する項目があります。

同社は、HMFに続くFDCAも、非可食バイオマス由来の糖から安定して高純度で供給できる触媒プロセスを持ちます。NEDOの事業では、外部によるPEF樹脂の重合試験でPET(ペットボトル等の樹脂)の代替の可能性も確認する計画が示されています。2026年度からの後続フェーズでは、連続フロープロセスの開発とスケールアップの実証を進める計画です。これらの実証が進めば、FDCAの用途が量産規模へ広がる可能性があります。

FrontJournalの解説
  • 連続フロープロセス原料を管に流し続けながら反応させ、生成物を連続して取り出す製造方式を指す。決まった量をまとめて仕込む方式と異なり、同じ条件で運転を続けられる。

HMFの未来|バイオ樹脂への応用

バイオ由来のHMFが変える未来

HMFとFDCAを高純度で供給

非可食バイオマス由来の糖から、HMFとFDCAを安定して高純度で供給できる触媒プロセスがあります。HMFは、バイオ樹脂やバイオプラスチックの原料を合成する中間体(原料と最終製品の途中にある物質)です。同社は、このHMFを出発点にした原料の合成について、研究開発を進めています。NEDO事業の目標には、2,5-ビスアミノメチルフラン(BAF)の合成法の確立も含まれます。

FDCAの年1トン規模実証

FDCAの生産は、2026年度から2027年度にかけて、年1トン規模の実証に進みます。綜研化学株式会社と共同で、グルコースを原料にしたFDCAの連続フロープロセスを実証する計画です。あわせて、フラン環化合物と関連ポリマーを、接着剤、可塑剤(樹脂を柔らかくする添加剤)、包装材料、高機能材料などに使えるか評価し、製品を試作します。触媒と反応条件の最適化も進めます。

地域資源の素材化を目指す

同社のビジョンは、独自の化学プロセスで地球の環境問題を解決し、世界各地域に持続可能な社会を実現することです。ミッションの一つには、石油製品の代替として非可食バイオマス資源を活用し、バイオ由来樹脂と高付加価値製品の量産を実現することを掲げています。もう一つのミッションは、日本発の技術で、世界各地で入手可能なバイオ資源からグローバルカーボンフリー素材の市場を創出することです。世界各地域の活性化を目指します。

会社概要|グリーンケミカルの事業内容・設立背景

大学発の触媒技術を事業化

グリーンケミカルは、2018年10月23日に設立されました。公式サイトには「東京工業大学発ベンチャー認定第88号」と記載があります。東京工業大学(現・東京科学大学)が開発した触媒プロセスの実用化を進める企業です。

事業は、バイオマス変換触媒の製造販売、反応プロセスの開発販売、カーボンニュートラル化成品の製造販売です。本社は、神奈川県藤沢市の湘南ヘルスイノベーションパークにあります。代表取締役は張錦良氏です。

NEDOの支援事業に採択

同社は、NEDOの「GX分野のディープテック・スタートアップに対する実用化研究開発・量産化実証支援事業」に採択されています。2024年度から2025年度はSTSフェーズ(同事業の第1段階)で2億8,000万円、2026年度から2027年度はPCAフェーズ(同事業の後続段階)で4億7,500万円の交付が決定しています。テーマは「非可食バイオマス由来樹脂の工業生産技術の実証事業」です。

資金調達とライセンス事業

2024年2月、プレシリーズAラウンドで総額1億7,000万円の資金調達を実施しました。引受先は、既存投資家の株式会社みらい創造機構と、新規投資家の東北大学ベンチャーパートナーズ株式会社です。調達資金は人材採用による事業開発と研究開発の加速、パートナー企業との協業を通したベンチスケールでの実証実験に充てます。

事業の形は、触媒と反応装置の開発・生産、反応プロセスのライセンスに加え、HMF、FDCA、HMF誘導体を自社で生産販売することを目指す構成です。

会社情報

会社名株式会社グリーンケミカル
所在地神奈川県藤沢市村岡東二丁目26番地の1 湘南ヘルスイノベーションパーク
設立2018年10月23日
代表代表取締役 張 錦良
資本金3,000万円
調達プレシリーズAラウンドで総額1億7,000万円(2024年2月)。引受先は株式会社みらい創造機構、東北大学ベンチャーパートナーズ株式会社
事業バイオマス変換触媒の製造販売。反応プロセスの開発販売。カーボンニュートラル化成品の製造販売
技術領域非可食バイオマス由来の糖からのHMF・FDCA製造、触媒プロセス、バイオ樹脂原料
連携綜研化学株式会社(FDCAの連続フロープロセスの実証)
採択NEDO GX分野のディープテック・スタートアップに対する実用化研究開発・量産化実証支援事業(STSフェーズ 2024〜2025年度、PCAフェーズ 2026〜2027年度)
URLhttps://green-chem.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

プラスチックの原料を石油から植物へ切り替える動きは、食料との競合という条件にも向き合っています。グリーンケミカルは、食用にならない植物資源から作る糖を出発点に、HMFとFDCAという樹脂原料づくりに取り組む企業です。2018年に設立された、東京科学大学(旧・東京工業大学)発の素材系ディープテック企業です。

同社の特徴は、反応を担う触媒の技術を軸に、糖から樹脂原料までの流れを一つの事業として構想している点です。1トン規模の実証では、綜研化学株式会社と共同でFDCAの連続フロープロセスを検証します。事業の形としては、製造技術のライセンス提供も目指しています。

東京科学大学の触媒研究から生まれた技術が、量産の場面でどのような素材に結びつくのか。同社の今後の実証の進み具合が、焦点になります。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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